どーする? どーなる? 2016年夏休み興行

ジャングル・ブック
(C)2016 Disney Enterprises,Inc.All Rights Reserved.

シネコンが足りない!! スクリーンが足りない!!

先輩 この間、シネコンの番組編成担当をやっている知り合いと会ったのだけど、もう悲鳴を上げていたね。夏休み映画の編成で。

女の後輩 シネコンでも番組編成なんて、テレビ局みたいなことをしているんですか?

先輩 知らないのかよ。どのスクリーンにどの作品をいつから何週間上映するか。それを配給会社の意向も考慮して編成するのが彼らの仕事だ。

女の後輩 そうなんですか。でも、シネコンだったらスクリーンが多いから、いくらでも対応出来るんじゃないですか?

先輩 ところがそうじゃないんだよ。今年の夏休み興行は、ビッグな作品が多くて、当然配給会社としても大ヒットを目論むだろうから、シネコンの一番大きなスクリーンでの上映を希望する。でも、それは他社も同じで、皆映画が公開される前は判で押したように「うちのシャシンが一番当たるに決まっている!!」と、断定的に豪語するからね。コケると黙り込むけど(笑)。

久々の続編と、シリーズ作品が強力な洋画打線

女の後輩 その夏休み興行には、どんな作品が出るんですか?

先輩 7月から8月末までに公開される作品をざっと並べて見るとこうなる。まず7月1日には「ウォークラフト」(東宝東和配給)、「アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅」(WDS配給)、翌日の7月2日からは「全員、片想い」(東映配給)、「ホーンテッド・キャンパス」(松竹配給)。そして7月9日からは20年ぶりの続編になる「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」(フォックス配給)が登場する。

アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅 ネタバレ
(C)2016 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

女の後輩 聞いた話ですが、先輩はこの映画の第1作のプレスシートとかパンフレットを書いてるって本当ですか?

先輩 うん。当時フリーになったばかりで・・・なんて思い出に浸っている場合じゃないぞ。続いて7月16日は、これまた久方ぶりの続編「ファインディング・ドリー」(WDS配給)、「HiGH & LOW THE MOVIE」(松竹配給)、毎年恒例の「ポケモン・ザ・ムービーXY&Z/ボルケニオンと機巧のマギアナ」。翌週の7月23日からは「ONE PIECE FILM GOLD」(東映配給)、29日より「シン・ゴジラ」(東宝配給)、30日より「ターザンREBORN」(ワーナー配給)。ああ、もう息切れしてきた・・・。

ファインディング・ドリー
(C)2016 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

女の後輩 洋画のラインナップが強力ですねえ。

先輩 そうなんだよ。特にシリーズものだね。日本でも大ヒットした作品の続編が、久しぶりに登場するケースが多い。

8月11日は山の日だけど、映画館に行くべし!!

女の後輩 8月の公開作品はどうなっていますか?

先輩 えーと、まず8月6日からはアニメ「ルドルフとイッパイアッテナ」(東宝配給)、これも恒例「仮面ライダーゴースト」「動物戦隊ジュウオウジャー」の劇場版(東映配給)、「秘密」(松竹配給)といった具合。凄いのがこの翌週で、今年は8月11日が山の日で休日になる。それで年間最も稼働するお盆シーズンになだれ込み、一気に興行収入をあげてしまおうという戦略で、8月11日初日の作品が「ジャングル・ブック」(WDS配給)、「ペット」(東宝東和配給)、「X-MEN:アポカリプス」(フォックス配給)の3作品が公開される。

女の後輩 これは大きいですねえ。「ジャングル・ブック」はアニメで有名な名作文学の実写版ですし、「ペット」は昨年の「ミニオンズ」のスタッフの新作で、しかも同時上映に「ミニオンズ」の短編がついてくるらしいですよ。

ペット
(C)Universal Studios.

先輩 「X-MEN:アポカリプス」にしても、このところアメコミ映画の興行力は以前よりアップしているからね。

女の後輩 それ以降ではどんな作品が?

先輩 13日から「劇場版アイカツスターズ!」(東映配給)、これまたお久しぶりの「ゴーストバスターズ」(ソニー・ピクチャーズ配給)が8月19日から。20日からは「青空エール」(東宝配給)、26日から「ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影」(東和ピクチャーズ配給)と、新海誠監督のアニメ映画「君の名は」。27日より「後妻業の女」(東宝配給)と、こんな感じ。

君の名は。 神木隆之介 立花瀧
(C)2016「君の名は。」製作委員会

女の後輩 ふえええ・・・・見るほうもこれじゃ目移りして大変ですよお!!

興収100億円以上を上げた大ヒット作の続編が3本!!

先輩 さっき君が言ったように、この大攻勢の中心になるのが、アメリカ・メジャー系配給会社の作品群で、ディズニーなどは「アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅」「ファインディング・ドリー」「ジャングル・ブック」と、3本を2ヶ月の間に公開する。

女の後輩 シリーズものという意味では「アリス・・」と「・・ドリー」は前作の実績がありますからね。

先輩 「アリス・イン・ワンダーランド」は2011年4月に公開された興収118億円を上げる大ヒットになり、「ファインディング・ニモ」は2003年公開で110億円。どちらも興収100億円以上を上げているから、続編とは言ってもかなりのヒットになる可能性があるぞ。

女の後輩 他にシリーズもの、続編というと・・。

先輩 「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」の前作「インデペンデンス・デイ」は1996年12月公開で興収103.2億円を計上していて、これまた100億円以上。「ONE PIECE FILM GOLD」の前作「・・Z」も68.1億円をあげているし、直接的な続編ではないけど「ペット」と同じスタッフによる「ミニオンズ」が昨年公開されて興収52.1億円上げたのには、僕も驚いた。

女の後輩 「ゴーストバスターズ」は?

ゴーストバスターズ

先輩 さすがにその時代になると、興収ではなく配給収入の発表だったんだが、1984年12月公開の第1作が配収41億円、89年12月公開の「ゴーストバスターズ2」は17.5億円と、この時は「バットマン」「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2」といった強力な対抗馬があったせいで、前作の半分以下になっちゃった。

女の後輩 「シン・ゴジラ」は?

シン・ゴジラ ネタバレ
(C)2016 TOHO CO.,LTD.

先輩 この場合は2014年7月公開の「GODZILLA ゴジラ」が興収32億円行ってるのが、ひとつの指針になるだろうね。

オープニング・スクリーンを、他社作品から奪え!!

先輩 最終的な興収を大きくするために、特にハリウッド映画で重視されているのが、オープニング段階でのスクリーン数をいかにとるか。これは他社の強力作品に対抗する意味もあって、さっき言ったように、シネコンの最大スクリーンの奪い合いになるわけだ。それに加えて、昨年の夏に大きな成果をあげたIMAX、4DX、MX4Dといった体感起動装置を備えたスクリーンも、同様に取り合いになるだろうね。

女の後輩 「アリス・イン・ワンダーランド」は公開時、どれぐらいのスクリーン数でスタートしたんですか?

アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅 ポスター
(C)2016 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

先輩 これがなんと、855スクリーン!!

女の後輩 すごっ!!

先輩 この時ちょうど「アバター」が大ヒットしたせいで、3D映画ブームが巻き起こっていて、その本命として登場したのが「アリス・・」。ちなみに興収の84.6パーセントが3D上映によるものだそうだよ。

女の後輩 さすがに今は、なんでも3D映画だから見たがる人は多くないと思うけど。

先輩 同じディズニーが今年のゴールデン・ウィークに公開した「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」などはIMAX 3D上映以外のところは、ほとんど2D上映だったしね。

女の後輩 ひとつのシネコンで3Dバージョン、2Dバージョン、日本語吹き替え版、字幕バージョンと各種それえてしまえば、それだけスクリーン数を圧迫するから、他社作品の入り込む余地がなくなってくるわけですか。

先輩 その通り。自社作品をヒットさせるためには、他社作品より有利な条件を確保せよというわけだよ。

女の後輩 「ファインディング・ドリー」みたいなファミリー・ターゲットの映画は、より一層その傾向が強く出ますね。

先輩 前作「ファインディング・ニモ」はオープニングで657スクリーンを確保したからね。これは当時の全国スクリーン数から行っても、かなり大きなマーケットだったんだ。これに比べると2014年の「GODZILLA ゴジラ」のオープニング・スクリーン数は334だったから、慎ましやかにさえ見えてくる(笑)。

女の後輩 でも、オープニングでスクリーンをたくさん確保すれば、必ず大ヒットするというわけではないでしょ?

先輩 良いところに気がついたねえ。さすがは我が後輩(笑)。オープニングの段階での興収が想定を下回っていた場合、シネコンならば小さなスクリーンに移されるし、場合によっては上映回数が減らされたりする。今年の夏休みみたいに、強敵がたくさんひしめいている状況だと、ちょっと興収がダウンすると他社作品が大きなスクリーンを奪ってしまう。

女の後輩 事前に予測出来ないですからね、1日何人のお客さんが来るかは。

先輩 配給会社の営業部では、過去のデータをもとにシミュレーションを行っているけれど、それだって外れることはある。

女の後輩 逆に、例えば座席数200のスクリーンで上映を開始したら、1日250人のお客さんが来てしまった。それだと50人のお客さんが入場出来ないことになりますね。

先輩 そういう「取りこぼし」は、配給会社にとっても映画館、興行会社にとってもビジネス・チャンスの喪失にあたるから、絶対にやらないようにはしているけれど、そういう想定外のヒット作が出ると、マーケットは俄然活気づくんだよ。

女の後輩 では、シリーズものや続編以外から大ヒット作が出たほうが良いわけですね。

先輩 うん。とにかくこの夏は注目だね。ハリウッド映画にとっては、正念場とも言える夏休み興行になるだろうから。

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(企画・文:斉藤守彦

    ライタープロフィール

    斉藤守彦

    斉藤守彦

    斉藤守彦(さいとうもりひこ) Morihiko Saitoh 静岡県浜松市出身。映画館、ビデオ会社でのアルバイトを経て、映画業界紙「東京通信」記者 (後に編集長)に。1996年からフリーの映画ジャーナリスト/アナリストとなり、以後多数の劇場用パンフレット、「キネマ旬報」「HiVi」「ザテレビジョン」「日経エンタテインメント!」「宇宙船」「スターログ日本版」「INVITATION」「東京カレンダー」「アニメ!アニメ!」「フィナンシャル・ジャパン」「Pen」などの雑誌・ウェブメディアに寄稿。2007年秋に「日本映画、崩壊 -邦画バブルはこうして終わる-」を、08 年「宮崎アニメは、なぜ当たる -スピルバーグを超えた理由-」、09 年「映画館の入場料金は、なぜ1800円なのか?」、 10 年に「『踊る大捜査線』は日本映画の何を変えたのか」(共著) を上梓。 他の著書に「図解でわかるコンテンツ・ビジネス」1〜4(共著)、「ソノラマ MOOK/ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」(構成・執筆) 、電子書籍「日本映画、飛躍と困惑の過去・現在・未来」等があり、ここ数年は「映画宣伝ミラクルワールド」「80年代映画館物語」と、独自の視点による書籍を執筆。2016年3月には新作「映画を知るための教科書 1912−1979」が世に出る。現在、水道橋博士編集長のメールマガジン「メルマ旬報」で「2016年映画館物語」を連載中。また「BOOKSTAND映画部!」で、「映画を待つ間に読んだ、映画の本」と「映画惹句は、言葉のサラダ」の2つの連載を行っている。

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