「雪女と蟹を食う」1話:映像美と重岡大毅&入山法子の表現力に魅了されるロードムービー開幕!
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重岡大毅が主演を務めるドラマ「雪女と蟹を食う」が2022年7月8日より放送を開始した。
冤罪により人生を狂わされた男・北(重岡)が死ぬ前に蟹を食べようと思い立ち、図書館で出会ったセレブ妻・彩女(入山法子)を襲おうと家に押し入る。そこで彼女は思いもよらぬ行動をとり、謎の旅がはじまっていくというラブサスペンスドラマだ。
本記事では、第1話をcinemas PLUSのドラマライターが紐解いていく。
「雪女と蟹を食う」第1話レビュー
冒頭は重岡大毅演じる北の1人芝居で幕を開けた。自殺を決意し、部屋に吊るしたロープの前で葛藤する。涙を流しながら、自分を鼓舞してみたり、諦めたように笑ってみたり、「馬鹿にしやがって」と過去の怒りを思い出してみたり。しかし決意は固まらず、さらにとめどなく涙を流して「もう少しだけ待つ……ごめんなさい……ごめんなさい……」と、再び畳の上に寝転んだ。2,3分のシーンだったが、この逡巡をここまでリアルに描くドラマはなかったのではないだろうか。筆者は自殺をしようとしている人を見たことがないので、あくまでも想像の域を出ないのだが、きっとこんな風に様々な感情が順番に噴出してくるのだろうと思わされた。重岡大毅の表現力あればこその説得力。圧巻のオープニングだった。
カップラーメンを食べる北。Tシャツが変わっていることから、日が変わっているのだろうということがわかる。決意こそしたものの、彼はまだ生きている。テレビで流れている北海道特集を見て、「人生最期の日は北海道で蟹を食べる」ことを思い立つ。
ところが図書館で北海道について調べていると、ジンギスカンや海鮮丼も食べたいし、ススキノでも遊んでみたいと、むくむくと欲が湧いてくる。「死のうと決めている」はずの北の、生への執着を感じた。
Ⓒ「雪女と蟹を食う」製作委員会
それでもやはり、蟹だけにしようと決めた矢先、北は図書館の中で彩女とぶつかる。白いワンピースに身を包んだ、どこか浮世離れしたみたいな人。
北の目に彩女は、羨望と少しの憎悪の対象として映ったのだろう。左手の薬指には大きなダイヤの指輪をつけ、おそらくは平日の昼間から優雅に図書館での時間を楽しんでいたから。自分のように追い詰められた経験なんてないんだろう、と思ったはずだ。
ほとんど無意識のまま、彩女のあとをつけていく北。案の定、彼女は大きな一軒家に住み、庭には高級外車が停まっていた。それを見た北の顔は一変する。勢いのままに、玄関扉を開けたばかりの彩女に声を掛けた。
北は強盗に入ったのだ。この状況、どう考えても彩女のほうが恐怖を感じていていいはずなのに、彼女はおもむろに服を脱ぎだし、結果的に2人は身体を重ねることに。
Ⓒ「雪女と蟹を食う」製作委員会
その後も笑顔で北と会話し、コーヒーまで出してくれる彩女。北は困惑と申し訳なさに打ちひしがれ、「警察に行きます」と言ったかと思えば、今度は「死にます」と泣き出す。北が今していることは許されることではない。でも冤罪で人生を狂わされる前の本来の彼は“普通のいい人”だったのだろうと容易に想像がついた。
そんな北を見た彩女は「私も食べたいです、蟹」と言い出す。かくして2人の奇妙な旅が幕を開けた。
本来関わることのなかっただろう2人だが「入道雲って見てると死にたくなりませんか?」「わかります。子どもの頃のわくわくする夏はもう自分の人生には訪れないってわかっているから」というやりとりから、彩女の闇がポツリとこぼれたように感じた。
Ⓒ「雪女と蟹を食う」製作委員会
2人の旅は早くも栃木へ。ラーメンを食べる北のリアクションがあまりにも自然で、見ているこちらの心も和む。
しかしところどころで、痴漢の冤罪で捕まり、婚約破棄を言い渡される北の過去が回想され、現実に引き戻される。これは北の、現実からの逃避行。
夜、ホテルのベッドで子どものように眠る北。この状況で心置きなく安眠できるのはすごいが、この彼の隙こそ、冤罪に巻き込まれた理由なのかもしれない。
そんな北を横目に、何かを手帳に書き記す彩女。先ほど北の逃避行と書いたが、では彩女は? 一体彼女は何の目的があって、見ず知らずの男と旅をしているのだろう。その謎がわかったとき、果たして北はどんな反応を見せるのか。
初回から見応えたっぷりだった「雪女と蟹を食う」。特筆すべきは重岡の演技の幅の広さだろう。絶望、困惑、諦念、憤怒、愉楽……ここまで様々な表情を堪能できるとは、なんと贅沢なことか。重岡が北に体温を吹き込んでいるからこそ、自殺を決意してはいるものの、北があくまでも普通の人間であることが伝わる。それとは対照的に、彩女の掴みどころのなさを再現している入山もすごい。彼女が画面に映ると、ひんやりと冷たさを感じるようだった。
東京から、北海道へ。圧倒的な映像美と、2人の役者の体当たりの演技で紡がれるロードムービー。ここからどんな景色を見られるのか、楽しみだ。
(文:あまのさき)
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