<柄本佑に引き込まれる>包容力から紐解く魅力


「ドクターホワイト」(C)カンテレ

長らく、柄本佑に対して、期待と恐ろしさを感じていた。彼が画面の端に映ると目が離せなくなるし、この物語では一体、何をしてくれるんだろう――作中の中では決してポジティブではない意味で――と思わずにはいられなかった。

それは、柄本佑自身の圧倒的な演技力と存在感によるものだと思う。

一方で彼から感じられるのは、包容力だ。ここ2年ほどで柄本佑が出演したドラマから彼の包容力を紐解いていきたい。

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優しさの中にある、男心を巧みに描く


「知らなくていいコト」(C)日テレ

「おっ?」とまず意外に感じられたのが2020年1月期に日テレ系水曜ドラマ「知らなくていいコト」だ。

吉高由里子演じる真壁ケイトの元カレ・尾高由一郎を演じていた。
ケイトは父親が無差別殺人事件の殺人犯だと分かり、それを知った婚約者だった野中(重岡大毅)に別れを告げられる。

ショックを受けるケイトのそばに寄り添っていたのが尾高だった。優しく見守ってくれている尾高に、ケイトは次第に再び恋心を抱くようになるが、尾高は既婚者で……。


「知らなくていいコト」(C)日テレ

ケイトは週刊誌編集記者、尾高は動物カメラマン。編集部を舞台に、あらゆる事件を解決していきながら、ケイトの父親の謎について迫っていくというどちらかというとミステリー要素が強い作品だ。

そんな中で次第に、互いへの想いを募らせていくケイトと尾高の関係がたまらない。どちらも、「この関係は許されるものではない」と知っているからこそ、抑える。抑えれば抑えるほど、恋心というのは募るもの……。

不倫はいけないものだとわかっているけれど、その一線を飛び越えてしまう瞬間がドラマチックに描かれていた。ドラマチックであろうと、不倫はダメなのだが……。

不倫関係にならなくても、どう考えても尾高はケイトのことを一番に考えているようにしか見えない。だからと言って元カレ面をするわけでもなく、でも、来てほしいときには現れてくれるものだから、本当にもう!


「知らなくていいコト」(C)日テレ

また、尾高のライバル(?)として描かれていた野中が器の小さい男っぷりを発揮していたので(これも名演だった)、より尾高の懐の深さが際立つ。

頭もいいし、度胸もあるし、とことんひとりの人を愛してしまう。ただ、だからと言って恋がうまくいくではない……というところも、人間臭くて良いのかも。

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「体を張る」がわざとらしくない


「天国と地獄〜サイコな2人〜」(C)TBS

2021年1月期TBS系日曜劇場枠で放送された「天国と地獄~サイコな2人~」では、綾瀬はるか演じる望月彩子の家に居候する渡辺陸を演じた。

刑事である彩子と、高橋一生演じる殺人事件の容疑者である日高陽斗の魂が入れ替わり物語。入れ替わりの謎と殺人事件の真相に迫るミステリーだ。

陸は陽斗の魂が入った彩子と彩子の魂が入った陽斗に翻弄されながらも、彩子のために力を貸す……という役どころ。


「天国と地獄〜サイコな2人〜」(C)TBS

彩子と陸は恋人同士ではないが、陸側は彩子を大切に思っていることはよくわかる。そのため魂が入れ替わっている彩子を見て、比較的早い段階で異変に気がつく。真相に気がついてからは全力で彩子をサポートする。見返りなしで力になるものだから、「実は陸が真犯人なのでは?」と思ってしまったほどだ。

ここでもやはり、頭がキレるし、優しいし、度胸もある。度胸って必要? と思われるかもしれないが、好きな人が危険な目に陥っているときに逃げない人間が世の中にはどれだけいるだろうか。


「天国と地獄〜サイコな2人〜」(C)TBS

好きな人を守るときの体の張り方にリアリティを持たせるのは、それまでの想いの積み重ねだ。
「知らなくてもいいコト」ではケイトをかばって刺されてしまうが、「えー!そこまでする!?」ではなく「尾高ならそうしちゃうよね……」とい説得力がある。

陸も、彩子のためなら、かなりの危険も冒してがんばってしまうのだけれど、それも「彩子のためなら仕方がない」と思ってしまう。明確に彩子に対する恋心を口にしているわけではないのに、それが視聴者に伝わるのは、端々から彩子への想いが滲み出ているからだろう。

「天国と地獄」で陸のライバルとなる陽斗は、これまた一癖どころか四癖ぐらいありそうなタイプで……。陸のまっとうさ、真っすぐさが際立つ。それでももしかして犯人なのでは? と思わせてしまうのは柄本佑ゆえだろうか。

「ドクターホワイト」で見える優しさの演じ分け


「ドクターホワイト」(C)カンテレ

2022年1月期フジテレビ系月10枠でオンエア中の「ドクターホワイト」。ある日、記憶をすべて失った女性・白夜(浜辺美波)を助けたことで、彼女と深く関わっていくことになるジャーナリストの猪岡将貴を演じている。

今回は白夜だけではなく、脳に重い病気を抱える妹・晴汝(岡崎沙絵)、幼馴染で片想いの相手・高森麻里亜(瀧本美織)と周囲には守るべき女性が多すぎる。


「ドクターホワイト」(C)カンテレ

将貴もまた器が大きくて優しい人間である。特にすごいのが、それぞれに対して優しさの種類が違うこと。白夜に対しては父親、晴汝には兄、麻里亜には男性としての優しさを見せている。よく「誰にでも優しい人は不安になる」と言うが、ちゃんと見ればわかる。誰に対しても同じように優しくできる人はいない。

振り返ってみると、「知らなくていいコト」のケイトにも、「天国と地獄~サイコなふたり~」の彩子に対しても、「男性として」だけではなく、兄的要素や、父親的要素があったように感じられる。というよりも、保護者としての器の大きさというのだろうか。

優しいだけではつまらないキャラクターになりがちだが、それぞれにある自分のポリシーがブレないので、より魅力的に見えるのだろう。

やっぱり怖い役者だ


「ミステリと言う勿れ」(C)フジテレビ

月10での優し気なオーラを発揮していたわけだが、「ドクターホワイト」の前の時間帯で放送されている「ミステリと言う勿れ」の4話では記憶喪失の爆弾魔として登場。菅田将暉演じる久能整と緊迫する会話劇を演じた。

画面に映った瞬間の存在感、心がザワつく感じ。一方でその数分後に画面に映った柄本佑……ではなく、将貴から感じられるのは、安心と信頼。

ドラマに2本続けて同じ役者が出ていれば、少し戸惑いそうな気もするが、オーラも雰囲気も何もかも違いすぎて、戸惑わない。柄本佑を見ているわけではなく、柄本佑が演じるキャラクターを見ているのでしかないのだ、と改めて気がつかされる。

柄本佑のプロフィールを確認すると、180cm越えの高身長も包容力を演出するひとつの要素かと思っていた。

作品が変わればそのスタイルも圧迫感に変わる。時には実際よりも小柄なキャラクターに見えることもある。

今度はどんな新しい一面を見せてくれるのか、期待せずにはいられない。

(文:ふくだりょうこ)

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