頼りなさが強さに変わる小栗旬“3選” | 「鎌倉殿の13人」“強さ”の向かう先に待っているもの
NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』において、主人公・北条小四郎義時を演じる小栗旬。
気のいい素朴な田舎侍(と言うか田舎のにーちゃん)だった義時が、源氏の頭領・源頼朝(大泉洋)と関わってしまったがために、大いなる歴史のうねりに巻き込まれていく。
近頃ではもうすっかり頼朝の有能な右腕になってしまった義時だが、ちょっと思い出してほしい。
まだ物語の序盤、山木兼隆廷に攻め入った頃の義時は、敵を斬り殺すことも出来ない男だった(結局パパが斬った)。
小栗旬の魅力は、その「頼りなさ」にある。
気弱な表情が似合う。泣き顔も似合う。序盤の「頼りなさ」によって、男性の共感を呼び、女性の母性本能をくすぐる。
だが、視聴者が油断している間に、ちゃっかり成長していたりする。男性は「俺が育てた」といい気分になり、女性は「あの頼りなかった息子が立派になって……」と感涙にむせぶ。
そんな小栗旬の「頼りないと思わせといて実は……」な映画を3本紹介したい。
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『宇宙兄弟』
この映画をぜひ観てほしい人間の属性は、2種類ある。
1つ目は、「夢を語るには少し年を食ってしまった。だが捨てきれない思いにくすぶり続けている」人間。
2つ目は、「弟もしくは妹に、密かにコンプレックスを抱いている」人間。
そのどちらかに当てはまる方なら、この作品はぜひ観て欲しい。ちなみに、両方に当てはまる筆者がこの作品を観るとどうなるか。それはもう号泣である。小栗旬演じる主人公である南波六太が、他人とは思えない。
幼き日、兄弟揃って宇宙飛行士になると誓った、兄・六太と弟・日々人(岡田将生)。だが、そのまままっすぐ夢を叶えた弟と違い、六太は一般企業に就職し、無理矢理自分を納得させている。
もちろん、納得なんか出来ていない。兄弟揃って夢破れたのならともかく、弟は夢を叶えたのだ。弟へのコンプレックスを抱き続けたまま、くすぶって生きている。だが、小栗旬演じる主人公がそれで終わるわけがない。
30を超えてから、再び宇宙飛行士を目指すこととなるのだ。だが、きっかけは実に頼りない。
弟をバカにした上司に頭突きを食らわし、会社をクビになる。そのタイミングで、宇宙飛行士募集の書類審査に受かる。だがこれは、日々人が勝手に応募したものである。六太は何もしていない。六太が能動的にしたことは、頭突きだけである。小栗旬の「母性本能をくすぐる頼りなさの魅力」全開だ。
だが、六太はここから強くなる。
最終選考に残った6人の前で、六太が宇宙への思いを語るシーンがある。あるトラブルのせいでこの6人は大変険悪になっていたのだが、不器用ながらも熱く語る六太を見て、雰囲気は徐々にほぐれる。それをきっかけに、みんなが六太に負けない熱さで宇宙を語り出すシーンに、筆者は号泣した。
前半の煮え切らなさというか「頼りなさ」には、日々人ともどもイライラさせられる。だが、一度ふっ切れてからの「強さ」は、まさしく「正しい主人公」である。
小栗旬はこの「頼りなさに秘めた強さ」を体現できる、稀有な俳優だ。南波六太は、小栗旬でなければ成立しなかった。
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