“映画でしかできないどんでん返し”は存在するのか?
6.『サスペリア PART2』
ピアニストの男性が殺人事件に巻き込まれてしまい、その謎を解く過程でさらに犠牲者が増えていってしまうというシンプルなミステリーです。
驚くのはトリックそのもの。一度目に観た時はまず気づかないのですが、二度目にそのシーンを見た時は叫んでしまいそうな怖さがあり、同時にちょっと笑ってしまうかもしれません。これは“場面がすぐに切り替わってしまい、ずっと同じ場所を見つづけることができない”という映画の特徴を活かした仕掛けでもあるのです。
ちなみに、この邦題は同監督のオカルトホラー映画『サスペリア』の意外なヒットにより、配給会社が勝手につけたもので、実際は続編ではありません。また、“完全版”と銘打たれたバージョンは2時間を超える上映時間で少々冗長さが否めないため、可能でしたら劇場公開版を観ることをおすすめします。
まとめ.どんでん返しは笑える?
この他、『ファイト・クラブ』や『ユージュアル・サスペクツ』や『シャッター・アイランド』など、“映像だからでこそ2度観たくなる”映画もあります。
いずれも、ちょっとしたセリフや役者の演技がどんでん返しの伏線になっているので、“画面のすみずみまで見逃せない”という、映画にしかない魅力に溢れていると言えるでしょう。
『ソウ』や『エスター』のどんでん返しは小説でも実現可能でしょうが、やはり映像で観てこその衝撃が絶大なものになっています。いくら文で表現されても、その“見た目”のインパクトにはなかなか敵いません
上記に挙げた、『イニシエーション・ラブ』と『サイン』と『サスペリア PART2』は、いずれも(個人的には)“衝撃が大きすぎて笑ってしまう”映画でした。あまりに予想外の出来事には、人は不思議と笑ってしまうものですものね。
どんでん返しというわけではありませんが、『ドリームキャッチャー』や『キャビン』などでこみ上げてくる笑いも、それらに似ているかもしれません。
結論としては、『サスペリア PART2』が真に“映画でしかできないどんでん返し”が存在する作品であり、他にも映像だからでこそどんでん返しのインパクトが強くなった作品や、観客を上手く騙せている作品が多くある、ということです。
数々のどんでん返しのある作品が生まれ、そのアイデアが飽和状態になってきたと言われる昨今ですが、これからも“映画でしかできないどんでん返し”が世にでてきてくれるとうれしいですね。
おまけ.最もおすすめしたい、どんでん返しの映画はこれだ!
最後に、“映画でしかできない”を抜きにして、ぜひおすすめしたい、どんでん返しのある作品を紹介します。それは『情婦』と『灼熱の魂』です。
『情婦』は製作年が1957年と古い作品ですが、クセのある登場人物の魅力、まさかの逆転劇、皮肉たっぷりなラストのキレの良さなど、今観てもまったく色あせない法廷サスペンスの傑作です。
トリックそのものは小説でも可能なもの(そもそもアガサ・クリスティーの小説が原作)ですが、映像であるとさらに“勝手な思い込み”が助長されるため、どんでん返しに驚くことができるのではないでしょうか。
ちなみに、邦題のようなエロスな雰囲気は本編にほとんどありません。タイトルが恥ずかしい、モノクロ映画だからと敬遠せずに、ぜひ一度は(もちろん二度目も)観て欲しいです。
『灼熱の魂』は、母が2通の手紙と遺書を残したまま他界してしまい、残された子ども2人が母の人生を辿っていくというミステリーです。
真実が明らかになったとき、登場人物と同じく「ヒィ…!」と“引きつった叫び声”をあげてしまいそうになりました。“打ちのめされる結末”を観たいのなら、この映画を観ればいい。そう断言できるくらいに、この映画の“真実”はすさまじいもの。残酷な物語ではありますが、ぜひ多くの方に観てほしいです。
なお、『灼熱の魂』の監督であるドゥニ・ヴィルヌーヴの最新作『メッセージ』が2017年5月19日(金)、『ブレードランナー 2049』が2017年10月27日(金)より公開予定です。今もっとも注目されている監督の1人であるので、ぜひ、その作品群を追ってみてください。
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(文:ヒナタカ)
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