ダークな“大泉洋”を楽しめる作品たち|「全部、大泉のせい」
三谷幸喜は「ダークな大泉洋」を知っていた!?
「鎌倉殿の13人」(C)NHK
「鎌倉殿の13人」の底知れぬ闇を抱えた頼朝を演じる大泉洋の姿に、ある種のショックを受けているという人は少なくないでしょう。「あの大泉洋が、なんでこんなダークサイドの住人を演じるか?!」と驚き、戸惑う人々の声は小さくありません。
その一方で「ダークな大泉洋もアリ」と知っていた人たちもいます。
それは、舞台の大泉洋を見てきた人たちです。
TEAM NACSの演目でもいわゆる“強い(こわい)”役を多く演じていて、今年2022年の3月に配信され、その後劇場公開もされた『TEAM NACS 25周年記念作品「LOOSER 2022」』では、スーパーヴィランといえる役どころを演じています。
オリジナルである2004年版の舞台でもかなり“強い”キャラクターでしたが、「2022」版では完全に黒幕でした。
舞台でいえば、2020年の舞台「大地(Social Distancing Version)」でも、強面キャラクターでした。この「大地(Social Distancing Version)」の作・演出を手掛けたのが何を隠そう、「鎌倉殿の13人」の三谷幸喜です。
映画監督から、情報番組のコメンテーターまで幅広くこなす三谷幸喜の原点は、やはり舞台。きっとどこかで、“舞台の大泉洋”を見ていたに違いありません。そこで、源頼朝を大泉洋にということになったのでしょう。
三谷幸喜は、自身の作品では大泉洋に曲者キャラを割り振っていることが多いのです。(例外として、「真田丸」の真田信之と「わが家の歴史」のつるちゃんなどがあります)
三谷幸喜が大泉洋に演じさせた、曲者キャラ
1:『清須会議』
三谷幸喜初の時代劇映画。清須会議とは、本能寺の変の後に明智光秀を討ち取った大泉洋演じる羽柴秀吉が、後継者として主導権を握ることになる会議です。
対するのは役所広司演じる柴田勝家。織田家の最古参の1人で、新参で成り上がりの秀吉とは主導権を巡って対立します。
大泉洋の秀吉は、あくまでも古参の人々を立てているように見えて、自分の側に主導権を手繰り寄せていきます。
(C)2013 フジテレビ 東宝
秀吉は描く時代によって、キャラクターが大きく変わります。信長健在の時代であればいじられキャラが定番ですが、その後は愛嬌の裏にしたたかさを隠し持った野心家キャラになります。
三谷幸喜は、大泉洋にこの隠れ野心家キャラを割り振ってきました。大泉洋がただただ陽の人だと思っていたら選ばない選択肢でしょう。
ちなみに『清須会議』にも佐藤浩市が出演しています。(佐藤浩市と大泉洋は共演回数が多いことで知られています)
「鎌倉殿の13人」で頼朝と上総で共演しているほか、『こんな夜更けにバナナかよ愛しき実話』『騙し絵の牙』をはじめ、古くはJRAのCMでも共演しています。
大泉洋は佐藤浩市のことを「オーラ怪獣」と評しています。大泉洋と佐藤浩市は年齢で一回り違うのですが、相性の良さを感じさせるため、これからの共演も楽しみです。
2:「黒井戸殺し」
アガサ・クリスティーのミステリー小説を日本を舞台に翻案したスペシャルドラマで、この前に「オリエント急行殺人事件」が、この後に「死との約束」が放映されています。主人公の名探偵を3作通して野村萬斎が演じています。
「黒井戸殺し」に関しては、「なるほど、このキャラクターを大泉洋に振ってきたか!?」と唸りました。ネタバレ厳禁の内容なので、ぜひ予備知識無しの状態で観てみてください。もちろん原作「アクロイド殺し」も読まないでくださいね。
3:「大地」
コロナ禍ですべてのエンタメが止まった2020年の夏に、PARCO劇場でSocial Distancing Versionとして披露された舞台作品。
独裁体制の全体主義国家において、反政府主義者のレッテルを貼られた俳優たちだけが収容される収容所を舞台にした作品で、演じることを禁じられた俳優たちが極限状態で生き残るすべを探っていくという物語です。
大泉洋が演じるのは、囚人と監視の間を巧く取り持って立ち回るという役柄で、終盤になると意外な展開がその身に降りかかってきます。
ここでの大泉洋はかなり強い(こわい)キャラで「舞台の大泉洋!」といった演技でした。
思えば北海道の事務所の社長(現会長)であり、「水曜どうでしょう」の旅のパートナーでもある鈴井貴之も自身が監督した映画『man-hole』と『river』では笑いを排したキャラクターを大泉洋に与えていました。
彼もまた舞台での大泉洋を見ていたからでしょう。
頼朝=大泉洋の今後の所業
「鎌倉殿の13人」(C)NHK
木曽義仲父子、弟義経とその非業の死は歴史の教科書にも掲載されている出来事ですが、実は頼朝の所業には、まだまだ続きがあります。
義経の後ろ盾だった、奥州藤原氏も滅ぼし、若干トラブルメーカー気味だった叔父の行家はともかく(?)として、常に兄を支えてきた蒲冠者こと弟・範頼も排斥されています。
頼朝の時に冷酷と思えるほどの判断も、源氏の棟梁の血筋にありながら、父親の連座で流人となった背景を考えれば少し理解できるのですが、結果的に源氏の本流が途絶えてしまうという事態を招きます。
その後「鎌倉殿の13人」の主人公である北条義時を執権とした、集団指導体制に移り早々に幕府の在り方を変えてしまうことになりました。
もし義経を許していれば、他者にもう少し寛容であったならば、鎌倉幕府も頼朝の評価も変わっていたことでしょう。
そのあたりも含めて“大泉・頼朝”がどのような最期を迎えるのかは注目です。「鎌倉殿の13人」のタイトルが示す通り、本来のストーリーは彼の死後の物語なのですから。
それもこれも「全部、大泉のせい」なのですが……。
(文:村松健太郎)
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