「らんまん」女であることに苦しむ綾が朝ドラヒロインのような<第7回>
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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。
「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第7回を紐解いていく。
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時代の変わり目を描く
竹雄(南出凌嘉)のポイントが上がっていくばかり。名教館にはじめて行った日、武家の子どもたちにからまれた万太郎(小林優仁)を竹雄が体を張ってかばいます。
万太郎「どういてここが冷えるがじゃろうか」
竹雄「たいへんじゃそれは風邪引く前触れですき」
と万太郎の気持ちをすこし勘違いして、でも竹雄を一心に心配しているところも誠実です。
世が世なら、その場で手討ちにされていたかもしれませんが、江戸時代が終わって、士農工商の身分制度がなくなったため、無事でした。竹雄は清々しい顔をします。悔しい身分制度から解放されているからです。
武家の子たちむしろ、武士の時代が終わってしまったため明日を憂う日々なのです。
だからこそイライラしているのでしょう。
それまで、武士が社会の頂点にありある意味安泰だったのに、今後は士農工商、関係なくなって、己の才覚で生きていかないといけない。そう急に言われても、戸惑います。これっていまの時代にも言えることかもしれません。価値観が急速に変わって、いまのままではいられない状況。それでもなんとかしないといけません。
武家以外の者たちにとってはチャンス。理不尽な身分制度で虐げられていた者たちも実力次第で上にいける。名教館の門の掃除をしているおじさん(寺脇康文)はだからこそ学ぶのだと言います。
第6回レビューで、掃除のおじさんが学頭の池田蘭光だとクレジットにあったからネタバレじゃないとしましたが、第7回でもまだ万太郎は気づいていません。なので、気のいいおじさんとしておきましょう。
ただ、万太郎は、謎のおじさんの、
「おまんもしきたりにとらわれんといまこそ変わるときなんじゃ」という言葉を強く心にとめました。
寺脇康文さんの雰囲気が、龍馬の一般的イメージとかぶるんですよね。たぶん、寺脇さんが龍馬を演じてもこのトーンだったんじゃないかと思います。ディーン・フジオカさんはやや少女漫画ふうだったかも。
「しきたり」から逃れられないのはタキ(松坂慶子)です。
酒造りの仕事に惹かれる綾(高橋真彩)に、女は当主にはなれないと厳しく言います。タキ自身が男女差をいやというほど味わってきたから、考えを変えることはなかなかできません。武士たちと同じです。
松坂慶子さんが、こういう頑固なことを言っても、あんまり気にならないのは、生々しい感情をセリフに入れてないからかなと感じます。「めいこうかん」「めいこうかん」とはっきり言うことに力を入れていて、ただただ一生懸命。その生真面目さが全面に出ていて、いやな感じがしないのです。
綾は蔵にはじめて入ったとき、そのにおいや、何か(菌)が生きてる気配を感じて、心惹かれます。お酒も生きている。
万太郎は植物に、綾は酒に、共鳴しているのです。恋みたいなものです。好きな人と生きることが幸せ。万太郎は植物と、綾は酒と、共に生きられるといいなあと思います。
変われと言われたり変わるなと言われたりして万太郎が迷うとき、
右と左にそれぞれねじれた植物が映っていたのが象徴的でした。
(文:木俣冬)
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