「ブギウギ」悲しみのあとの、すばらしきラインダンス<第18回>
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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。
「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。小さい頃から歌って踊るのが大好き、後に戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる。
ライター・木俣冬が送る「続・朝ドライフ」。今回は、第18回を紐解いていく。
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アオイまで
ストライキの成果があり、大熊社長(升毅)は要求を飲むことにしました。でも、それには大きな代償が……。
条件は、大和礼子(蒼井優)が辞めること。
社長は礼子をとても大事にしていたので、苦渋の選択です。肉を切って骨を断つ的な?
事情を知らず、ストライキに勝ったと大喜びのスズ子(趣里)たちでしたが、うっきうきで、家に戻り、稽古場に戻ったら、礼子が辞めることを知ります。そのうえーー
橘アオイ(翼和希)までが辞めることに。
責任をとって辞める礼子を、ひとりで辞めさせるわけにはいかなというアオイ。それをスズ子は礼子がいない梅丸はアオイにとって価値がないものと解釈します。きっとそれもあるでしょう。
スズ子は号泣。「そんなやったらストライキなんかせんほうがよかったわ」「こんなとこ梅丸なんてなくなってまえばええわ」とまで絶叫し、アオイに頬を叩かれます。
この場面の趣里さんの演技が切実で、胸を打ちました。叫んでいるけど、ちゃんと腹から声を出していて、感情先行ではなく、言葉をしっかり届けています。それでいて、どうしようもない深く悲しみの感情が伝わってくる。言葉に感情が乗っているのです。これぞ演技です。さすが、趣里さん、舞台で鍛えているだけあります。
礼子が素直に「辞めたくないなあ」と言うのもいい。こういうとき、たいてい、本音を言わないままになるものですが、思いもよらず自分だけ辞めさせられることになったときの礼子の動揺や後ろ髪惹かれる気持ちなどが出ることがよかった。誰しもそんなに完璧に潔くなれるものではないのです。
スズ子は、礼子とアオイのショーを見て、梅丸にあこがれて、ふたりに育まれてここまで来たのです。
そりゃあ哀しさいっぱいです。
でも、礼子が劇団員を守るために体を張ったのだから、梅丸を守っていかないといけないとアオイに叱咤されて、思い直すスズ子。
スズ子は浮かれて帰宅した日とは反対に、がくりと帰宅し、家の風呂につかり、「四季の宴」を歌います。「長くて短い一年」「季節はめぐる」等の歌詞に、楽しかった日々が蘇り、切なく聞こえます。
そして、桜庭和希(片山友希)や、新人3人が戻ってきて、みんなで心機一転がんばる。
礼子の置き土産のラインダンスを披露するスズ子たち。
まさに「強く、逞しく、泥臭く、艶やかに」のダンス。
一糸乱れぬ、美脚の動きに、元気をもらいました。
スズ子が懸命に踊ったあとの笑顔が、悲しみに耐えて笑っている感じだからこその感動がありました。
蒼井優さんと翼和希さんも一緒に踊ってほしかった。
スターの礼子とアオイがいなくなったら、客激減しそうだけれど、そこはラインダンスで引き止めたちいうことでしょう。礼子は若い劇団員たちを守ったうえに、みんなが輝き、梅丸が存続する作品も残したのです。
余談ですが、大熊社長は熊五郎という名前なんですね。熊2段重ね。
(文:木俣冬)
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