ⓒ原泰久/集英社 ⓒ2024映画「キングダム」製作委員会

【興収分析】シリーズ初の“100億円”突破なるか?——『キングダム 大将軍の帰還』公開中!

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長い邦画の歴史のなかでも、なかなか見られないスケール感を維持し続けている映画『キングダム』シリーズ。

その第4弾にあたる『キングダム 大将軍の帰還』が公開されています。

破格の興行収入をキープ!

(C)原泰久/集英社 (C)2019映画「キングダム」製作委員会

映画『キングダム』はシリーズ化されていることからも分かる通り、大ヒットが続いています。

2019年の1作目が興行収入57.3億円という数字を叩き出し、シリーズ化が決定。以降『キングダム2 遥かなる大地』が興行収入51.6億円、3作目『キングダム 運命の炎』が興行収入56億円という数字を叩き出しました。

映画の1作目から3作連続で興行収入50億円以上を記録しているのは、あの『踊る大捜査線』シリーズしかありません。『海猿』シリーズも2作目からは大ヒット作となりましたが、1作目の興行収入は17.4億円にとどまっており、シリーズスタートからの記録では『踊る大捜査線』がいかにすごいシリーズだったかがわかりますね。

その『踊る大捜査線』も2作目をピークに数字を落としますが、それでも第4作目まで興行収入50億円をキープしました。よくテレビ局映画はヒットするとか、ドラマの映画はヒットするとか言われますが、それでもやはりこのレベルとなるとそうそうある話ではないと数字が物語っています。



そして映画『キングダム』シリーズの第4弾『キングダム 大将軍の帰還』がこれまで通りの興行収入をあげるとなると、ついに総興行収入で200億円の大台を突破することになります。

これが実現した場合、童・信と伝説の大将軍・王騎の壮大な物語に大きな華が添えられることになりますね。

映画『キングダム』はなぜヒットし続けたか?


映画『キングダム』の連続ヒットには、いくつかの要因が挙げられます。

一つは本物志向であること。1作目の大々的な中国ロケは大きな話題になりました。2作目以降は新型コロナウイルスの感染拡大によって中国ロケが難しくなり、日本国内でのロケにCGを加えた形になりましたが、それでも邦画としては異例のエキストラ動員で“大人数による戦闘”を描き出しました。

また、主演の山﨑賢人や2作目から合流した清野菜名など、“動ける俳優”がさらに研鑽を積んで挑んだアクションシーンは映画『ゴールデンカムイ』やドラマ「今際の国のアリス」などを手掛けたアクション監督・下村勇二の差配の元、外連味とリアリティをハイレベルで融合させ、観客は高い満足度を得ました。


そして、なんといってもこのシリーズの醍醐味は豪華すぎるキャスト。山﨑賢人を筆頭に吉沢亮・橋本環奈・清野菜名・山田裕貴・岡山天音・三浦貴大・髙嶋政宏・要潤・山本耕史・玉木宏・佐藤浩市・小栗旬・本郷奏多・片岡愛之助・豊川悦司・杏・新木優子・吉川晃司・長澤まさみといった主演級が勢ぞろい、まるでNHK大河ドラマのようです。

そんな中でも強烈なインパクトを残し、今となっては山﨑賢人と並び立つか、喰いかねないほどの存在となったのが大沢たかおです。


原作を通して主人公の信に大きな影響を与え続ける伝説の大将軍・王騎を、大沢たかおは驚異的な肉体改造で演じ切りました。シリーズを見直すと1作目と2作目では王騎の出番は思っているよりも少ないのですが、それでも強烈な印象を残します。

そしていよいよ王騎が戦場に出向くことになる3作目からは出番もグッと増え、とうとう今回の『大将軍の帰還』ではいわゆる“タイトルロール”にまで躍り出ました。


「キングダム」というシリーズの主人公は間違いなく信ですが、今回の『キングダム 大将軍の帰還』という映画に関しては、主役は大沢たかお=王騎です。これはもう言い切ってしまいます。

原作は続いているため、今作がこれまで通りのヒットを記録すれば、続編が出る可能性もあるかと思いますが、このシリーズにおける王騎の大きさに頭を抱えることになるでしょう。

『キングダム 大将軍の帰還』公開中



海の日を絡めた7月第2週に『キングダム 大将軍の帰還』は公開されました。1作目は4月の公開でしたが、2作目以降は夏映画の本命として公開されるようになっていますね。業界最大手の東宝としても、その年の勝負作として位置付けていることが伝わる公開日程です。

公開初週の数字が発表され、『キングダム 大将軍の帰還』は公開初日からの3日間で興行収入16.29億円、観客動員で106.5万人を挙げました。海の日を含んだ4日間でも興行収入22億円以上、観客動員146万人を記録しています。


『キングダム』は公開時期に毎作ごとに差異があり、2作目と今作は祝日を含むため実質週末が4日間あるという変則的な状況ですが、今作の3日間と前作の3日間の記録と比較したところ、興行収入で約155%、観客動員で約151%という破格のスタート切りました。

また海の日を含む4日間の数字が出ている2作目と比べると、興行収入で約160%、観客動員で約157%という数字であり、シリーズ4作目にして歴代最高のスタートを切ったことになります。

ここから考えると、最終的な興行収入が50億円を突破するのは確実と言っていいのではないでしょうか。また東宝も「興収100億を目指せる特大ヒットスタート」と伝えているため、シリーズ初の100億円突破という記録も見えてくるかもしれません。

ちなみに2024年公開の作品で、すでに100億円を突破しているのは『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』(154.8億円)と『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』(112.9億円)です。(※現在)

『100万ドルの五稜星』は初日3日間で興行収入33億円・観客動員220万人、『ゴミ捨て場の決戦』は初日3日間で興行収入22.3億円・観客動員152万人でした。

それぞれの作品を同一なものとして比較はできませんが、興行収入の勢いを考えた場合、『大将軍の帰還』も今後の伸び次第では「100億円」が視野に入る可能性もあると言えるでしょう。



もちろん、公開時期が映画業界最大の稼ぎ時であるサマーシーズンであるため競合作品も多く、『デッドプール&ウルヴァリン』と『もしも徳川家康が総理大臣になったら』という話題作があります。

『デッドプール&ウルヴァリン』はラージフォーマットスクリーンにも対応している作品であるため、客単価の高いIMAXシアターなどは『キングダム 大将軍の帰還』と『デッドプール&ウルヴァリン』とで壮絶な奪い合いが展開されると思われます。



さらに、『ツイスターズ』や『インサイド・ヘッド2』など強力なタイトルが次々と公開されるため、『キングダム 大将軍の帰還』としても安穏としてはいられないのが実情です。ただ、それでも邦画の強みを生かした公開後のプロモーション展開や、夏休み興行の先陣を切って公開されたアドバンテージは大きいと考えられます。

年間統計上、熱心な映画ファン以外の映画館での鑑賞本数は1〜2本程度という状況です。そんな中で「この夏の1本のファーストチョイス」になりやすい公開日程というのは、『キングダム 大将軍の帰還』にとって大きな武器となるでしょう。

ちなみに『大将軍の帰還』が100億円を突破した場合、邦画の実写としては2003年の『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』以来の快挙となります。

“最終章”宣言は出たものの


原作やアニメを見ている方は今回の映画で何が起きるか、おおよそ見当がついていると思われます。予告編でもそのあたりを意識して“最終章宣言”まで出ています。そのくらい大きな物語上のピリオドを迎えます。

ただし、原作の連載は続いています。今回の『大将軍の帰還』が従来通りかそれを上回るヒットを記録するとなれば、自然と続編への待望論も上がってくるでしょう。

原作すべてを映像化するというのは難しいかと思いますが、『沈黙の艦隊』が映画を含めた再編集+追加エピソードをAmazonプライムで配信したり、『ゴールデンカムイ』が映画の続きをWOWOWの連続ドラマで展開することになったりという選択肢もあるため、「『キングダム』の映像化の続き」にも期待したいところです。

とにもかくにも、まずは今回の『キングダム 大将軍の帰還』です。見て損はないオススメ大活劇となっているため、ぜひ涼しい映画館の大スクリーンで体感してみてください。

(文:村松健太郎)

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