© ABC All rights reserved.
© ABC All rights reserved.

国内ドラマ

REGULAR

2023年04月27日

ドラマ『ガチ恋粘着獣』本当のファンとは何か?ガチ恋が想像以上にガチ過ぎて見逃せない…!

ドラマ『ガチ恋粘着獣』本当のファンとは何か?ガチ恋が想像以上にガチ過ぎて見逃せない…!


とんでもないドラマを見てしまった……。『ガチ恋粘着獣』第1〜3話を見た率直な感想は、これに尽きる。ネット動画配信者に“ガチ恋”する女子大生の物語なのだが、果たして彼女に共感できる人はどれくらいいるだろう? ガチ恋を通り越して、もはやクレイジーだ。さすがタイトルに「獣」と冠するだけある。

女子大生のガチ恋を追うドラマがいつの間にかホラー展開になっていたり、新たなガチ恋勢が登場したりと、第3話までの時点で見どころ満載。くわえて1話30分と短い構成なので、今からでもじゅうぶん間に合う。ドラマ「ガチ恋粘着獣」で描かれるガチ恋のガチっぷりを、第1〜3話のストーリーを見ながら振り返っていきたい。

思わず共感!? オタク界隈の独特な文化

香音演じる女子大生・雛姫(通称・ひな)は、ネット動画配信者・スバル(井上想良)にガチ恋をしている。ガチ恋とは、役者やタレント、アイドル、YouTuber、VTuberなどに本気の恋心を抱く現象を指した言葉。「ファン」や「オタク」とはまた違ったニュアンスを示す。


第1話、動画配信中のスバル(3人組の動画配信者グループ「コズミック」の一員)に画面越しに話しかけるひな。動画配信チャンネル登録者数100万人を祝ってのライブ配信に合わせ、クラッカーやケーキなどを用意している。

オタク界隈には、いくつかの“特殊な文化”があり、上記のように「推し(=応援している対象)」の記念日を一緒に祝うのもそのひとつ。わかりやすい例でいえば、推しの誕生日当日にケーキやプレゼントを用意したり、部屋の飾り付けをしたり、ファン同士で集まってカラオケなどでパーティをしたりする「本人不在の誕生日会」が近いだろう。

このドラマのように、推しがYouTuberやTikToker(=短尺動画配信アプリ「TikTok」で人気の動画クリエイター)など、役者やアイドルと比べると距離が近く感じられる対象であればあるほど、ガチ恋化は進みやすい傾向にある

ガチ恋のダークサイド……もはやホラードラマ

コズミックのスバルにガチ恋してしまった、ひな。スバルが月1のソロ生配信を始めるや否や、金銭的に苦しいにも関わらず万単位の投げ銭をしてしまう

投げ銭とは、配信者に対して金銭をプレゼントできる機能のこと(配信媒体によって呼称が変化する)。ドラマ内では、投げ銭付きのコメントはスバルに読んでもらえる確率が上がることから、ファンがこぞって「投げ銭合戦」をする様が描かれている。


第1話では、ひながスバルに向けるガチ恋心に共感できる面もあった。だが、他のファンに敵対心を燃やしたり、必要以上にスバルに執着する心境は病的だと感じてしまう。けれど、推しを応援したい気持ちが強くなりすぎると、認知(=オタク界隈では、推しに存在を把握・承認してもらえる現象を指した用語)されたい気持ちから身銭を切ってしまう気持ちも、わからなくはない。

しかし、第2話でその印象が覆る。いや、覆るというより、予想し得る範囲内でもっとも「ガチ」で「マズい」方向に振り切ってしまった、といったほうが近い


第2話では、ひなと同じくスバルにガチ恋している、りこめろ(中田クルミ)が登場。どちらも自身のことを「スバルの本物の彼女」と思い込んでいるが、案の定、スバルにとっては複数人いるファンのうちの一部に過ぎない。

「自分たちは、スバルにとっての“特別”じゃなかった」……この事実は彼女たちを稲妻のように貫き、さらに狂わせてしまう。りこめろは飛び降りて自死を図ろうとするわ、ひなはスバルの自宅に押しかけて彼の脳天にハンマーを叩き下ろそうとするわ……。スバルが生配信をしている背後から、カーテンや観葉植物の葉が揺れるのが見えるシーンは、ホラーの極みだ


ひなや、りこめろの狂信的な姿を見ていると「いくら好きでもここまでは……」と若干引いてしまう気持ちがある。

しかし、スバルという一人の人間に入れ込む、ひなやりこめろの姿を見ていると、「私は違う」と自信を持って言い切れるだろうか。“推し”という存在がいる人は、これまで一瞬でも「自分だけを特別視してもらえたら……」と夢見たことがあるのではないだろうか。

だからといって推しに危害を加えていいわけではない。本来ならば、推しに近づきたい気持ちを倫理観と良心が止めるのだが、ひなやりこめろはとあるきっかけで倫理観と良心で止められなくなってしまったのだ。

香音の狂気的な演技に鳥肌


ネット動画配信社にガチ恋してしまう女子大生、といった役柄を違和感なく、むしろ鬼気迫る演技で体現しているのは、モデルやタレントとしても活躍する役者の香音だ。とくに3話において、スバルに対する過剰な愛が爆発している。

生配信中のスバルの自宅にハンマーを持って押しかけ、「私のスバルくんを返してよ!」と迫る様子は狂気に満ちている。愛と憎しみは表裏一体というけれど、まさにその通り。スタンガンやロープをネット購入し、「スバルくんのお家、どれがいいかなあ」と言いながらトランクルームを物色しているひなは、もはやファンの域を超えてしまっている。


しかし、その後、怯えるスバルに対し「ひなの隣にいないスバルくんが好きです」と泣きながら話すひなは、かつてコズミックの100万人登録者達成を祝っていた、ピュアなファンに戻っていた。

好きすぎて、独り占めしたい。好きすぎるから、ずっとそのままでいてほしい。ファンが抱える複雑で重層的な思いを、そして、自分で自分の首を絞めてしまう苦しさを、これでもかと生々しく表現している香音の演技に、自然と引き込まれてしまう。


第4話以降は、おそらくコスモのガチ恋勢である花織琴乃(石井杏奈)も参戦。第3話までとはまた違った、ドロドロしたガチ恋バトルが勃発しそうである。「自分は危険なファンではない」と公言するファンに限って、もっとも危険な言動をしそうだと思ってしまうが……。果たして、琴乃はどんなクレイジーぶりを見せてくれるのか。第3話以降の展開にも期待したい。

果たして「本当のファン」の定義とは何なのか……? “推し”がいるすべてのファンにとって、見て見ぬ振りはできないドラマになりそうだ。「ガチ恋粘着獣」第4話は、4月29日深夜2:30(テレ朝系列)、4月30日深夜0:05(ABCテレビ)で放送。1〜3話もTVerで配信中のため、ぜひ前もっておさらいしてほしい。

「ガチ恋粘着獣」をTVerでチェックする

(文・北村有)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

© ABC All rights reserved.

RANKING

SPONSORD

PICK UP!