【完全版】アカデミー賞で起きたこと、徹底分析!
受賞結果を分析してみる。
演技部門は前哨戦通り波乱のない結果になりました。
しかし、個別に見ていくとやはりいろいろな想いが起こる結果でもあります。
主演女優賞
© Pathé Productions Limited and British Broadcasting Corporation 2019
主演女優賞を受賞したレニー・ゼルウィガーは2000年代後半からほぼ開店休業状態で、そこにはメンタル面での問題もあったとのこと。それを乗り越えて演じきった彼女は、劇中のジュディ・ガーランド本人とも重なる部分がありました。
ジュディ・ガーランド自身は『オズの魔法使い』から『スター誕生』など映画史に残る作品に主演しながらもオスカーとは無縁でしたので(娘のライザ・ミネリは受賞あり)の彼女の分まで受賞したと言えるのではないでしょうか?
主演男優賞
(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics
主演男優賞を受賞したのは、ハリウッドきっての曲者ホアキン・フェニックス。『ジョーカー』の演技で、絶対に獲るだろうと思われている中での主演男優賞の受賞。
昨年の『ブラックパンサー』に続くアメコミ映画畑からの出馬でしたが、見事にオスカー像を掴みました。
いろいろキワドイスピーチを繰り返してきた彼ですが、今回はメッセージを込めつつ丁寧な言葉選びを見せ、自分たちは声なき者の代弁者になり得ると語りました。
最後に亡き兄リヴァー・フェニックスの言葉を引用したりと感情を持っていかれるスピーチでした。
これで“ジョーカー”俳優(ジャック・ニコルソン、ヒース・レジャー、ジャレッド・レト)は全員アカデミー賞俳優となりました。
助演男優賞・助演女優賞
助演部門はハリウッドの皆が応援した形になったローラ・ダーンとブラッド・ピット。
ブラッド・ピットに関してはいつか必ず賞を贈りたいと誰もが思っていたので、ついに賞を贈れる演技をしてくれたという気持ちになったことでしょう。
ローラ・ダーンは授賞式翌日(アメリカ時間の2月10日)が誕生日という二重三重におめでたい話になりました。
レニー・ゼルウィガーの『ジュディ虹の彼方に』やブラッド・ピットの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』はハリウッドの影の歴史の部分も描いているので、ある意味ハリウッドの贖罪意識の対象になったかもしれません。
ハリウッドが夕日に包まれて、夢の王国で亡くなっていく時間を体現したキャラクターには思わず感情移入してしまうアカデミー会員も多かったのではないでしょうか?
その他
他の賞に目をやると、近年アカデミー賞の最短コースとも言われるトロント国際映画祭で『ジョーカー』を破って観客賞(=グランプリに相当)を獲った『ジョジョ・ラビット』が脚色賞を受賞。
監督・脚本のタイカ・ワイティティはユダヤ系の人で人種や民族に関しての考えを受賞スピーチでの中に取り込んでいました。
技術部門は『1917命をかけた伝令』と『フォードVSフェラーリ』が正面から四つに組み合う形になりましたね。
ここに関しては今、ハリウッドで一・二を争う撮影の名手ロジャー・ディーキンス(『1917』)の撮影賞以外はどっちに転んでもおかしくない展開で、いちばん予想が難しいところでした。
結果として元音源を評価する録音賞が『1917』に渡り、完成した音源(と言うかレースシーンでのエンジン音)の良さを評価した音響編集賞が『フォードVSフェラーリ』に渡りました。
余談ですが、今回、視覚効果賞を獲ったのは『1917』。
一見するとCGを使っていないように見える映画が『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』や『アベンジャーズ/エンドゲーム』と言った一見してCG特盛映画に勝つという不思議な現象が起きましたね。
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