「らんまん」竹雄、櫛、渡すかと思ったのに<第20回>
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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。
「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第20回を紐解いていく。
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万太郎、やっぱりマイペース
万太郎(神木隆之介)と万次郎(宇崎竜童)。名前が似ていて、文字にするとこんがらがります。うっかり入れ替わったらすみません。
万太郎は、中濱万次郎ことジョン万次郎の著書を子供のときに読んでいて、実物に会えたことに感激します。
万次郎さん、かなりレジェンドのようです。
事実、現実世界でもレジェンドなので、万太郎は、本で読んだ万次郎伝説を一通り、視聴者に向けて説明してくれているかのように語ります。逸馬(宮野真守)も説明を引き継ぎます。
日本が鎖国していた時代に渡米した万次郎は、帰国してからは通訳などで活躍しますが、アメリカのスパイと疑われることもあったことから、彼にとって「自由」とはアメリカに行っていた時代のもので、日本に帰ってこないほうがよかったと、苦しみ、気鬱の病にもかかっていました。
万太郎の目に映った万次郎は、冒険者として輝いている人ではなく、過去を懐かしむ隠居した人物。自分だけができることがありながら、それをしなかったことを悔いている彼を見て、万太郎は、悔いのない生き方をしようと思ったようです。
万次郎からシーボルトの植物図鑑をもらった万太郎は、そこに1ポーズしか書かれていなかったことから、同じ植物でもその四季折々の姿を記録しないと完璧ではないと感じ、日本の植物の完璧な記録を残せるのは自分しかいないと確信をもつ。
「今、やらんといかんがです」とはりきる万太郎。彼がどこか突出した人物であることは、これら一連の彼の言動からわかります。
過剰に万次郎やシーボルトを崇めることもなく、客観性をもって接していますし、結局、自分の植物愛に寄っていって、自分がやる意義を見出していくのです。
第19回で、竹雄(志尊淳)が、綾(佐久間由衣)に「欲は前に向かうための力」だと言いましたが、万太郎はまさに欲望をエンジンにして前進しようとしています。
ラストカットの万太郎のきっと前を見据える強いまなざしが印象的でした。
神木くん、小柄で一見あどけないけど、骨太感あります。
「あさイチ」にゲストで出た、逸馬役の宮野真守さんが、神木さんが撮影中、間違えても止めないで自分で編集点を作って、カットがかかるまでは続けているエピソードや、本番中、バミリが見きれないように動いて隠そうとしたエピソードを話していましたが、現場に慣れた人はこのように実務的能力に優れているのです。
演技力より現場対応力。
さて、竹雄ですが、綾に櫛を渡そうとしますが、タイミングを失って、結局渡すことができません。綾は自分が強欲で他者のことを考えてないことを反省したり、たまたま目撃したおばあさんと孫を見て、タキ(松坂慶子)を思い出し(この、仲のいいおばあさんと孫を見ることをひとつ描くところがいいのです)、祖母の言う通りにしようと諦めたりするわりに、竹雄の心情に耳を傾けることができません。勝手に自己完結して竹雄に自由になれと話をまとめてしまいます。竹雄にとっての「自由」は綾との身分の壁を超えることなのに。
「ふたり(綾と万太郎)のそばにおりたい」
「たとえ離れても一生お守りすると誓います」と渾身の言葉をかけますが……。
「そして行くがじゃ」と決意をした万太郎。どこにも行けない竹雄。
竹雄も前進してほしい。
(文:木俣冬)
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