<徹底解説>『デッドプール&ウルヴァリン』がMARVEL映画史の集大成だと言える“3つ”のポイント

映画コラム

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マーベルファン待望のシリーズ最新作『デッドプール&ウルヴァリン』が7月24日(水)より公開されている。

本作では、X-MENシリーズのスピンオフキャラとして登場したおしゃべりな傭兵・デッドプールがMCUに初参戦!さらに『LOGAN/ローガン』の壮絶なラストで引退したはずのウルヴァリンも奇跡のカムバックを果たしている。

数多の新作が公開され、スーパーヒーロー映画疲れが囁かれる昨今。正直、ここ数年でシリーズを離脱した人も少なくないだろう。

しかし、本作はそんな人でも楽しめる、否、そんな人にこそ観て欲しいスーパーヒーロー映画の傑作だった!

なぜなら、『アベンジャーズ/エンドゲーム』がMCUの集大成、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』がスパイダーマン映画の集大成とするならば、本作は(前述の2作品を補完する)MARVEL映画史の集大成と言える内容だったからだ。

本記事では、そんな本作を楽しむための背景や小ネタを徹底解説。前半はネタバレなしで、後半はネタバレありの内容を交えながら、作品の魅力を紹介していきたい。

【目次】

1. ヒーロー映画愛溢れる製作陣

『デッドプール&ウルヴァリン』はMARVEL映画やヒーロー映画へのラブレターになっている。

これはヒーロー映画愛溢れる製作陣のおかげだろう。本作で主演を務めたのは、X-MENを代表する2大スター・デッドプール役のライアン・レイノルズとウルヴァリン役のヒュー・ジャックマン。


ヒュー・ジャックマンの出演決定後に2人が登場した動画。彼らの仲の良さが滲み出ている。

17年以上の盟友だという2人の関係性が本作に多大なる貢献をしたことは想像に難くないが、そこで注目すべきなのがショーン・レヴィ監督の存在である。

かつて『リアル・スティール』でヒュー・ジャックマンと、『フリー・ガイ』『アダム&アダム』でライアン・レイノルズと仕事を共にし、彼らと旧知の仲である彼。


ヒュー・ジャックマンの出演を発表する動画は全世界で話題となった。この映像を担当したのもショーン・レヴィ監督、その人である。

そんな監督のフィルモグラフィーを辿れば、彼が本作に適任だったことが分かるはずだ。

冴えないバツイチ警備員が生き別れた息子のために奮闘する『ナイト ミュージアム』。

元プロボクサーがロボットボクシングを通じて息子との絆を取り戻す『リアル・スティール』。

ゲームのモブキャラが愛ゆえに新たな一歩を踏み出す『フリー・ガイ』。

「愛する者を守るためにヒーローになる物語」は、まさしく彼の作家性であり、本作の本質でもある。

また『ナイト ミュージアム』シリーズで、歴史上の偉人から名作映画の人気キャラクターまでを登場させたように、適材適所な人物配置は彼の得意分野と言える。

本作でも数多くのカメオ出演が盛り込まれたが、それらが単なるファンサービスで終わらず、物語においても重要な意義を持つように演出されているのだ。

ちなみに、彼はこれまでのキャリアでも幾度かヒーロー映画を踏まえた小ネタを登場させている。

  • 『インターンシップ』……X-MENを率いるプロフェッサーX(エグゼビア教授)を踏まえたコメディシーン
  • 『ナイト ミュージアム/エジプト王の秘密』……ウルヴァリンの身振りをするヒュー・ジャックマンのカメオ出演シーン
  • 『フリー・ガイ』……ゲーム世界に生きる主人公がキャプテン・アメリカの盾、ハルクの腕を強化エフェクトとして使用するシーン

作り手としての才能はさることながら、熱心なヒーロー映画ファンだからこそ描けた遊び心の溢れる演出こそが、『デッドプール&ウルヴァリン』を傑作たらしめた所以と言えるのだ。

また、「ヒーロー映画への愛」という点では、今回から新たに脚本に参加したゼブ・ウェルズの存在も外せない。

マーベルの原作コミックも多数手掛けてきた彼は、映像作品としてSWの公式パロディ「ロボットチキン/スター・ウォーズ」の脚本を担当したほか、マーベル作品では「シー・ハルク:ザ・アトーニー」第7話の脚本を執筆した人物でもある。

このエピソードは、マイナーなマーベルキャラクターが主人公を救う物語であり、その視点は最新作でも重要な要素として引き継がれているのだ。

–{メタフィクションとしての面白さ}–

2. メタフィクションとしての面白さ

デッドプールが“第4の壁”を破る」ことができ、「複雑な制作経緯を経て実現した」映画であることを知っておくと、本作をより楽しめるだろう。

「第4の壁を破る」とは“主人公が観客に語りかけてくる演出”のこと。

本作では2019年に20世紀フォックス映画(『デッドプール』を含めたX-MENシリーズなどを製作した会社)がウォルト・ディズニー社によって買収された出来事を、そのネタの中心として扱っている。

一時は事実上の打ち切りも危ぶまれたX-MENシリーズだったが、異なる作品世界を繋げる「マルチバース」という概念や、デッドプールの「メタフィクション」的な立ち位置も功を奏し、見事にマーベル・シネマティック・ユニバースの世界と合流。

劇中では、この制作背景が物語構造や作品メッセージにも直結しており、X-MENシリーズのスピンオフキャラクターであるデッドプールにしか語れない物語になっているのだ!

また、本作が『マイティ・ソー』の弟を主役にしたスピンオフドラマ「ロキ」と多くのつながりがある点も興味深いポイントだ。

幾重にも存在する世界を束ねる組織・TVAや、世界からこぼれ落ちた存在が辿り着く虚無空間、そして、姿・形が異なる別世界の主人公たち……。

『デッドプール&ウルヴァリン』の世界観はまさしく「ロキ」を踏襲しているが、主人公がスピンオフキャラクター&メタフィクション的にMCUを再解釈する物語という、シリーズにおける作品の位置づけも共通しているのだ。

※ここからの内容は、映画『デッドプール&ウルヴァリン』の重大なネタバレに触れています。未鑑賞の方はぜひ観賞後に記事をご覧ください。

ところで、『デッドプール&ウルヴァリン』の劇中では別世界のデッドプールが大量に登場したが、そこにもメタフィクション的な面白さがある。

以下で挙げるのは、今回の映画で登場した別次元のデッドプールの一例だ。

  • ナイスプール
  • ドッグプール
  • レディ・デッドプール
  • カウボーイデッドプール
  • ローニンプール
  • 禅プール
  • キッドプール
  • ヘッドプール
  • 探偵デッドプール
  • デッドプール2099
  • ゴールデンエイジデッドプール
  • ベイビープール

これらは原作にも登場するデッドプール軍団(Deadpool Corps)を基にしているが、演者などに実写版ならではの小ネタが散りばめられていた。


余談だが『デッドプール2』公開時のPR動画では偶然にもキッドプールそっくりのキャラクターが登場していた。

例えば、レディ・デッドプールを演じているのは、ライアン・レイノルズの妻でもある女優ブレイク・ライヴリー

劇中では、冒頭で彼女の代表作「ゴシップガール」をネタにしているほか、産後であることが言及される(実際に2023年には第4子を出産している)など、実生活を踏まえたジョークが登場している。

あわせて「キッドプール」役はライアン一家の次女・イネス、「ベイビープール」役は末っ子のオリンが担当。「スクリーミング・ミュータント」役に長女のジェームズ、スタッフとして三女・ベティもクレジットされているなど、家族ぐるみで本作の製作に携わっている

また、映画オリジナルとなるウェールズの国旗があしらわれた甲冑のデッドプールにも注目していただきたい。

演じたのはウェールズのサッカーチーム・レクサムAFCの選手ポール・マリン。これはライアン・レイノルズがチームのオーナーであることを踏まえた小ネタである。

Disney+にて配信中のドキュメンタリーシリーズ「ようこそレクサムへ」では、役者である彼がサッカーチームの買収を行い、チーム運営に奮闘する様子が取り上げられており、ファンは是非こちらもチェックしていただきたい。

ちなみに、吹替版では『ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ』のデッドプール役だった子安武人がナイスプールの声も担当。


ちなみにアニメの人気投票では、アベンジャーズの主要メンバーを抑えて1位を獲得する快挙を成し遂げている。

この背景を踏まえた日本版ならではのセリフも登場しているので、くれぐれも聞き逃さないようにしていただきたい。

–{ファン待望のヒーローたち}–

3. ファン待望のヒーローたち

本作では様々なキャラクターたちがカメオ出演を果たしたが、彼らが決してMCUの中心人物ではないというのも、作品において重要なポイントである。

冒頭に登場したハッピー・ホーガンはアイアンマンの相棒であり、のちにスパイダーマンとも親密な関係を築いた人物。

彼が「ヒーローを支える役割も必要であること」を説き、「人に必要とされるヒーローになれ」と助言する場面は印象的だったが、まさしく本作ではファンが必要としていたヒーローたちが次々と登場する。

まず登場したのが、ヘンリー・カヴィルが演じる別世界のウルヴァリン。彼はマーベルと並ぶ大手コミック会社・DCコミックスの映画シリーズで、2013年からスーパーマンを演じてきたが、昨今の大幅なシリーズ再編で事実上の降板に……。

そのため、映画ファンにとっては思いもよらぬ形で彼のヒーロー姿を再び拝めることとなった。

実はスーパーマン役の降板後、「彼が新たなウルヴァリン役を演じたら……」というファンアートが話題になったこともあり、今回の出演はそんなファンの声を反映した抜擢だったのかもしれない。

続いて、虚無空間に迷い込んだデッドプールとウルヴァリンが最初に遭遇したのが、クリス・エヴァンスが演じるヒューマン・トーチ(ジョニー・ストーム)

クリス・エヴァンスといえば、いまや『キャプテン・アメリカ』のイメージが強いが、実は2005年に『ファンタスティック・フォー [超能力ユニット]』でヒューマン・トーチを演じている。

劇中では「シリーズを引退したはずのキャプテン・アメリカが復活……?」とミスリードしておいて、懐かしのキャラクターが登場したことで往年のファンを驚かせた。

さらに、虚無空間に閉じ込められたヒーローたちとして4人の豪華キャストが登場する。

一人目は、ダフネ・キーンが演じるローラ(X-23)。『LOGAN/ローガン』において、ウルヴァリンの遺志を引き継ぐことになった彼女は、かつてスピンオフ映画も企画されていたキャラクター。

その活躍を想像していたファンにとってはたまらないバトルシーンが登場し、物語においてもウルヴァリンの内面を深掘りする重要な存在となっていた。

二人目は、ウェズリー・スナイプスが演じるブレイド。1998年からシリーズ3作品が制作され、多くのファンが復帰を待ち望んでいた伝説のヒーローである(ちなみに『ブレイド3』にはライアン・レイノルズも出演)。

本作では「ブレイドは後にも先にも俺だけだ」という主旨の発言をしていたが、これはマハーシャラ・アリが主演を務めるリブート企画が現在難航していることも踏まえたブラックジョーク。

同時に往年のファンにとっては、彼の心強い宣言に胸を打たれる名シーンとなっていた。

三人目は、ジェニファー・ガーナーが演じたエレクトラ。2005年に公開された『デアデビル』のスピンオフ作品の主人公である。

公開当時の評価は芳しくなかったものの、マーベル映画史においては女性ヒーローを主演に捉えた草分け的な作品でもあり、本作でフィーチャーされたことには大きな意義があったと言える。

四人目は、チャニング・テイタムが演じたガンビット。ガンビットはX-MENの人気キャラクターで『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』では、テイラー・キッチュが演じていた。

実は2015年頃からチャニング・テイタムが主演を務めるスピンオフ映画の企画が進められていたが、20世紀フォックスの買収を決定打として立ち消えになってしまった経緯がある。

チャニング・テイタム自身が長年熱望し、ファンも期待していた企画だっただけに、本作での登場とアクションシーンは感慨深いものとなっていた。

そして、劇中ではX-MENシリーズからも懐かしのキャラクターが多数登場。以下ではその一部を過去の出演作とあわせて紹介する。

  • ジャガーノート(『X-MEN:ファイナル ディシジョン』『デッドプール2』)
  • アザゼル(『X-MEN:ファーストジェネレーション』)
  • トード(『X-MEN』)
  • サイロック(『X-MEN:アポカリプス』)
  • パイロ(『X-MEN』三部作)
  • レディ・デスストライク(『X-MEN2』)
  • セイバートゥース(『X-MEN』)

これらのキャラクターたちは20世紀FOXの買収を経て、もしX-MENシリーズが一新されていれば、再登場することはなかったかもしれない。そのため短い出演時間とはいえ、彼らが集結したことに大きな価値があったと言えるのだ。

最後にシリーズとしては久々の登場となった、スタン・リーのカメオ出演も忘れてはならない。マーベルヒーローの生みの親として、数多くのマーベル映画に登場した彼。

2018年の逝去を経た『アベンジャーズ/エンドゲーム』を最後に、登場シーンはほぼ見られなくなってしまったが、本作ではクライマックスのバトルシーンでバスの広告として登場している。

MARVEL映画への愛」が核となる本作において、彼の登場は象徴的な瞬間だったと言えるのだ。

本作のエンドロールでは『X-MEN』シリーズ、『ファンタスティック・フォー』シリーズ(2015年のリブート版が登場するのもファンにとっては感涙の演出だった)などのメイキング映像が引用される。

この演出は『デッドプール&ウルヴァリン』がMCU以外のMARVEL映画のトリビュートであることを決定づけた。

約20年近く映画館でMARVEL映画を追ってきた筆者にとっては胸に込み上げるものがあったが、シリーズを追ってきていない人であっても「映画愛」の表現として、心を揺さぶられるものだったのではないだろうか。

さて、今回の記事では、『デッドプール&ウルヴァリン』を楽しむためのポイントを大きく3つのポイントに分けて紹介してきたが、いかがだっただろうか。

『デッドプール&ウルヴァリン』は、デッドプールが「世界」を救う物語だった。

ここでいう「世界」とは、主人公にとって「大切な友人たちや愛する者が生きる世界」だったが、それは同時に「X-MENシリーズの世界」であり、「20世紀フォックス製作作品を筆頭とするMCU以外のMARVEL映画の世界」でもあった。


ライアン・レイノルズがSNSに投稿した20世紀フォックス時代の集合写真。『X-MEN:アポカリプス』、『ファンタスティック・フォー(2015年版)』のキャストに加え、幻の企画『ガンビット』のチャニング・テイタムがいるのも何とも感慨深い。

ストーリーはもちろんながら、そのメタフィクション的なメッセージにも何とも感情を揺さぶられる傑作となっていたのだ!

ヒーロー映画史の集大成として、ぜひ、一人でも多くの皆様に目撃していただきたい本作。一度では拾いきれない小ネタの数々も、色褪せない感動的なドラマも、繰り返し劇場に足を運んでみることで新たな楽しみ方ができるはず。

ぜひ、今回の記事で紹介した内容を基に何度でも作品を楽しんでいただきたい。

(文:TETSU)

参考資料

–{『デッドプール&ウルヴァリン』作品情報}–

『デッドプール&ウルヴァリン』作品情報

ストーリー
“普通のヒーロー”に飽きてない?
戦う動機は超個人的、破天荒でなんでもアリの“クソ無責任ヒーロー”デッドプールに世界の命運は託された!?ヒーローになんて興味はないけど、大切なファミリーの大ピンチなら頑張っちゃう!予測不可能なミッションのカギを握るのは…よりにもよって“あの爪野郎”。クソ真面目で“キレるとヤバい最恐アウトロー”ウルヴァリンに助けを求めるが…。

全く異なる個性のR指定ヒーロー2人が暴れまわる!この夏イチバン過激なアクション・エンターテイメント♡

予告編

基本情報
出演:ライアン・レイノルズ、ヒュー・ジャックマン

監督:ショーン・レヴィ

原題:『DEADPOOL & WOLVERINE』

公開日:7月24日(水)最速公開

配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン

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