『天気の子』の深すぎる「10」の盲点


3:陽菜が実は“わかっていたこと”とは?
ラブホテルでの食事が示していたこととは?



陽菜の行動をよくよく顧みると、かなり切ない理由で数々の行動を起こしていたのではないか……とも思えます。

例えば、年齢を偽ってまでハンバーガー店(マクドナルド)で働いていたのは、何とかして弟の凪と一緒に暮らそうとしていたから、というのはもちろんですが、自分が人柱に捧げられる運命を知っていたからこそ、今のうちにできる限りのお金を凪に残そうとしていたのかもしれません(この時には夏美から天気の巫女の話を聞いていませんが、潜在的に人柱の運命をわかっていたのかも……)(バイトがクビになってしまったのも本当の年齢がバレたからですよね)。

巫女の力で天気を晴れにするたびに、陽菜が太陽に手をかざしていた、“手のひらを太陽に透かしていた”のは……文字通りに「自分の体がどんどん透けていっていること」を確認しようとしていたからなのかもしれません(小説版ではその言及があります)。

陽菜は「この仕事で自分の役割みたいなものがやっと分かった───ような気がしなくもなくもなくもなくもなくもなくもない」と冗談めかして言っていましたが、晴れにしてたくさんの人に喜んでもらうのは嬉しい、でも人柱になることになることには納得していない、でも納得するしかない、でもやっぱり、でも…それが私の役割であり運命なんだ…でも…という葛藤が、この言い方に表れていたのではないでしょうか。

そして、ラブホテルで帆高と陽菜と凪はからあげクンや焼きそばなどを交換しながら食べていましたが……陽菜にとってこれは人柱に捧げられる前に食べられる最後のご馳走、つまり“最後の晩餐”でもあったのでしょう。

みんなでジャンクフードをおいしそうに食べることは、序盤で帆高が陽菜に奢ってもらったビッグマックを頬張り、「僕の16年の人生で、これが間違いなく、一番おいしい食事だった」と思ったことと“対”になっています。陽菜はその16歳だった帆高よりもさらに若い15歳という年齢で、自分を犠牲する前の、ジャンクフードの最後の晩餐を(おそらくは)心からおいしいと思っていたでしょうから。

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(C)2019「天気の子」製作委員会

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