「虎に翼」百合(余貴美子)さん、アヴァンでナレ死<第116回>
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2024年4月1日より放送スタートしたNHK連続テレビ小説「虎に翼」。
日本史上で初めて法曹の世界に飛び込んだ女性をモデルにオリジナルストーリーで描く本作。困難な時代に生まれながらも仲間たちと切磋琢磨し、日本初の女性弁護士となるヒロイン・寅子を伊藤沙莉が演じる。
ライター・木俣冬がおくる「続・朝ドライフ」。今回は、第*回を紐解いていく。
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多岐川は自宅療養中
原爆裁判は国側が勝ちましたが、裁判をきっかけに国民の注目を浴び、被爆者救済の制度を求める気運が高まります。竹中(高橋努)は長い長い記者生活ではじめての本を出すことができました。なかなかご苦労されたようですが、著書が出せて良かった。残念ながら、寅子(伊藤沙莉)の本は出すことができなかったようです。「またどこかでな、佐田判事」とはじめて「お嬢ちゃん」でなく「佐田判事」と認めて竹中は去っていきます。
寅子が、よね(土居志央梨)たちの事務所に行くと、弁護士チームは祝杯(負けたから祝ではないか)をあげています。
寅子が黙って頭を下げるのは、判事のひとりとして、国が勝つ判断をしたからでしょう。よねは寅子に「黙って飲め」とお酒を注ぎます。敗訴とはいえ、できるかぎりのことはやって、世論をすこし動かしたことは、まず一歩とよねたちには悔いはないようです。
「被爆者の方々が救われたわけじゃない」と寅子は無念そう。
判決文をもう少し考えようと粘ったのも寅子で、具体的に問題に言及しませんが、いろいろ考えるところがあるようです。
航一(岡田将生)は「あげた声は判例は決して消えない」「苦しいことは分けあいながら、これからももがきながら一歩一歩です」とやさしく励まします。彼は裁判のとき、外で聞いていて、口元をかすかに震わせていました。総力戦研究所にいながら未然に戦争を回避できなかった、原爆を想定できなかったことなどの責任をずっと引きずっているのでしょう。
寅子は自分の思いと違う判決を選択しないとならないとき、裁判官でいることに疑問なり苦悩なりしないのでしょうか。それでも裁判官を仕事と選ぶ理由は何なのか。そういうドラマも見て見たかった。
第24週「女三代あれば身代が潰れる?」(演出:梛川善郎)は原爆裁判以降、年月が急速に過ぎていきます。
痴呆症に苦しんだ百合(余貴美子)は2年後に亡くなったとナレ死(ナレーション:尾野真千子)。
【朝ドラ辞典:ナレ死(なれし)】登場人物が亡くなるとき、死の瞬間を描かず、ナレーションで「亡くなりました」と紹介すること。はじまりは定かではないが、大河ドラマ「真田丸」のとき、SNSで「ナレ死」と盛り上がって以降、定着したワード。亡くなるときに、涙の別れの芝居場があったほうが感動はするが、あっさり「ナレ死」も逆に印象に残るようになった。
1943(昭和68年)年、多岐川(滝藤賢一)は病で手術し自宅療養、いまだ多岐川の家に同居している汐見(平埜生成)と香淑(ハ・ヨンス)の娘・薫(池田朱那)は学生運動に没頭し、自身の出自が朝鮮であることを隠されていたことに怒ります。開けて1944(昭和69年)、猪爪、星家は大家族化し(ゴッドファーザーみたいだけどマフィアではなく法曹界のエリート一族というまばゆさ)、寅子に孫ができ、優未(川床明日香)は大学院で寄生虫研究をしています。
ナレーションでも「寄生虫?」と驚いているように、
なかなか唐突感ありますが、寅子のモデルである三淵嘉子さんの息子さんが寄生虫の研究をされていたそうで、そこは史実を取り入れたようです。
そして、寅子は、久藤(沢村一樹)が所長になった家庭裁判所で、少年部の部長になって、未成年による凶悪犯罪などに取り組んでいます。
家庭裁判所にはいまだに、花岡(岩田剛典)の妻の描いたチョコレートを分け合う絵が飾ってあります。チョコを分け合っている絵と、航一の「苦しいことは分けあいながら」のセリフが重なって見えました。
そんなある日、桂場(松山ケンイチ)が第五代最高裁長官になったニュースがテレビから流れます。
テレビを見ている航一が、テレビのなかにもいるというシュールな場面。航一ってもう定年退職したのかと思ったら、まだ現役なんですね。登場人物が何歳なのかよくわかりませんが、少なくとも寅子がおばあちゃんになっています。
(文:木俣冬)
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