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2022年01月07日

『おそ松さん』でもパロディに!『ゼイリブ』等ジョン・カーペンター監督作、魅力解説!

『おそ松さん』でもパロディに!『ゼイリブ』等ジョン・カーペンター監督作、魅力解説!


『ゼイリブ』:サングラスをかけさせるための戦いがアツい!

その日暮らしの労働をしている男が、すでに宇宙人がこの地球に来ているばかりか、人間になりすましていることを知ることから始まるSF映画だ。

とにかく有名なのが、「サングラスをかけると宇宙人の真のメッセージが見える」という設定。見た目にもわかりやすいためか、オマージュよりもパロディにされることが多く、日本のマンガ『ばくおん!!』の14巻や、映画のパロディが多いアニメ『おそ松さん』の3期16話でも盛大にやってくれている

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『ゼイリブ』より © 1988 STUDIOCANAL S.A.S. All Rights Reserved.

今観ても笑ってしまうのは、「自分の言うことを信じてくれない友人に、サングラスをかけさせようと戦う」シーンだ。サングラスくらいかけてやればいいじゃないかと思うところだが、この2人のバトルは「絶対にサングラスをかけさせてやる!」「絶対にかけない!」と誓ったかのように、異常なまでに苦労することになる。それをパロった『おそ松さん』でも「長い!」とツッコミが入ったことも笑ってしまった。

だが、そのサングラスをかけさせるシーンの長さは、「この世界にはびこる悪しき真実を知ってもらい納得させるのがいかに難しいか」という寓話だからという見方もできる。本作はわかりやすく特権階級の者らだけが甘い蜜を吸い続け、さらにはメディアを悪用し、人々を洗脳していることへの批判が込められており、その現実を踏まえてこのサングラスをかける・かけないだけの戦いのシーンが長くなったのだとも考えられるのだ。決して尺稼ぎなどではない(と信じている)。

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『ゼイリブ』より © 1988 STUDIOCANAL S.A.S. All Rights Reserved.

そして、この『ゼイリブ』が影響を与えた作品で最も有名なのは、誰もが知る映画『マトリックス』(99)だ。この両者は「今いる世界が支配されている真実」を知り、その状況を打破するために戦う物語が共通しているのだ。

だが、その支配からの脱却を描いたはずの『ゼイリブ』と『マトリックス』は残念ながら、危険な陰謀論者にとっての都合の良い「経典」のように扱われたこともある。『ゼイリブ』に至っては根拠のない反ユダヤ主義の思想のミームとしても使われ、これにはジョン・カーペンター監督自身がTwitterで「何の関係もない」と強く反発している。


『ゼイリブ』と『マトリックス』の物語は、確かに陰謀論を肯定してしまいかねない危うさはある。特に、『ゼイリブ』の主人公は殺人(宇宙人とわかった者を殺すこと)をもいとわなくなってしまうので、より恐ろしい。

しかし、この2作に込められたメッセージを真っ直ぐに受け止めれば、自分の考えていることをただ愚直に正しいと信じることではなく、知らず知らずの間に勝手な支配をしている者たちへの怒りであり、ただ支配されることを享受してしまうことへの反発だということがわかる。

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『ゼイリブ』より © 1988 STUDIOCANAL S.A.S. All Rights Reserved.

コロナ禍でより陰謀論がはびこり、また経済格差が世界的な問題となっている現代では、むしろ『ゼイリブ』は、その危うさのある描写込みで、「正しさ」を考えられるきっかけにもなるのではないか。ジョン・カーペンター監督作は『ニューヨーク1997』でもアメリカ社会への痛烈な風刺があり、やはりただのB級娯楽映画の枠に囚われない、現実にある問題への憤りを映画で提示するという、作家としての矜持を感じさせるのだ。

とはいえ、『ゼイリブ』はそうした小難しいことを考えなくても、やはり単純明快なSFアクション映画として存分に楽しめる。クライマックスではちょっとした「自虐ネタ」があるし、特に悪意に満ちたラストシーンは本当にひどい(褒めている)。宇宙人の造形も含めて、悪趣味さも込みの映画を楽しみたい方にこそおすすめだ。

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『ゼイリブ』より © 1988 STUDIOCANAL S.A.S. All Rights Reserved.

ジョン・カーペンター監督作の魅力は音楽にもあり!

ここまで『ニューヨーク1997』『ザ・フォッグ』『ゼイリブ』の見所を語ったが、ジョン・カーペンター監督作にはさらなる大きな魅力がある。それは監督本人が作曲した音楽だ。特に『ハロウィン』での矢継ぎ早に繰り返される高い音のメロディは、否応もなく不安にさせられる。

その他の映画でも、レトロチックかつ、メロディアスな音楽の数々は、作品の中でいの一番に思い出すほどに印象に残る。それもまた、今回の上映企画が実施された大きな意義であり、迫力の音響でその音楽を堪能していただきたいと願う理由なのだ。ぜひ、3週間限定の上映をお見逃しなきように。

(文:ヒナタカ)

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