「ホスト相続しちゃいました」毎話名言が刺さる!異色のホストドラマの魅力とは?
カンテレ制作ドラマ「ホスト相続しちゃいました」が、新ドラマ枠「火ドラ★イレブン」(火曜23:00)第一弾として2023年4月18日から放送スタート。桜井ユキ演じる34歳独身・広告会社で営業を務める本橋久美子が、亡くなった叔父が経営していたホストクラブを相続することから始まるストーリーだ。
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三浦翔平演じる社長の直樹、八木勇征演じる代表のMasato、兼近大樹演じる総支配人の如月武蔵(以上三幹部の名称は、明確なトップが決まっておらず権力が分散していることを表したもの)、宮世琉弥演じる新人ホストの夜空流星、鈴木ゆうか演じる男装ホストの神童ルイなど、安定の実力派俳優に加え、有望視された若手も名を連ねる。
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美麗なホストたちの魅力もさることながら、かつてはコピーライター志望だった久美子の“自己実現ストーリー”や“お仕事ドラマ”とも取れる本作の魅力を解説したい。
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後輩から遠回しに「井の中の蛙」と見下されるやるせなさ
本作の主人公・本橋久美子(桜井ユキ)は、広告代理店で営業を務めているが、もともとはコピーライター志望だった。第1話では、久美子のデスクに置かれたコピーライティング教本に目を留めた、後輩のコピーライター・西野莉奈(志田彩良)に「コピー興味あるんですか?」と聞かれる場面も。また、道端で会ったホスト・Masato(八木勇征)と久美子でシーシャ(水タバコ)を吸いに行く展開になり、「普段は何やってる人?」「一応、広告」「あ、コピーライター?」「……に、なりたかった人」と久美子が自己紹介するやりとりもある。
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コピーライターになりたい夢を捨てきれない久美子。しかし、30代半ばで「今さら」夢を追う気にもなれないでいる。彼女が叔父から相続することになったホストクラブ「MAJEST」の社長・直樹(三浦翔平)も、久美子のことを「営業に向いている」と評していた。久美子自身も、クリエイティブよりは営業で活きる自身の強みを自覚しているのかもしれない。
かといって、広告代理店の営業に誇りを持っているわけでもない。西野から「ロケ先のお土産です、本橋さんっぽいなと思って」とカエルの置物をプレゼントされた久美子は、複雑な表情に。
その後、たまたまお手洗いで鉢合わせた後輩たちが「先輩たちを見てると、このままでいいのかなって思うよね。井の中の蛙」「もしかして、本橋さんにカエルの置物あげたのって……」などと会話しているのを聞いてしまう。久美子のモヤモヤは、余計に募るばかりだ。
“もう”私は、と思うか。“まだ”私は、と思うか
▶︎本記事の画像を全て見る(場面写真44枚)本作の見どころのひとつとして、直樹と久美子が会話をするシーンで頻出する“名言”を挙げたい。
若いホストたちをマネジメントする立場にいる直樹は、常に周囲を俯瞰する冷静さと、必要以上に場を深刻にさせない気さくさを併せ持っている。おそらく久美子とは年齢が近いこともあり、ぶつかり合うこともあるが、対等に話せる関係だ。
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第1話にて、副業禁止の広告代理店で働いていることから、いくら叔父の遺言だとしても、ホストクラブを相続するのに腰が引けていた久美子。そんな彼女の表情や声色を敏感に察知し「何かあった?」と心配する直樹は、さすがホストとしての洞察力に長けている。
久美子に対し「俺は君を本気ですごい人だと思ってる」という直樹の言葉は、ホストが口にしていると思えば、営業トークや過剰な褒め言葉と受け取られるかもしれない。
それでも、彼から発せられる言葉には妙な説得力がある。「真っ直ぐで、家族思い。愛がある」と率直に伝えてくれる直樹の誠実さがあってこそ、久美子はホストクラブの相続を決めたのかもしれない。
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「もう私は、と思うか。まだ私は、と思うか。それだけで人生は180度変わる」
この言葉に背中を押される視聴者も多いのではないだろうか。年齢を重ね、社会人になり、それなりに社会経験を積むと、自分の天井のようなものが見えてくる瞬間がある。仕事、プライベートの両方で、「だいたい自分はこれくらいの位置だろう」と行動力がおよぶ範囲を決めてしまうようなイメージだ。
「もう私は、これくらいでいい」「もう私は、ここが限界だ」……諦め、といえば聞こえは悪いけれど、適切に妥協することを繰り返して生きるのは自然なこと。それでも直樹の言葉は「まだ私は、やれるかもしれない」と自らの可能性を思い出させてくれる。
正論は、愛がない暴力だ
▶︎本記事の画像を全て見る(場面写真44枚)第2話でも直樹の名言が登場する。ホストクラブの相続を決心した久美子だが、あるトラブルから姫(ホストクラブに訪れる女性客を指した呼称)に包丁で刺されてしまったMAJESTの総支配人・如月(兼近大樹)のことで、新人ホスト・流星と揉めてしまう。
落ち込む久美子に、直樹は声を掛ける。「正論って、暴力」「正しいだけで、愛がない」と。ホストたちに対し正論でぶつかっていた久美子にとって、シンプルに刺さる言葉だろう。
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確かに久美子が口にしていたように、ホストクラブは「女の人を騙してお金をとる」ビジネスモデルなのかもしれない。それに、姫たちに対して枕営業や軽い口約束を繰り返す如月のやり方は、褒められたものではない。
かといって、すべてのトラブルを正論で矯正できたら、そんなに楽なことはないのも事実。なぜなら、そこには必ず“人の心”が介在しているからだ。
正の反対が誤で、ツーと言えばカーと返ってくるのが当たり前の世界なら、正論だけを武器に戦っていけるかもしれない。しかし、私たちが生きる現実は複雑で曖昧だ。久美子が、広告代理店の仕事を続けながらホストオーナーになった(=副業する道を選んだ)のも、性急に「正解」を追い求めるのをやめたから。
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正しさだけでは世界はまわらない。そこには複雑な愛と、曖昧な人の心がある。
もともと、ホストクラブを相続すること自体に及び腰だった久美子。ホストに対する偏見がそうさせていたのだろう。実際に、姫に刺されたこと自体を面白おかしく笑い飛ばしたり、退院早々「復活祭」と称して催しをしたりする如月のやり方に、久美子の偏見はますます強くなった。
しかし、新人ホストの流星から「如月さんが法廷で証言したことは、ホストからしたら当たり前。ビジネスとしてやっている」と諭され、直樹から「正論には愛がない」と言われたことによって、久美子の“ホストに対する偏見”が多少は変化したように見える。
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それが、広告代理店の営業とホストオーナーを兼任する、といった選択に表れているのではないだろうか。自分の価値観と合わない意見に対し、真っ向から正論をぶつけて戦うのではなく、理解する姿勢を示すこと。第3話では、Masatoからホストをやってみるようけしかけられ、実際に久美子が男装ホストとして接客を体験する展開になる。久美子は身をもって、ホストとは何たるかを知ることになるのではないだろうか。
カンテレが送る新ドラマ枠「火ドラ★イレブン」の第一弾「ホスト相続しちゃいました」は、美麗なホストたちが登場することでも注目を集めている。しかし、毎話に散りばめられた名言も見どころのひとつ。ぜひ今からでも、TVerで配信中の最新話をご覧いただきたい。
(文・北村有)
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