反戦映画の傑作『人間の條件』6部作、一挙上映!


反骨の巨匠・小林正樹監督


小林正樹監督は1916年2月14日生まれ。木下惠介監督に師事し、中篇『息子の青春』で監督デビュー。社会や体制、権力に対して常に疑問を投げかけつつ、厳しい視線で数々の名作を手がけてきた反骨精神あふれる巨匠で、本作以前にも、無実の罪で捕らえられたBC級戦犯を描いた『壁あつき部屋』は、53年に完成したにもかかわらず、アメリカへの配慮から56年まで公開が見送られました。そのほかにもプロ野球界の裏側を描いた『あなた買います』(56)や、米軍基地問題を背景に据えた『黒い河』(57)、本作以降も封建社会を批判した『切腹』(62)や『上意討ち 拝領妻始末』(67)、4時間半にわたるドキュメンタリー『東京裁判』(83)、そして連合赤軍に加入した息子を持つ家族が崩壊していくさまを描いた『食卓のない家』(85)を遺作に、1996年10月4日に80歳でこの世を去りました。
来年は小林監督の生誕100周年にあたり、さらに再評価が促進されそうな気配です。

小林監督は『人間の條件』全六部を通して、軍国主義や植民地支配、およびそれに伴う人種差別に対する徹底した批判と、過去の戦争を反省の十字架として背中にしょい続けていく覚悟を観客ひとりひとりに投げかけています。それはいかなる理由があろうとも、人と人が争うことは愚の骨頂であるという、実に明確なメッセージを、仲代達矢という当時の新進俳優に体現させていきました。

仲代達矢もまた本作で俳優として大きくブレイクし、以後、小林作品になくてはならない存在となり、同時に黒澤明や岡本喜八、五社英雄などそうそうたる監督の作品で名演を披露し続けていくのでした。

それぞれ予定に合わせたスケジュールでのご鑑賞を!


全六部合わせて9時間半を超える上映時間は、当時ギネスブックに載ったほどで、またこの作品の一挙上映を通して映画館のオールナイト興行が始まったという説もあります。
今回の一挙上映は、1日で一挙に鑑賞する手もあれば、お忙しいかたのために3日間に分けて鑑賞しやすいように上映スケジュールも組まれています(詳細は丸の内ピカデリー2 tel:03-3201-2881、または、http://www.smt-cinema.com/site/marunouchi/news/detail/s__2015.htmlまで)。

入場料金は各二部構成で1本とし、一般1500円、シニア1100円、大学生1200円、高校生以下1000円。
また初日はファーストデイとして1100円、水曜日(5日)はレディースディで女性のかたは1100円、さらには窓口で『人間の條件』一般券の半券を提示していただければ、一般料金より300円割引のサービスもあります(期間中、何回でもOK)。

戦後70年保たれてきた日本の平和が脅かされてきた今年、老若男女を問わず、ぜひとも本作を通して、戦争と平和について考えていただけたら幸いです。

なお、8月4日には同じ五味川純平原作、山本薩夫監督による『戦争と人間』3部作のブルーレイ・ソフトが、日活からリリースされます。こちらも上映時間9時間23分の大長編で、日本軍の大陸侵略と、その影で蠢く財閥の陰謀を一大スケールで描いたもの。『人間の條件』と併せて、ぜひご覧になってみてください。

最後に、小林正樹監督の、本作の演出にあたっての言葉で終わりたいと思います。

■「キネマニア共和国」の連載をもっと読みたい方は、こちら

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

RANKING

SPONSORD

PICK UP!