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映画ビジネスコラム

REGULAR

2024年02月11日

2023年映画産業分析:今問われるのは、「実写ならではの魅力」

2023年映画産業分析:今問われるのは、「実写ならではの魅力」


1月30日(火)、2023年の日本映画産業統計が日本映画製作者連盟(映連)から発表されました。毎年恒例である一年の映画産業の全体傾向を示す重要な指標です。

2023年の興行総収入は2214億円と前年比103.9%を記録。現在の形で統計を取り始めてから歴代5番目の成績であり、コロナの影響はほぼ払拭できたといえるでしょう。

ここ数年続いている邦画アニメが市場を牽引する状況は相変わらずで、コロナ禍以降なかなか回復しない洋画の売上は、今年はハリウッドのストライキの影響もあって引き続き低迷しています。

今年度の統計からどんなことが読み取れるか考えてみたいと思います。

【関連コラム】2022年映画産業分析:明暗分かれた邦画アニメと洋画アニメ。東宝一強時代は終わりを告げるか?

アニメのトップ独占に思う、「実写ならではの魅力」とは

(C)I.T.PLANNING,INC. (C)2022 SLAM DUNK Film Partners

アニメ映画のメガヒットが興行を牽引するのが近年の傾向ですが、今年度に100億円を超えた作品は、3本。その全てがアニメーション作品となった初めての年となりました。

年間興行収入トップとなったのは、前年度12月公開の『THE FIRST SLAM DUNK』の158.7億円で、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』と『名探偵コナン 黒鉄の魚影』がそれに続きます。

4番目の作品も『君たちはどう生きるか』で上位4本をアニメーション作品が独占しています。実写作品のトップは邦画で『キングダム 運命の炎』の56億円、洋画ではトム・クルーズ主演の『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』の54.3億円となり、実写は50億円台に壁があるような状況となっています。

©2023青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

アニメという日本独自の強みが発揮できていること自体は好ましいことですが、興行全体がアニメへの依存を強めすぎるのも問題があると筆者は考えています。

アニメの制作には時間も予算もかかる上に、当たれば大きくても、外れも大きい状態です。その上、テレビシリーズや配信の制作本数も増加しており、絶対的にスタッフの手が足りない状況が続いているため、アニメ映画の本数を今すぐ増やすことはできません。

ここから先、映画産業の成長には実写映画の充実は絶対に必要で、邦画・洋画ともに、どうすれば実写映画にも観客が増えるかの知恵を絞る必要があるでしょう。

©野田サトル/集英社 ©2024映画「ゴールデンカムイ」製作委員会

個人的には、今問われているのは「実写ならではの魅力」だと思います。アニメでは味わえない、実写だからこそ可能な表現があれば人は映画館に向かうと思うのです。

例えば、本物の北海道のロケーションが作品の魅力を底上げしている『ゴールデンカムイ』は、まさに実写だからこそできる表現に溢れていました。一例を挙げると、杉元と白石が極寒の森に流れる川に落ちるシーンがありましたが、本当に寒そうでしたよね。あれだけ寒そうな表現は、実写ならではだと思います。

【関連コラム】<大ヒット公開中>『ゴールデンカムイ』は大ヒットシリーズ化なるか?

東映が2年連続で1位を奪取、離される松竹



年間興行トップを取った作品を配給したのは、業界最大手の東宝ではなく2年連続で東映という結果となりました。どちらも東映アニメーション制作の人気マンガを原作とした作品ですが、ここ10年以上、業界で一強状態になっていた東宝に待ったをかける存在として東映が躍り出たといえるでしょうか。

ベスト10全体をみると、東宝作品が8本(共同配給含む)で、圧倒的なシェアを持っていますが、少なくとも2連連続1位を東映が奪ったことは、業界の勢力図を動かす事態といえるでしょう。東映は、その他10位にランクインした『劇場版アイドリッシュセブン LIVE 4bit BEYOND THE PERiOD』も共同配給で手掛けており、ライブアニメーション映画として特筆すべき成績を残しています。

(C)2022「月の満ち欠け」製作委員会

一方、邦画大手3社のうち松竹の元気がありません。松竹の最高成績は25位『月の満ち欠け』の13億円にとどまっており、東宝・東映との差が拡大しているように見えます。邦画大手の地位をキープできるのか、正念場を迎えているといえそうです。

幸い、年末に公開された『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』と1月公開の『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が相次いでヒットとなっているのは好材料で、2024年は松竹にも反転攻勢の兆しができているといえそうです。

公開本数は歴代2位の記録

2023年に公開本数は1232本。邦画が676本、洋画が556本となっており、これは2019年の1278本に次ぐ数字で、公開本数においてもコロナの影響は感じられなくなりました。

しかし、公開本数歴代1位の2019年は、年間興行収入でも歴代トップです。2023年は、公開本数は2位でも興行成績は歴代5位なので、一本あたりの売上は落ちているともいえます。

これは一部のメガヒット作が市場を牽引し、それ以外の作品の売上が落ちているということかもしれません。売れる映画と売れない映画の乖離が進行していると考えられます。

1200本の映画があるなら、素晴らしい作品もきっと数多くあるはずで、その多くが埋もれてしまっている状況と考えられます。そういう作品を少しでも少なくし、多彩な作品が良い成績を挙げられるように、メディアも興行界も工夫が求められています。

また洋画については、2023年は10億円を超えた作品が2022年よりも1本少ない15本となっています。コロナ前の2019年には25本あったことを考えるとかなり厳しい数字といえるでしょう。

ハリウッドのストライキが影響していると考えられますが、洋画の存在感低下は長期的な傾向となりつつあるのが気になります。今後はハリウッド映画だけでなく、様々な国の話題作などを見つけ、上映していくような工夫も必要かもしれません。

邦画の海外輸出は過去最高

©2023 TOHO CO., LTD.

また映画以外のコンテンツ上映ODSが、初めて300億円を突破したことも大きな動きといえるでしょう。他にも、2023年は『ゴジラ-1.0』や『すずめの戸締まり』『THE FIRST SLAM DUNK』などが海外でヒットしたことが話題となりましたが、映画の輸出も過去最高の4億8300万ドルを記録しているとのこと。

実は、日本映画の輸出実績は11年連続で増加していて、こちらの成績も今後の映画産業にとって重要なものとなるでしょう。個人的には、輸出額を国内興行収入と同程度にまで成長させることができれば、日本映画の多様性は増すはずです。

国内だけでリクープをせずとも海外の売上を計算に入れることができれば、これまでなかなか利益の出しにくかった企画も成立するようになるかもしれません。

2024年市場を牽引する作品は?

©2024 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

2024年は、まずメガヒットを期待されるのは『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』でしょう。2023年に100億円の壁を破った勢いを維持することが期待されます。そして、8月公開が発表された『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト』も人気シリーズ待望の最新作とあって、どこまで数字を伸ばすかが期待されます。少年ジャンプの看板作品の一つであるため、このタイトルにもメガヒットが欲しいところです。



邦画実写映画では、やはり『キングダム 大将軍の帰還』がシリーズの記録更新をできるかが気になるところ。洋画はクリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』には大きな期待がかかります。アカデミー賞でも有力候補となっており、2023年に公開されなかったことが逆に話題となっている面もあるので、上手くいけば想定以上のヒットとなるかもしれません。


2024年も多彩な作品が劇場を彩る予定です。メディアに携わる身である筆者としてももっと映画館を盛り上げていきたいなと思っています。

(文:杉本穂高)

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