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<夏休みのお供・暇つぶしに>今のうちに観ておきたい、コアな映画“5選”
<夏休みのお供・暇つぶしに>今のうちに観ておきたい、コアな映画“5選”
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劇場で観逃していた作品をチェックするのに役立つ動画配信サービス。Amazon Prime VideoやNetflixなどで配信されている映画は多岐にわたり、この夏休みを未鑑賞作品の消化に充てている人も多いのではないだろうか。
最新作から話題作、隠れた名作まで様々な作品が配信されているが、それらがいつでも観れるとは限らない。いつの間にか配信が終わっていて、結局観ることができなかったという経験はよくあること。
そこで今回は、今のうちに観ておくのに越したことはない夏休みの暇つぶしコア映画5選をお届けしよう。
『トリプル9 裏切りのコード』
■予測不能なガチンコミッション
2016年に公開されたジョン・ヒルコート監督作の『トリプル9 裏切りのコード』。ざっと挙げるだけでもケイシー・アフレック、キウェテル・イジョフォー、アンソニー・マッキー、ウディ・ハレルソン、ケイト・ウィンスレット、アーロン・ポール、ノーマン・リーダス、ガル・ガドットら豪華なキャストが揃っており、妥協のないリアルなクライムアクションが展開する。
そもそもこの作品、元特殊部隊員と汚職警察官が手を組んで強盗集団を成しているところから面白い。しかもグループリーダーがイジョフォー、グループに指示を出すマフィアのボスがウィンスレット、そしてハレルソンが珍しくマトモなベテラン刑事という絶妙な配役もポイント。
さらに驚くべきことに、本作は序盤からメインキャラクター(と思われていた人物)が唐突に命を落とす。そのため「誰がいつ退場するか」予測がつかず一気に緊張感が高まり、名作『ヒート』を彷彿とさせるアクションや人間関係がサスペンス性を高めていく。
「トリプル9」が何を意味するのかも含めて、じっくり腰を据えてストーリーに向き合いたい1本だ。
『コロニア』
■実話を基に描く拷問施設の実態
『コロニア』のジャケットだけを見ると、クーデターが起きた街から男女が逃避行を繰り広げる作品だと認識するかもしれない。間違いではないのだがそれは序盤も序盤までで、ジャーナリストのダニエル(ダニエル・ブリュール)と恋人のレナ(エマ・ワトソン)が軍に囚われて以降は状況が一変。表向きは集団居住地である拷問施設の内側が描かれる。
物語はチリの軍事クーデターを基にしており、軍と結託していた「コロニア・ディグニダ」の暗部を次々と浮き彫りにしていく。ミカエル・ニクヴィスト演じる指導者パウル・シェーファーも当然実在の人物であり、シェーファーが高圧的な言動と暴力で信者を支配する姿には不快感を禁じ得ない。
映画として組み込まれたレナとダニエルの脱出劇も、史実ベースのストーリーに違和感を与えないリアルな肌触り。施設側は「裏の顔」を世界に知られるわけにいかず、クライマックスに至ってなお執拗にふたりを追い詰める。
その異様な状況からも、「施設に入ったら二度と出ることはできない」という言葉の重みが最後の最後までのしかかってくるはず。
『サスペリア PART2』
■なんちゃって邦題に頼らなくても面白い!
「ホラー映画の金字塔」との呼び声も高い『サスペリア』。ダリオ・アルジェント監督の代名詞といえる本作に「PART2」と併記されているのを見て、続編を期待して観た人はいったいどれくらいいるだろう。少なくともアルジェント作品にハマった高校生当時の筆者もそのひとりにカウントされる。
『サスペリア』の大ヒットを受け、『サスペリア』より前に製作されているにもかかわらず「PART2」と名付けられた本作。いまなら完全にアウト(いや当時でもダメじゃないか)な宣伝戦略だが、これがじつは初期のアルジェントらしさ満載のミステリ作品かつサスペンス映画で面白い。
『サスペリア』の続編でもなんでもない作品でありながら、本作が腐らずに、むしろアルジェントのフィルモグラフィでも人気の高い作品として語り継がれる所以でもある。
前置きが長くなったが、本作は音楽家マーク(デヴィッド・ヘミングス)の周囲で起きる連続殺人事件が描かれている。その軸とは別に提示されるクリスマスの惨劇も印象的かつ重要な場面になっており、アルジェントお得意のスラッシャーシーンとともにまるで子供の時に聞かされた子守唄のように記憶にこびりつく。
オカルティズムの片鱗も見せつつ、それでもやはり本作に「恐怖」を与えているのは間違いなく人間の闇を曝け出した犯人の存在そのものにある。犯人が迎える末路も含め、アルジェントが放つ狂気を知るには十分な作品だ。
『TUBE チューブ 死の脱出』
■あなたは受け止めきれるか
ある出来事をきっかけに生きる意味をなくし、ふらふらと道を彷徨っていたリサ(ガイア・ワイス)。たまたま通りかかった車にピックアップしてもらうも、運転手の正体は連続殺人犯だった。自身が置かれた状況を理解した次の瞬間、リサは意識を失ってしまう。次に目覚めるとそこは狭い空間の中で「チューブ」の中へと進んでいく。
なんの説明もなく主人公が密室的な空間に放り込まれる作品といえば、『CUBE』を連想する人も多いだろう。しかし本作はリサがひとりでチューブ内を進まなければならず、出口を求めて数々のトラップを潜り抜けなければならない。「なんだ結局は『CUBE』と同じか」と思われそうだが、本作はチューブ内を舞台にしながら予想外すぎる方向へ舵を切り始める。
チューブ内の圧迫感や匂い立ちそうなグロテスクな描写など、閉鎖空間を活かした絵作りはお見事。ただ物語の行き着く先については賛否が分かれるところかもしれない。
どうにも咀嚼しきれない部分もあり、結末をどのように捉えるか、そしてそれをマチュー・テュリ監督の作家性と捉えるかどうかは観客に委ねられている。
『白い闇の女』
■それぞれの思惑が交錯するサスペンス
アクション映画やホラー映画のように観客が純粋に受け身となって楽しむ作品があれば、サスペンス映画のように観客もストーリーの中に入って「謎」について考察を楽しむ作品もある。『白い闇の女』は物語が進んでもなかなか事件の構造が見えず、主人公と同じように不安や焦燥感を抱くかもしれない。
主人公の新聞記者ポーター役をエイドリアン・ブロディが務め、物語の鍵を握る女性キャロラインを『トゥモロー・ウォー』などに出演しているイヴォンヌ・ストラホフスキーが演じた本作。ポーターは家庭を持ちながらもキャロラインの妖艶な魅力に抗えず肉体関係を持ち、彼女の夫が死亡した事件を調査することになる。
キャロラインと関わる“ある事情”を抱えた富豪も物語に絡み、それぞれの思惑が交錯するなか行き着く事件の真相とは。派手さはないものの、ミステリ小説「マンハッタン夜想曲」を原作にした本作は謎解きよりも人間の内側に潜む欲望を映し出した作品といえる。
そのため真相判明時の爽快感を期待すると味気なさを感じるかもしれないが、事件に足を突っ込んだポーターが進む道をあなたも一緒にたどってみてはいかがだろうか。
(文:葦見川和哉)
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