2023年最恐ホラー『ミンナのウタ』の魅力を改めて伝えたい<GENERATIONSが本人役で参戦>
生前から伽椰子レベル! 最狂の中学生・さな誕生
本作は誰がカセットテープを吹き込んだのか過去をたどっていく縦のラインがあり、雇われ探偵の権田とGENERATIONSマネージャー・凛は当時中学生だったひとりの少女・高谷さなにたどり着く。
調査によって明らかになる幽霊の正体=中学生のさなは、明らかに歪な性格の持ち主。数々の異常行動は破綻した人格に起因しており、幽霊どころか生前からただそこに存在しているだけで恐ろしい。
さなのモデルではないかと疑いたくなるような現実の事件・人物も思い浮かぶが、いずれにしてもさなというキャラクターは伽椰子に匹敵する可能性を秘めている。
怖いのは“さな”だけじゃない!
さなの存在だけでも『呪怨』級の怖さだが、同時にさながかつて暮らしていた「家」そのものも恐怖演出の要。どうやったらこんなロケーションを見つけられるのだと製作陣に呪詛を吐きたくなるほど旧高谷家の外観は薄ら寒く、その内側も陰鬱としていて黴臭さまで伝わってくる。
このような舞台環境は明らかに『呪怨』の舞台・佐伯家に通じており、「高谷家」「さな」「死者の呪い」という要素からも清水監督が原点回帰したことが窺える(さなの弟?高谷俊雄くんの存在も『呪怨』との関連が気になるところ)。
ちなみに本作は「さな」「家」に加えてもうひとつ、えげつない最大瞬間風速を記録する恐怖描写があるのでご注意を。(演じた御本人は劇場鑑賞時に観客の反応を楽しんでいたようだが)
GENERATIONSが本人役で出演する意味
そもそも本作は、なぜGENERATIONSメンバーが本人役で出演する必要があったのか。もちろん話題性があり、訴求力としては申し分ない。ただそれ以上の意味が、ラストシーンにあったのではないだろうか。
本作には数原龍友も加わったGENERATIONSのライブシーンが挿入されている。映画用のニセライブではなく実際のステージを撮影した素材が使われているため、観客は改めてこの作品に登場するGENERATIONSが「本物」のGENERATIONSだと認識する。当然ステージを見守る観客も「本物」であり、本作において最も現実と創作の境界線が曖昧になる場面だ。
「呪い」が蔓延る『ミンナのウタ』の世界が、実は現実と創作の狭間という危ういライン上にあるとしたら。さなの呪いは、容易く「現実の世界」に流れ込む可能性があるのではないか。実際に本作を観終えたころには、さなが生み出した「ミンナノウタ」のメロディが頭から離れなくなっているはず。
ホラー映画とは結局は作り物であり、恐怖に震える瞬間を楽しみにしている節もある。その現実の世界を、言いようのない恐怖がじわじわ浸食していく瞬間は必見。
ホラー映画を新たなステージへ押し上げた『ミンナのウタ』にぜひ注目してほしい。
(文:葦見川和哉)
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©2023「ミンナのウタ」製作委員会