続・朝ドライフ

SPECIAL

2024年04月02日

「虎に翼」はてが止まらない、婚姻状態にある女性は無能力者か<第2回>

「虎に翼」はてが止まらない、婚姻状態にある女性は無能力者か<第2回>


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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。

日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となる“とらこ”こと猪爪寅子を伊藤沙莉が演じる。

ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第2回を紐解いていく。

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スンとした顔

結婚することが女性の最大の幸せなのか、わからない。
どうせ結婚するならせめて対等に話せる相手がいい。3度目のお見合い相手・横山太一郎(藤森慎吾)は米国暮らしも経験し、物わかりがよさそうと思った寅子(伊藤沙莉)は勇んで、「がむしゃらに一番を競いあう無邪気な闘争心も、ときに人生には必要ではないかと思うんです」と意見を滔々と語りはじめると、太一郎の機嫌が悪くなってしまいました。

彼のはいわゆる理解のある先進的な人間であるしぐさだったのです。実際は能力のある自分に自信があり、自分の話を聞いてくれればいいだけ。
自分の知らないことを知ってる寅子は太一郎にとっておもしろくない存在でした。

結果は当然お断り。

兄・直道(上川周作)はわざと断られるように振る舞ったのだと言いますが、寅子は今回はそんなつもりはなかったようで……。まあ、もし、直道が鋭いとしたら、寅子は相当策士です。前2回は、だめな子を装っていましたが、今回は、自分らしく振る舞った末のこと。
それでだめなら仕方ない。まあ、ちょっと、賢さをひけらかし過ぎていた気もしますので、やっぱりわざとだったのか? いや、夢中になると空気が読めなくなるタイプなのかもしれません。

「女は男みたいに好き勝手にはいかないからね。受け入れちゃいなさい」と言うのは、寅子の友人で、直道の婚約者・花江(森田望智)の家の女中・稲(田中真弓)
令和でこそ、女性は立ち向かっていますが、この時代は、諦めてしまっていたようです。

諦めて、爪を隠して生きてきた。寅子は、母・はる(石田ゆり子)や花江の母が、両家の結婚の仲人を招いた晩餐会の段取りをしたのは彼女たちにもかかわらず、男性たちに花をもたせ、出しゃばらず、ニコニコ、お酌している姿を「スンッ」と表現し、「私、あの顔苦手だわ〜」と批判します。

そんなとき、たまたま、下宿生の優三(仲野太賀)の通う夜学にお弁当を届けに行った寅子は、「婚姻状態にある女性は無能力者」という学生の言葉を耳にして、「は?」と首を傾げます。これはこの学生の個人的な見解ではなく、とある法律の根拠を回答しているのであります。

寅子のもやもやが止まらなくなっているところ、講義をしていた等一郎(松山ケンイチ)や法学者・穂高重親(小林薫)にはさまれてしまいます。
このふたりは、これから寅子にとって重要な存在になるようです。

清流のごとくいい流れで物語が進んでいきます。吉田恵里香さんは豊富な語彙力となめらかに紡ぐ才を感じます。

「女性は無能力者」というセリフは、ドラマ視聴者を挑発しているようにも感じます。これを聞いてどう思うか。志向を促しているのでしょう。

はて?と考える寅子の場面に、はてはてはてはて……という声入りの劇伴が流れます。子供の教育番組のBGMのようです。
たぶん、今回の朝ドラは、法律について、人間の平等について、考える物語になりそうです。

ただ、女性が無能力者であるわけもなく、人間は平等であるのも当然なので、良し悪し、正しい間違っていると賛否両論、激論を戦わすという類のドラマではなく、当たり前のことが当たり前にならないとき、どうしたらいいのかという前向きな話し合いが生まれるといいなあ。ディスカッションやディベートではなくブレスト的な鑑賞。これができたら朝ドラの進化ですよ。

小林薫さんが出てきて、ナレーションが尾野真千子さんで、「カーネーション」(10年度後期)を思い出すキャスティングです。
尾野真千子さんのナレーションは、寅子の心の声の代弁のようで、耳にやさしい。


(文:木俣冬)

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