2021年12月25日

<リバイバル>“20世紀の奇跡”カール・テオドア・ドライヤー監督の映画たちを簡明に語ってみたい

<リバイバル>“20世紀の奇跡”カール・テオドア・ドライヤー監督の映画たちを簡明に語ってみたい


ドライヤーのヒロイン映画
その集大成『ゲアトルーズ』


(C)Danish Film Institute

この後、またまたドライヤーは10年程沈黙したのちに『ゲアトルーズ』(65/今回の上映作品)を発表しますが、これは宗教的な要素を排除し、ひとりの女性と夫、若き愛人、そしてかつての恋人といった不可思議な関係性を描いた「愛」の映画であり、当時としては画期的な内容のヒロイン映画であると確信しています(まるでHシーンのない日活ロマンポルノみたい!)。

技法的に驚かされるのが、ヒロインが劇中ほとんど相手と目を合わせることなく佇み続けていることで、そこから醸し出される女と男の断線とでもいった情念の発露には恐怖すら感じる瞬間もあるのでした!

そしてドライヤー自身はこの後、長年の宿願としていたキリストの生涯や、エウリピデスの戯曲「メディア」の映画化に取り組み始めますが、1968年3月29日に惜しくもこの世を去ってしまいました。

すべてモノクロで撮られたドライヤー映画は(彼は『ゲアトルーズ』の次はカラー映画を撮るべく、映像における色彩などの実験を続けていたそうです)、今では古典とみなされることでしょうし、また作品世界を深く掘り下げれば掘り下げるほどアカデミックな論考が成されていくのも大いに理解できます。


(C)Danish Film Institute

しかし、彼の映画は一方で実にシンプルに、宗教がもたらすさまざまな対立の構図や、女性たちに振りかぶる社会の抑圧などを訴えており、その伝では今の時代こそ普通に見られてしかるべきものがあると断言しておきます。

また各作品におけるさまざまな実験も、キャメラを回せばそこそこの画が撮れてしまう今の時代の映像クリエイター(及びそれを目指す人たち)は見習うべきものがあるのではないでしょうか。

論より証拠で、まずは彼の作品を見てみると良いです。

およそ100年ほど前から映画を作り続けてきた者の気概が、ワンダーランドのように銀幕の中で映えわたること必至でしょう!

(文:増當竜也)

【関連記事】『ジャネット』解説:ヘドバンする若きジャンヌ・ダルク

【関連記事】<解説>映画『ジャンヌ』を読み解く4つのポイント

【関連記事】『世界で一番美しい少年』と呼ばれた男の苦悩

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

© 1928 Gaumont, © Danish Film Institute

RANKING

SPONSORD

PICK UP!