© 藤本タツキ/集英社・MAPPA

アニメ好きライターが選ぶ!「2022年TVアニメBEST10」


今年もこの時期が来た。どこぞの得体のしれない、ライターを名乗るただのアニメ好きが、今年ハマりすぎてどうにかなりそうだったTVアニメBEST10を発表する時が。シネマズプラスはアニメ専門家にお願いしなくていいのだろうか。

といいつつ、思いがけず就職してなんだかんだ忙しくなった心の安定剤となったTVアニメを10作品紹介したい。

10位「サマータイムレンダ」



アニメにおいて複雑な設定は、視聴者を置き去りにし、離脱させてしまうことも少なくない。タイムリープSFサスペンスアニメ「サマータイムレンダ」も、少々複雑で理解が追い付かない部分のある作品だった。しかしその複雑さが、作品のおどろおどろしい雰囲気や絶望感をかきたてるエッセンスとなっていたように思う。

舞台である日都ヶ島に伝わる「『影』を見た者は死ぬ」という伝承が現実となった世界を描く本作。海の事故で亡くなった幼馴染の小舟潮の葬儀に参列するために故郷に戻ってきた網代慎平は、彼女の死の真相に近づく中で影に殺されてしまう。しかしこの死がトリガーとなり、タイムリープを繰り返しながら影の正体に迫っていくこととなる。



影の得体の知れなさと圧倒的な強さ。謎が解明できていないにもかかわらず、タイムリープで戻れる時間軸が徐々に死んだ時間に近づいていくスリル。次の話に引き継がれる、絶望的な状況……。テレビでの放送をリアルタイムで追っていた時は、次の週を迎えるのが怖くて仕方なかった。

緊張を解く暇がない分、全25話が一瞬にも感じられる一作。年末年始の一気観作品におすすめしたいアニメだ。

9位「ブルーロック」



「なんてパンクなサッカーアニメだろう」

外界と遮断された空間に集められた300人の有望な高校生フォワードが、将来のサッカー人生を失うのと引き換えに世界一のストライカーとして日本代表入りする権利を獲得するために競い合う、エゴイスティック極まるサッカーアニメ「ブルーロック」を観た最初の感想だ。

組織力、仲間との絆を大切にするから、日本サッカーは弱小だと言ってのける。日本代表はW杯で優勝したことないと煽る……。見ているこちらがヒヤヒヤするセリフのオンパレードだ。



主人公の潔世一も「間違っている」と心の中で語っていたように、過去の日本サッカーをバカにするともとれる言葉を全面的に肯定することはできない。しかし、己のゴールが何よりの喜びであっていい、その瞬間のために生きろという言葉に奮い立つ気持ちも、なんだか猛烈にわかってしまう。だからこそ、このアニメが描くイカれたストライカー育成プロジェクトに心惹かれてしまうのだ。

なにより、才能の原石たちがプレースタイルの個性をバッチバチに発揮しながら、エゴイズムをどんどん磨いていく姿に痺れてしまう。2クール目からも目が離せない一作だ。

8位「リコリス・リコイル」



「リコリス・リコイル」
といえば、放送日には必ずトレンド入りしていた、2022年を代表する一作と言えるアニメだろう。秘密裏の犯罪防止組織「DA」とそこに所属する戸籍のない少女たち「リコリス」の手によって治安が守られている日本を舞台に、錦木千束と井ノ上たきなのバディがさまざまな事件に立ち向かう日々が描かれる。

筆者が感じた本作の最大の魅力は、善悪の描き方にあった。作中で描かれている「世界一治安がいい日本」は、その実、銃の所持と犯罪者の抹消を許可されたリコリスと、犯罪があったという事実をもみ消すDAの存在で成り立っている。いわば仮初の平和だ。その“上辺だけ”の部分に抗う存在だったのが、天才リコリスでありながらも救世主になるという信念のもと不殺を貫く千束と、DAとリコリスの存在を世に晒そうと暗躍する真島。ふたりの意思や行動が「なにが善なのか」を常に問い続けていた。



また仮初の平和を守るため異常な環境に身を置きながらも、その居場所以外を知らないたきなが、左遷をきっかけに千束と出会い、自分の意思を大切に生きる道を歩み始める過程も熱かった。そんなふたりの絆が深まっていくのをあざ笑うように、新たな事件の動きや千束がずっと抱えてきた不穏な宿命が、展開に絡まり合っていく。

オリジナルアニメの「え、ここで終わり!?」「次、どうなんの!!」という楽しみを存分に味わわせてくれた一作だった。

7位「ぼっち・ざ・ろっく!」



筆者はこれまで、「エモい」という感覚がいまいちわからずにいた。ところが一瞬でわからせられたのだ。「ぼっち・ざ・ろっく!」で。

本作は、極度の人見知りにくわえ自分自身に大きなコンプレックスを抱えているため孤独を極めていた少女・後藤ひとり(以後、ぼっち)が、バンド活動を通して自分の世界を広げていく物語だ。

まずひとりがギターを始め、バンドを組みたいと思った理由に、かつて学生時代にバンドを組んでライブをしたことがある筆者の中で共感の嵐が吹き荒れた。

自分を変えたいと、ギターを手に取った瞬間。ギターを肩にかけた自分を見て、ワクワクする感覚。弦をかき鳴らすたびに膨らむ、バンドを組んだ未来、とちやほやされたいという欲。危うく、自分の物語かと勘違いするところだった。



そしてひとり押し入れで練習の成果を広大なインターネットの海に放流し承認欲求を満たしていたぼっちが、一緒に奏でることの難しさと楽しさを味わいながら、バンドとして成長していくことに喜びを覚えていく過程……。身に覚えがありすぎる。

またサブタイトルと最終話のエンディングに見た、聞いたASIAN KUNG-FU GENERATIONの楽曲たち。おそらく年代的な部分は大きいかと思うが、エモすぎて泣いた……。

いいことも悪いことも大切な人たちと一緒に経験した時間は、成長したいと思う力をくれる——。忘れかけていた優しい情熱を疑似体験させてもらった。ありがとう。

6位「チェンソーマン」



“期待するなって方が無理だと思いました”


筆者は「【2022秋アニメ】アニメ好きライター厳選のおすすめ“11選”」で「チェンソーマン」に対して、Twitterと勘違いしたかのようなコメントを寄せた。いやだって、無理じゃない? 参加クリエイター・公式PV・エンディングが毎話違うなんて情報を見て「いや、実際は1話見ないとなんとも言えなくない?」とか言えなくない? 

申し訳ございません、取り乱しました。ただもう、解禁される情報を裏切らないアニメーションが1クール続いたことは、賞賛に値するとしか言いようがないと思う。

筆者が本作で度肝を抜かれたのは、チェーンソーの重みだ。主人公のデンジがはじめてチェンソーの悪魔となって戦うシーンで見せた、チェーンソーに振り回されているバトル素人感に、彼が強くなる余白を感じさせてくれる。



また見せ場すらも想像以上にさらっと見せる映像のつくり方が、非常に実写的だとも感じた。このあたりは賛否別れるだろうが、デビルハンターたちにとって死と隣り合うことがいかに日常なのかを伝えるのにうってつけだったと思う。

また牛尾憲輔さんが手掛ける劇伴がいい。とてもいいのだ。個人的には心から憧れるギタリスト田渕ひさ子さんが参加した「edge of chainsaw」がかかる瞬間、血が湧きたった。

さすがに1期で終わんないですよね? 2期あるって信じて待っていていいですよね???

【関連記事】アニメ『チェンソーマン』OPのパロディから映画に「さあおいで」と全力でお迎えする特集

5位「リーマンズクラブ」



数々のスポーツアニメがある中で今年は、バドミントンを題材にした作品が2つも誕生した。なかでも弱小バドミントン実業団チーム「サンライズビバレッジ」の奮闘を描くという舞台の斬新さを見せてくれた「リーマンズクラブ」が熱かった。

サンライズビバレッジは実業団といっても「会社に籍を置く」ではなく、あくまで「仕事との両立」が求められるチームだ。会社にはチームを応援してくれる人ばかりではなく、興味がないどころか会社のお荷物扱いする人もいる以上、サンライズビバレッジのバドミントン部は、仕事でも競技でも結果を出さなければならない。しかも、練習時間は終業後から、かつ場所は近所の体育館という制約まである。

この実業団のシビアな一面にも触れながらも、プレッシャーを義務としてではなく強くなるためのバネとして捉え、競技にも仕事にも打ち込むキャラクターたちの姿が、背中を押してくれた。



なかでも、かつては競技にだけ打ち込める強豪チームに所属していた主人公の白鳥尊が、ダブルスのパートナーでもあり部署の先輩でもある宮澄健らとの仕事を通して、プレーはもちろん人としての成長を遂げていく姿には、どんな経験も自分の力になるというメッセージが詰まっているように感じた。

またなんといっても、バドミントンが持つスピード感が見事にアニメーションに乗っていた点も魅力だ。軽やかなはずのシャトルの迫力には、何度も息をのんだ。

全力スポーツお仕事アニメ。ありそうでなかった、熱き大人たちの青春が味わえる一作だ。

4位「その着せ替え人形は恋をする」



好きなことを好きだと言うのは、実は結構勇気がいることだと思う。ただ自分の好きに全力であればあるほど、日常の温度があがり、色が灯り、視野も広がるのだと改めて教えてくれたのが「その着せ替え人形は恋をする」だ。

友達がほぼいない男子高校生・五条新菜と、反対にたくさんの友人に囲まれる女子高生ギャルの喜多川海夢が、それぞれの「好き」を通して交流を深めていく様子が描かれた。

本作の魅力はなんといっても海夢ちゃんの、自分の好きも相手の好きも全肯定する圧倒的なポジティブパワーにある。「すっご~い!」「見せて!」と本当に心の底から相手の「好き」に興味を持ち、さらに自分の「好き」を勢いのままに語る彼女に、五条と一緒に背中を押された気分だった。そんな海夢の熱量を浴びて、彼女以上に彼女の好きなものを深く解釈していた五条もまた、「好き」に一途なのだと伝わってくる。



また本作はラブコメの一面も強くなっていく。五条への恋愛感情を自覚した海夢と、そんな彼女を無自覚に翻弄する五条のピュアなやりとりに、ときめきが抑えられない。

続編の制作も決定した本作。ふたりの「好き」と恋のその先が楽しみで仕方ない。

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