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2023年10月18日

「大奥」第13話:非業の死を遂げる青沼と源内。黒木の叫びが昨今の医療シーンに重なる

「大奥」第13話:非業の死を遂げる青沼と源内。黒木の叫びが昨今の医療シーンに重なる

NHKドラマ10「大奥」のシーズン2が2023年10月3日に放送開始となった。よしながふみの同名漫画を原作に、3代将軍・家光の時代から幕末・大政奉還に至るまで、若い男子のみが感染する奇病により男女の立場が逆転した江戸パラレルワールドを描く本作。シーズン2の前半「医療編」には、鈴木杏、村雨辰剛、松下奈緒、玉置玲央、仲間由紀恵ら豪華キャストが名を連ねる。

本記事では、第13話をCINEMAS+のドラマライターが紐解いていく。

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「大奥」第13話レビュー

「江戸城にいる女たちよ。貴様らは、母になったことがないのか。母ならば、男子を産んだことはないのか。産んだならば、その子を赤面で亡くしたことはないのか。そういう悲しい母と子を一人でも減らすべく懸命に歩んできた者に、この仕打ちか!あまりにも理不尽ではないか!」

雨が降りしきる中、黒木(玉置玲央)が天に向かって上げた叫びに胸が締め付けられた。

予告からも辛い展開が予想されたNHKドラマ10「大奥」第13話。赤面疱瘡の撲滅に尽力したにもかかわらず、理不尽な仕打ちに遭う田沼意次(松下奈緒)・青沼(村雨辰剛)・平賀源内(鈴木杏)の3人に現代の医療従事者たちの姿を重ねた視聴者も多かったのではないだろうか。

源内が赤面感染から数日で回復する軽症患者を発見。その患者の疱瘡から取り出した膿や痂皮を未感染の男子の腕に植え付け、免疫をつけさせる治療法を、青沼たちは「人痘接種」と名付けて普及に努める。しかし、この治療法には100人に3人の確率で死亡者が出ることを正直に伝えたため、なかなか接種希望者が現れない。

そんな中、全てを承知の上で証人となったのがお針子の伊兵衛(岡本圭人)だ。彼は反発する人々の前で自ら人痘接種を行い、見事に回復を遂げて見せた。そのおかげで次々と希望者が現れ、青沼たちは順調に実績を増やしていく。

だが、不運にも人痘接種を受けた松平定信(安達祐実)の甥が100分の3の一人になってしまった。その責任を負う形で意次は老中職を免ぜられる。定信の甥を死に至らしめたこともそうだが、いわゆる天明の大飢饉で庶民の幕政に対する不満が爆発。さらに、10代将軍・家治(高田夏帆)がお匙にかなり前から少しずつ毒を飲まされており、ヒ素中毒になっていることが分かった。行き場のない人々の怒りは意次のもとに向かう。

しかし、お匙は一橋治済(仲間由紀恵)と通じており、彼女が毒を盛るように命じたのは明らか。幕政への批判が意次に向かうよう、治済が密偵を使い、市中に根拠のない噂を広めたとも考えられる。また、源内を強姦するよう命じたと見られる謎の女(佐藤江梨子)も治済と繋がっていた。治済は自身の息子である竹千代、のちの家斉(中村蒼)の人痘接種を済ませた上で自分に都合の悪い存在を排除したのである。しかも、自らの手を汚すことなく。

結果、青沼は死罪にかかり、源内は梅毒をうつされて死んだ。人痘接種に関わった意次と他の男たちも大奥を追われることに。そして、冒頭の黒木の叫びに繋がる。死の間際でも青沼と源内は自分たちがいなくなった後の世を見据えていた。一人でも多くの男子が人痘接種を受け、死の恐怖から解放される未来を願いながらこの世を旅立った。

「大奥」はフィクションだ。けれど、現実世界を生きる私たちも彼らのようにワクチンの開発に努め、また自ら接種第一号者となってくれた人たちのおかげで安心して接種を受けられ、インフルエンザや新型コロナウイルスといった様々な死の危険性から遠ざけられている。一方で、恩を仇で返すような根拠のないデマや陰謀論が蔓延しているのも事実。もちろんワクチンの接種には死亡事例があり、あらゆる副反応も現れることもあるので、接種するしないは個人の自由だ。だが、その裏には多くの人の努力があることを忘れてはいけないと黒木の叫びは思わせてくれた。

(文:苫とり子)

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