「らんまん」綾の問題提起「未来永劫『女は穢れちゅう』と言われ続けるがか」<第24回>
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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。
「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第24回を紐解いていく。
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「呼ばれちゅうがよ」
万太郎(神木隆之介)の旅立ちは、ずいぶん尺を使って、丁寧に描かれています。万太郎とタキ(松坂慶子)の会話を視ていると、もともとは家を守るということが優先順位だった制度ではありますが、タキにとっては、子供の人生の安定を守ることでもあったように感じます。峰屋は裕福なので、それを継げば、万太郎は安泰ですから。
何も好き好んで、どうなるかわからない世界に子供が向かうことが心配でもあるのでしょう。
タキは綾(佐久間由衣)のことを養子にして、彼女のためそれを秘密にしてきたくらいですから優しい人なのです。
「呼ばれちゅうがよ」と家を離れていく万太郎に「おまんを許さんぞね」と言いながら泣いているタキ。
万太郎が「おばあちゃん おばあちゃん」とタキに抱きつくときの神木さんの声と表情は迫真でした。松坂慶子さんは強さと可愛さを持っていて、男性女性、関係ない時代とはいえ、女性の良さを最大限に活かしながら、女性は決して弱いものではない、というところを体現しています。
二人の話を聞いていた綾は、母(広末涼子)の残した花の絵(万太郎が描いたもの)を出して抱きしめます。
好きなことをやることの願いの象徴のような、花の絵を抱く綾の横顔と、泣く万太郎の横顔、ふたりの横顔に心情が満ちています。
竹雄(志尊淳)にも変化が。植物の変化に気づけるようになり、万太郎に対してもやや積極的になりました。
そして秋になって、酒造りの職人がやって来る日。綾が万太郎の代わりに当主になる発表が行われます。初回から、この日が酒蔵によっていかに大切な日かずっと描かれてきましたから、視てるほうも、背筋が伸びる気持ちです。
そこで綾は毅然と自分の意見を述べます。
「未来永劫『女は穢れちゅう』と言われ続けるがか」と問いかける綾の真摯さに皆、心打たれます。とくに、女性の使用人たちがぐっと来ている表情をしていましたし、真っ先に賛同の声をあげたのも女性たちでした。
それから、長年尽くしてきた市蔵(小松利昌)も賛同します。女性や使用人たちが綾の言葉に共鳴しているところにリアリティを感じます。綾が高知の自由民権運動に、そこに女性も参加していたことに触れた成果でしょう。
佐久間由衣さんは「ひよっこ」(17年度前期)のときも「日本中のいや世界中の女の子たち女性たち いろいろ大変だよね 女として生きていくのは
でもでも 女の子未来は私に任せて みんな私についてきて」というセリフを託されていました(第141回)。
「ひよっこ」は昭和の高度成長期。明治から何年も経っているけど、女性の立場は相変わらず弱いのですが、綾のような人もいたから、「ひよっこ」の時子のような人も出てきた。一歩踏み出さないと変わらないのだということを感じますし、朝ドラは繰り返し辛抱強く諦めず、語り続けているのです。
万太郎と綾の決断に不満を漏らす者もいます。でも、万太郎は
「道がのうても進むがじゃ」
「わしらが道をつくりますき」
(万太郎)
とすっかりたのもしい。黒い紋付きを着た姿もきりっとしていました。
幸吉(笠松将)が今年から所帯持ちになったと紹介されます。綾が目撃したときは新婚ほやほやだったようで。もうちょっと綾が先に積極的になっていればうまくいったかもしれないけれど、運命のいたずらです。
(文:木俣冬)
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