インタビュー

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2023年11月30日

上野樹里×林遣都インタビュー|予測不能なラストと、謎めいた2人の関係性に注目

上野樹里×林遣都インタビュー|予測不能なラストと、謎めいた2人の関係性に注目

俳優の上野樹里と林遣都が初共演した映画『隣人X -疑惑の彼女-』が12月1日(金)に全国で公開される。

本作は、第14回小説現代長編新人賞を受賞したパリュスあや子の『隣人X』(講談社文庫)を、熊澤尚人監督で実写映画化。現代社会が抱える問題と、人間の姿をして日常に紛れ込んだ“惑星難民X”の存在をうまく掛け合わせた異色のミステリーロマンスだ。

X疑惑のかかった柏木良子を演じるのは上野樹里、その良子に近づく週刊誌記者の笹憲太郎を演じたのは林遣都。

今回CINEMAS+では実力派俳優のお2人に本作を通じて感じたことや撮影中の秘話をたっぷりお届けする。

 

ハラハラとした描写の中に優しさも感じられる作品

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——まずは最初に脚本を読んだときの印象と、演じてみたときの感想をそれぞれお聞かせください。


上野樹里(以下、上野):今回の作品は原作がある作品だったので、原作と作っていく脚本の間でどちらかに引っ張られるのではなく、なるべくフレキシブルな状態でいようと考えていました。最初の脚本の良子はミステリアスな女性のイメージが強いかと思うのですが、熊澤監督と話し合っていく中で、良子はもう少し柔和で、日本人の奥ゆかしさと、少し不器用な感じもあるといいなと思いました。

林遣都(以下、林):脚本を読んで、今の時代にぴったりなテーマの作品だなと感じました。監督の世の中に対しての願いや、訴えたいことも理解できましたし、僕自身もこの役を通して一人でも多くの方の心に響くといいなと思いました。
作品の中で監督の実体験なのかなと思うような、とてもささやかで幸せを感じる描写があるのですが、そういうことにいかに目を向けられるのかが、とても大切なことだと気づかされた部分もあります。

——「愛した人の本当の姿を、あなたは知っていますか?」というポスターのキャッチコピーにドキリとしましたが、上野さん、林さんはどんな印象を持たれましたか?

上野:撮影中は「疑惑の彼女」というサブタイトルも「愛した人の本当の姿を、あなたは知っていますか?」という言葉も決まっていなかったので、私もポスターが出来上がってから知りました。キャッチコピーやサブタイトルから、良子がX疑惑をかけられた女性だという事が分かりやすくなったと思います。サブタイトル「疑惑の彼女」というワード、なんだか恥ずかしいなと思いましたけど、今は慣れましたね(笑)。ポスターのビジュアルも、ミステリアスな雰囲気ありますしね。

林:自分が観客の一人としてこのポスターを観たら問題提起をされている部分に興味をそそられ面白そう、ちょっと観てみたいなと思うと思いますね。

久しぶりの映画の現場。最初は少し戸惑いも(上野)

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——本作で上野さん、林さんそれぞれ熊澤尚人監督とは再タックでしたが、いかがでしたか?


上野:お話しをいただいたときは率直に嬉しかったです。熊澤監督とは、映画『虹の女神 Rainbow Song』(2006)以来なので17年ぶりです。今回は脚本から編集まですべて熊澤さんが関わるということで、「生粋の熊澤組」に関われることが楽しみでした。

林:僕は『ダイブ!!』(2008)以来なので、15年ぶりの熊澤組でしたが、「監督、白髪が増えたな…」と感じました(笑)。
でも、愛のある厳しさと、役者に対しての “愛情深さ”は当時から変わらず、今回もしっかり向き合ってお芝居を見ていただきました。

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——お2人は初共演でしたが、お互いの印象を聞かせてください。

林:樹里さんとは本読みとリハーサルの日に初めてお会いしました。そのときはまだ全体の方向性が定まっていない状態ではありましたが、最初から心でぶつかってくれる姿勢を見せてくださったので、それに対して僕も食らいついていきたいと思いました。
とにかく樹里さんのお芝居に対しての責任感や、まっすぐに向き合っている姿勢に自分もそうありたいなと思いました。

上野:久しぶりの映画のリハで熊澤監督がオリジナルで追加したシーンがあって。林遣都くんと2人のシーンなんですが、30回くらいやって2人の間に流れるリアリズムを体感して、体に落とし込んでいく時間を大切に出来たかな。その他に遣都くんはパントマイム的な見せ方が必要なシーンがあって。リハだからまだセットもない中体全体を使って見事に表現されていたので、映画の仕上がりが楽しみになりました。

確証のない情報に振り回されず、信じるものがあればいい(林)

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——もし「X」のような存在が身近にいるとしたら、どんなことを感じると思いますか?


上野:人間は「情報」を頼りに生きている部分もあると思うので、情報がない「X」のような存在に対しては怖いと思うかもしれません。でも、「情報がない」イコール「怖い」と思う時点で先入観を持ちすぎのような気もします。
「X」に限らず、目の前にいる人の存在は自分の鏡だと思うんです。自分がどういうフィルターをかけているかによって、相手の言葉や行動の感じ方は変わってくると思うので、相手の言動を見て、自分を知ることができるように思います。

林:僕はSNSもやってませんし、ネットの情報はあまり見ないようにしているタイプなので「X」のような存在に気づくかどうか……。それよりもまず自分がどんなことが好きで、何を大事にしているかをしっかり持っていたらそれでいいのではないかなと思います。
コロナ禍もあらゆる情報が溢れていましたが、確証のない情報に振り回されず、どんなときも自分自身の信じるものがあればいいんじゃないかなと思います。

——たしかに確証のない情報が溢れていて何が正解かわからないことがありますし、それを見ることで身心共にダメージを受けることもあるように思います。

林:体調面で言うと、そこから自律神経も乱れるような気がするので僕はなるべく距離を置いて生活しています。そのほうが身心共に調子はいいように思います。

上野:舞台中は携帯を触ることができないので本当に調子がいいです。だからたまには情報と距離を置くことも大事だと思います。

——本作は現代の問題点も浮き彫りにされた作品でもあったように思いますが、それぞれの役を演じる上で気を付けたことや、感じたことはありますか?

上野:良子は外国人労働者のレンが日本語が拙くても言語の壁を超えて寄り添い、小さな世界で2人はお互いを支え合っているところが素敵だと感じました。
また、良子は「アナログな生き方の中で見えてくるものや、感じられる幸せ、豊かさ」が伝えられるといいなと思いながら演じました。

林:完成した作品を観て「こんなことはあってはならない」と思うシーンがところどころにありました。多くの人がそれぞれの事情の中で一生懸命生きていると思います。そんな中で、思いやりの欠片もないような言葉を受けた人は、想像以上のダメージを受けると思います。ちょっとしたことでこの世界に居場所がなくなってしまうと感じることも起こりうるので、改めて人との接し方に気を付けないといけないな、ということもこの映画で感じました。

——最近、実生活の中でそう感じることはありましたか?

林:都内を運転しているときに車のクラクションを鳴らされ、「ドキッ」っとしたことがあるのですが、そのときにクラクションにも感情があるように感じました。本来なら「注意」を促すためのものだと思うのですが、必要以上に鳴らすことで「どけ!」と言って相手を傷つけているようでもあり、鳴らされたほうは動揺してしまうと思うんです。
ちょっとした行動で想像以上に相手の心を乱してしまうことがあるので、何気ない生活の中でも人との接し方はとくに気を付けないといけないなと感じています。

少しずつ現場で培われていった、謎めいた良子と笹の関係性

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——良子と笹が魅かれ、心が動いていく様も非常に丁寧に描かれていて、共感できました。演じるにあたり、お2人でどんなことを話し合われたのでしょうか?


林:作品や共演する方によってですが、今回は……話し合ってはいないですよね。

上野:役者同士で話し合うって切迫詰まってるときくらいしかないかも。

林:樹里さんは一つひとつのシーンを大事にされていて、監督やいろんな方と話している姿を見ていたので、話し合って演じるというよりもその姿で理解できていたので自然と演じることができました。

上野:映像は鮮度も大事だと思うので、現場に入ってそのときの感情で動くことに注力していました。良子の目線、笹の目線を私たちがそれぞれで演じ、監督がそれをどう切り取るかだとも思うので、私たちが2人で話し合うというよりも、現場で徐々に作られていったという感じですね。

——上野さんが演じた良子と、林さんが演じた笹は役的にはかなり対局的な役だったように思います。

上野:良子という女性は、大人しく、世の中と自身の距離感をとって心地よく生きている女性なのに対して、笹は職業柄、誰かを追ったり、心情の起伏が激しかったりとこの2人は対局でしたね。また、遣都くんが演じるからこそ特に力強く、良子との対比が生まれ、いいバランスのコンビネーションだったのではないかと思います。

(ヘアメイク=清家いずみ<上野>、竹井 温(&'s management)<林>/スタイリスト=古田千晶<上野>、菊池陽之介<林>/撮影=Marco Perboni/取材・文=駒子)

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