インタビュー

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2023年05月25日

最近のカップルは「イチャイチャしなくていいんだ!?」森田成一インタビュー

最近のカップルは「イチャイチャしなくていいんだ!?」森田成一インタビュー

2016年に発売されたラブサスペンスアドベンチャーゲーム「Collar×Malice」が劇場版アニメ『劇場版 Collar×Malice -deep cover-』になって公開される。原作で描かれる「X-Day事件」の裏側で起きたもうひとつの事件を描くオリジナルストーリーだ。

今回は柳愛時役を演じる森田成一さんに話を聞いた。

原作ゲームが好きな人も楽しめる


――今回、劇場版が製作されると聞いた際のお気持ちはいかがでしたか?


森田成一(以下、森田):何年も前からアニメになる話は上がっていたんですが、どういう形になるのかが分からなかったんです。今回劇場という大きな場所でやることにもひとつ驚きましたけど、それが前編後編に分けられるということだったので、さらに驚きが大きかったなというのが率直な感想ですね。

――脚本を読んだときの印象はいかがでしたか?

森田:劇場らしい作りになっているなと。「Collar×Malice」はもともとゲームということもあって、ストーリーが長いんですよね。絡んでくる人間も謎も多いので、それを劇場前後編にまとめるとなると、相当はしょらなきゃいけない。それが今回はもともとのストーリーの裏側で起こった話を描くことで、1つの事件に絞ることができたのはすごいなと思います。ゲームの中での事件も放り出すわけではなく、裏側で匂っている形で展開していくので、ゲームが好きな人も世界観をずらさずにご覧になれるんじゃないかな、と。


――劇場版ではキャラクターの新たな魅力も楽しめそうですね。

森田:それぞれのキャラクターの魅力がふんだんに盛り込まれています。ゲームでは選択肢によって途中プレイヤーの皆さんの手心次第で間が空いてしまったりするところは当然ありますが、今回はアニメになっていて、すべてがしっかりとした会話として成り立っていますので、劇場版ならではのナチュラルさは全編に出ていると思います。

それと、ヒロインの星野市香についに声がついているので、そこはもう本当にぜひぜひお楽しみポイントとして観ていただきたいですね。今回、収録時に初めて声を聞いたとき、まさに想像していたそのものの声だと思って。きっとゲームをプレイしている方も違和感なく、ゲームの世界とアニメの世界、ボーダレスで入っていけるんじゃないかと感じました。

――改めて、森田さんが演じられる柳の魅力はどういったところだと思われますか。

森田:このメンバーの中では一番落ち着いている役だというところかな。他のキャラクターたちは際立った特色しか持ってないような連中ばかりなので(笑)、その中では一番まともかと。「Collar×Malice」での柳は、お父さんだったり、お母さんとか言われたりする立ち位置なので、作品の一番のベース、下支えみたいな位置。そこが今回もしっかり出たかなと思いますね。

シーンによっては、柳の揺らぎというんでしょうか、そういった繊細な感情の動きも観て取ることができるので感情移入しやすいんじゃないかと思います。

いつも以上に集中してできた収録


――収録はおひとりでされる形だったんでしょうか。


森田:実はですね……この収録の直前にコロナにかかってしまいまして。その勢いで喉を壊してしまいました。そのため、全員の収録が終わったあとに、僕が録るということで……(スタッフさんに向かって)本当にその節はすみませんでした!

だから、みなさんと一緒に収録することは叶わずだったので非常に残念でした。しかししっかり喉もケアして休んだ分、時間的にも「Collar×Malice」に集中していけたので、いい形で向き合えたと思います。

――みなさんの声が入った状態ということで、聞かれていかがでしたか?

森田:既存のキャラクターの声はやっぱり「あのままだ」という安心感がありました。それと普段の声も知っているので、みんなの声に劇場版であることの喜びが乗っているのは感じましたね。少しテンションが上がっているような感じもありますし、ゲームと違ってひとりだけで話しているシーンではなくすべて会話になっているので、そこに注意を払ってやっているなと感じました。

イチャイチャしなくていいんだ!?


――今回、原作が恋愛シミュレーションゲームですが、森田さんはこれまでにも多くの作品に出ていらっしゃいますね。


森田:声のお仕事をやり始めたばかりのころ、初めて恋愛シミュレーションゲームというカテゴリーのオーディションを受けたときのことです。どういう作品か説明を受けてからブースに入るんですけど、クライアントから説明されたときに自分がやってしまったことが今でも忘れられないんです。

あろうことか「恋愛シミュレーションゲームですか。失恋シミュレーションだったら得意なんですけどね」って言ってしまって……。現場が凍りました。それまでの舞台業界だったら、この手の冗談は大丈夫だったんですけど、こっちではダメなんだ、と。やっちまったと思いました。 オーディションを受ける前から落ちたなと思ったんですけど、幸い受かりました(笑)。


――まさかのエピソードが……(笑)。そんな森田さんが恋愛シミュレーションゲームに出演される中で感じる恋愛の形の変化はありますか?

森田:恋愛!?(笑)ははは!

そうですね……。今年で51歳になるんですけど、最近流行っているマッチングアプリがちょっと僕には信じられなくて。全く会ったことがない人たちが、スマホの中で出会ってそれで恋をするのは怖くないのかな?って。アプリストアで見てみたら、まあたくさん出てくるんですよね。こんなにあるんだってびっくりしました。それも恐ろしくてすぐに閉じましたけど(笑)。コロナというのもひとつの要因ではあると思うんですけど、リアルなコミュニケーションが希薄になったなというのはありますね。

外でカップルがデートしているのに、2人ともスマホを触ってるじゃないですか。ああいうのも僕は良く分からなくて。あれでいいんだ!? イチャイチャしなくていいんだ!?と(笑)。きっとおっさんになったのでしょう。

今の恋愛は結構ドライだし、個人の尊重であったりということも世の中の気風として大きなものになってるので、恋愛でも個人があって、お互いの異なる部分は尊重しながら、共通の部分を楽しんでいく形に変わったのかなと思います。

自分であまり勝手にキャラクターを成長させないようにしている


――長く続くシリーズにも多く出演されています。その中で気をつけていらっしゃることはありますか。


森田:考え方自体、ものすごくゆったりとした捉え方をしてますね。

例えば1クールで終わるとなると、その中での起承転結がすごく早いんですよね。1話は導入だとしても、2話から一気に話が盛り上がっていくから焦らなきゃいけない。5話、6話に行くときはもう2段階目、3段階目ぐらいの盛り上がりを見せていかないと。あとはもう、とにかくまとめていこうっていうような忙しい感情表現になってくるんです。

しかし長い作品になってくると、全体の感情の盛り上がりが10段階だとして、1年目だったら1.5ぐらいまでいってればいいかな、という感覚でいるんです。2年目に入ったら3に行って、次が5に行って、一旦2に落として……とか。バイオリズムのようなものを長くとっているんですよね。そこで焦ると長い作品ではゼーハーゼーハー息切れしちゃって、キャラクターが疲れてしまうんです。なのでそうならないようにゆったりと構えています。

それはやっているうちに生まれた勘かもしれません。


――役や作品に対しての作り方も変わってくるということなんですね。

森田:根本として、役の下にある森田成一という役者の立ち位置はいつもそういう感じでゆったり流そうとしています。成長度合いをゆっくりさせるというか。

例えば、いきなり1話から戦いが始まって、巨大な敵を5話で倒しました、でもこの話があと100話以上続きます、となったときに一気に育っちゃうとまずいので、戦いはして勝ちはするけど、育っていない部分をわざと作っておくということは常にやりますね。そんなに簡単に人間は成長しませんから。急激に成長するのはドラマティックなとき。それこそ一番作品が盛り上がるところだから、わざと成長させなかったところを、ここで成長させたりします。しかし大部分は脚本と演出にお任せして、自分であまり勝手に成長させないよう、むしろ抑える努力をしています。

自身の経験が生かされた「柳」というキャラクター


――作中で柳の言葉として「当たり前の日常」というワードが出てきます。最後に、森田さんが「当たり前の日常」を送るために心掛けていらっしゃること、大事にされていることを教えてください。


森田:「Collar×Malice」で柳が言っている日常って新宿の中でのことなんですよね。僕も18歳のころからずっと新宿にいたんです。バイトをしたりして、毎日毎日入り浸っていました。……別に悪いことをしていたわけじゃないですよ?(笑)

新宿の空気感をそれこそ30年前ぐらいから知っているんです。本当にいろんな人間がたくさんいるんですよ。記事に書けないような話もたくさんあるんですけど(笑)、そんな新宿をずっと見てきたので、柳が見ている世界は結構すんなりと入ってきました。この作品での日常の表し方は自分の経験に基づいているところが多いですね。

ただ、普段の僕自身は、若いころから比べると生活の仕方が変わってきています。もともと人混みは好きじゃないんですけど、さらに嫌いになりました。ですので公園に行ったり、土手に行ったり。写真を撮るのが好きなので、人のいないところにいるのが好きです。

喫茶店もクラシックで静かなところに行ってボーッと本を読みながら、コーヒーを飲んでるのが大好きですね。

将来の夢は、山に引きこもることかな。長野県とか山間部に家を建てて、そこで木工細工を作ったりしながら、それを細々と売りながら生きたいですね。

(取材・文=ふくだりょうこ)

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ⒸIF・DF/劇場版Collar×Malice製作委員会

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