「ブギウギ」辞めないで、大和さん<第17回>
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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。
「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。小さい頃から歌って踊るのが大好き、後に戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第17回を紐解いていく。
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今は…それどころじゃないので
ストライキ中、お寺でラインダンスの練習している劇団員たちはとても楽しそう。自然のなかで、解放的になって、スズ子(趣里)は、秋山(伊原六花)の「あんな(楽しそうな)顔はじめてみた」と驚きます。一方、梅丸歌劇団のレッスン場で、ひとりでラインダンスのレッスンを続けている橘アオイ(翼和希)。
ストライキはやらないけれど、ひとりで公演ができないから、さぞもどかしいでありましょう。
がたいのいい橘だけど、ひとりではレッスン場は広すぎます。そしてラインダンスはひとりではちょっと寂しい。ラインダンスはひとりでは成立しないのです。
すみっこに座って礼子や仲間と撮った写真を見つめていると、股野(森永悠希)がやって来て、決意を語ります。股野がずんずん前身してくる距離が、橘がすみっこにいるから長くとれて効果的です。
股野はそれから、山寺に礼子に会いに行きます。途中でへばってしまうことから、劇団員たちがいかに丈夫かが見て取れました。
歌劇団を辞めると報告した股野は、もうひとつ重要な告白を。
股野「僕は大和さんのことが好きです」
礼子「今は…それどころじゃないので」
と、唐突……。
ドラマ上では、ちらほら、彼の想いが描かれてきたとはいえ、ストライキ中の礼子に言うのは、場違い。でも、辞めて、もう会えなくなるとなれば、言うしかないということでしょうか。
礼子は優しいので、どやしつけたり、ばかにしたりはせず、あくまで穏やかに、やんわり、保留にします。
唐突といえば、橘も。
自分が辞めることですべてを丸く収まらせてほしいと頼むのです。スターの礼子を戻すために。
いや、あなたがいなくなったら劇団の人気は落ちますよー。自分の価値をわかってないですよー。
橘さんが辞めても何もいいことはないのをわかってなくて、辞めますと言ってしまう橘のまっすぐさも好ましい。
礼子を梅丸に採用し、授業料も無料と便宜をはかってくれた大熊社長(升毅)が、ついに苦渋の決断をします。
その決意を伝えるために、林(橋本じゅん)と橘が山寺にやって来ました。
林はかごいっぱいの蛇の生き血の瓶をもってきて、皆に配ります。皆、あとで飲みますと遠慮気味。
ほんとにこれ、生き血なのでしょうか。そして、こんなに大量に配れるほど安価なのでしょうか。
というよりも、山寺にこもった少女たちに、すてきなスイーツなどを差し入れする気のない林のワイルドさ。でも嫌いになれない、人の良さが彼にはあります。
「ブギウギ」は、誰にもいい面がある、みたいに、わかりやすくいい面を紙芝居のように見せるのではなく、へんなこと言ったりやったりしているのに、嫌いになれない、なんだかほっこりする、そういう一枚の絵のなかに滲んでくる描き方をしていて、すごくいいなあ。
(文:木俣冬)
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