「らんまん」妻が高藤を「みっともない」と一刀両断<第55回>
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2023年4月3日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「らんまん」。
「日本の植物学の父」と呼ばれる高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。激動の時代の中、植物を愛して夢に突き進む主人公・槙野万太郎を神木隆之介、その妻・寿恵子を浜辺美波が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第55回を紐解いていく。
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ユウガオのお姫様、来ました
物語(フィクション)の楽しみが詰まっていました。万太郎(神木隆之介)が植物学の学会誌を作ることができたので、大畑(奥田瑛二)に仲人として、白梅堂に釣書を持っていってもらうことになった。いよいよ! と思ったら、
仏滅。この一日のロスの間に、すれ違いがあったら……とやきもき。
万太郎ににわか失恋した佳代(田村芽実)が白梅堂に向かいます。余計なことを言い出すんじゃないかと思って、やきもき。ですが、逆に、高藤(伊礼彼方)との縁談(?)がある情報を持って帰ってきます。お手柄!
いてもたってもいられず、仏滅の翌日・大安の早朝に釣書をもって行く大畑。
店の前で、文太(池内万作)とやりとりするシーンが第55回の見せ場です。
「時が来ましたか」
「よくぞいらっしゃいました」と店内に導き入れる文太。
わくわくします。
たとえば、「ロミオとジュリエット」は、大事な手紙が遅れて悲劇になってしまいますが、万太郎と寿恵子の場合、大事な手紙が間に合ったのです。胸が熱くなります。
ここで、釣書を読んで、感動! という場面があるかと思うとーーない。
仏滅から大安(翌日)にーー。その日は、発足会、寿恵子(浜辺美波)がダンスを披露する日でした。さすが、大事な行事は大安に設定されているんですね。
寿恵子は堂々とダンスを披露。
高藤は、鹿鳴館を作って、西洋文化を日本に浸透させた暁には、西洋と対抗すると熱く語ります。それを聞いて、クララ(アナンダ・ジェイコブズ)はそんなつもりでダンスを教えたのではないときっぱり言い、寿恵子も賛同します
これから生まれ変わるのだと言う高藤に、寿恵子は「私のままでなぜいけないんですか」と反抗します。
西洋式の馬の乗り方に失敗して亡くなった父もそうだったと考えている彼女がダンスを習った理由は、「分かり合うためです」。
高藤の手を振り払い、クララの手をとる寿恵子。そして、毅然と去っていきます。
その先には、万太郎がーー。
ここで明らかになるのは、男たちのコンプレックスと征服欲です。西洋に負けたくなくて、西洋を力で征服し、上に立とうとしている。男たちはこれまでずっとそうやって、征服の歴史を築いてきました。女たちはそれを批判します。
寿恵子が去ったあと、これまで沈黙してきた妻・弥江(梅舟惟永)が口を開きます。
「みっともない」
西洋を意識して、男と女を対等に扱うと言いながら、その本質を理解していない日本の男たち。彼らが女性を引き上げようとしているのは、夫人を同伴しないと一等国とみなされない、からでしかないのです。
そんな男たちをあざ笑い、去っていく弥江と女たち。
弥江の「どうぞお好きなだけお仲間と踊ってらしたら?」は痛烈でした。
見せ場のふたつめです。15分の間に、見せ場がふたつも! ラストの寿恵子と万太郎の再会を入れたら、3つです。惜しげなく見せ場が作ってあって、すばらしい。
「どうぞお好きなだけお仲間と踊ってらしたら?」のセリフに、昭和のヒット歌謡、越路吹雪の「ラストダンスは私に」(作詞:岩谷時子)を思い出しました。この曲は、恋人がほかの人と踊っていいけどラストダンスが私に、という理解のある女性の、でも情念も感じる歌であります。
弥江は昭和歌謡のように健気に男を待たず、颯爽と去っていくのです。
さて。あなたは待ちますか、去りますか。
(文:木俣冬)
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