「ブギウギ」愛子の身代金3万円、1955年当時の価値は<第114回>
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2023年10月2日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「ブギウギ」。
「東京ブギウギ」や「買物ブギー」で知られる昭和の大スター歌手・笠置シヅ子をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。歌って踊るのが大好きで、戦後の日本を照らす“ブギの女王”となっていく主人公・福来スズ子を趣里が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第114回を紐解いていく。
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犯人はオダジ……
音楽ドラマから刑事ドラマへ?
番組の公式X(旧Twitter)まで「違うドラマがはじまったかと思った」と呟いていました
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謎の人物(水澤紳吾)が花田家に電話をかけてきて「誘拐されたくなかったら金を出せ」と脅迫します。電話に最初に出た大野(木野花)は「誘拐するって」と大騒ぎ。
「手紙を見たか」というので、スズ子(趣里)が玄関に探しに行くと、愛子(このか)がポイ捨てしたものが落ちていました。
そこには「イノチガオシカッタラサンマンエンヨコセ」と書いてあります。
1955年当時の3万円はいくらでしょうか。
週刊朝日編「戦後値段史年表」によると、1952年、カステラ1本400円、55年、とんかつ150円、ランドセル2500円。国家公務員の賞与、19575円とあります。
3万円は国家公務員の賞与の2回分に足りないくらいの額で、そこそこ高いけれど、バカ高い感じでもないようです。ランドセルが10人分、カステラが75本買えます。
犯人の慎ましさを感じる金額です。
誘拐したから金を払えではなく、これは犯行予告です。こんなのあり?と思いますが、江戸川乱歩の推理ものなどでは犯行予告はよくあることです。「ルパン三世」でもありますね。
怪盗が「今夜盗みに伺います」などと予告して、されたほうは厳重に警備しますが、犯人は包囲網をかいくぐり華麗に盗んでしまうのです。
誘拐といえば、乱歩の「黒蜥蜴」。お金持ちのお嬢様を怪盗・黒蜥蜴が予告し、名探偵・明智小五郎が警護につきますが、みごとに誘拐されてしまいます。
「ブギウギ」の電話の主は、スズ子に訊ねられて自分の名前を言ってしまいそうになるほどのうっかりさんに見えますが、実は黒蜥蜴のような、ルパン三世のような大怪盗なのでしょうか(ないない)。
名前は「オダジ」まで言ってしまい、オダジマでは?と予測されてしまいます。
筆者はオダジと聞いて「オダジョー」かと思ってしまいました。
第114回の見せ場は、高橋刑事役の内藤剛志さん。他局の刑事ドラマで大活躍の内藤さんですから、出てきただけで、刑事らしさが滲みます。
内藤さんが出てくれば、犯人を見事、捕まえてくれそうな安心感もあります。
といっても、まだ愛子は誘拐されていません。
当の本人は、学校帰り、なんだか家に帰りたくなくてのろのろしていると、空き地で汚れた服を着た少年・一(井上一輝)に出会います。
誘拐エピソードは、犯人がいかにもドジっぽいので、深刻な展開にはならない気がして気楽に見られると思いきや、愛子と一との関係はなんだかしんみり。
一は、愛子の誕生パーティーにも来ていたそうですが、愛子が気づいていませんでした。それだけ空疎なパーティーだったということでしょう。
愛子とまったく違う環境にある一。一冊の漫画をボロボロになるまで何度も読んでいると言います。
貧富の差が激しく、有名人の家に生まれたことを、一はうらやましがります。愛子にはなんの価値も見いだせない家なのに。
庶民派刑事も「さすがにいいお宅ですな」「芸能人のかたははじめてでして」とスズ子を自分たちとは違うふうに見ていました。
スズ子はあまり自覚していませんが、いつの間にか、彼女は世間とずいぶん、違うところに来ていたようです。
スズ子は自分の立ち位置も、愛子の気持ちもわかっていません。
誘拐を警戒し、スズ子は愛子に、誘拐の話は隠し、明日は学校を休めと言います。
でも愛子は一とまた会う約束をしていました。せっかく心をゆるせそうな同世代の人物に出会えたのに……。しかも一は謎の男と関係があって……。
悲しいすれ違いの物語になるのでしょうか。
(文:木俣冬)
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