NHKBSドラマ《新!少年探偵団》「怪人二十面相」演出:佐藤佐吉インタビュー
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NHKBSドラマ《新!少年探偵団》「怪人二十面相」演出:佐藤佐吉インタビュー
明智小五郎を演じる
女優・満島ひかり
―― 第1シリーズ「1925年の明智小五郎」(16)の中で佐藤監督が演出された作品は「心理試験」です。佐藤 僕に話があったとき、既に原文そのままを活かした形で「D坂の殺人事件」(演出:宇野丈良)と「屋根裏の散歩者」(演出:渋江修平)は決まっていて、それで「心理試験」をやってほしいと。乱歩ものって映画やドラマはいっぱい見てますけど、実は小説そのものをちゃんと読んではいなかったので、「心理試験」も初めて読んでみたらめちゃくちゃ面白かった。しかも主演に菅田将暉くんが決まったと。そこで映画ではできないようなことを、ここでやれるのではないかと思いました。
―― テレコムも「太宰治短編小説集」で既に文豪ものは体験済みだったわけですしね。
佐藤 小説の原文を活かすスタイルも、NHKとしては教養的な方向性もあったと思います。現に第1話「D坂の殺人事件」はその色が強かったのですが、僕と渋江さんは異質なものを作ってしまい、結局その方向性で以後が作られることになってしまった(笑)。
《新!少年探偵団》第1回「怪人二十面相」より ©NHK
――「心理試験」の明智小五郎は男として捉えられてない感があって、あくまでも満島ひかりという女優が演じた探偵とでもいいますか、性別を超越している。
佐藤「D坂の殺人事件』の明智小五郎は完全に「男」として撮られていたそうで、一方で僕が「心理試験」の小説を読んだら明智の台詞が限りなく女言葉だったんですよ。ならばこちらは「男も女も両方だ!」って感じでいきましょうと満島さんと打ち合わせしていきました。最初のカットを撮ったときも満島さんから「こんなに女っぽくていいんですか?」って聞かれて、そのくらいのほうがいいですと答えましたね。
―― 音楽に歌謡曲など時代を超越したものを挿入するスタイルもユニークですね。
佐藤 そういえば満島さんと初めて打ち合わせしたときに「オープニングは欧陽菲菲でいきますから」って言ってました(笑)。これはもう直感としか言いようがないですね。菅田くんと嶋田久作さんが絡むシーンでは、絶対に丸山圭子の『どうぞこのまま』をかけると、命がけで決めてました。これを反対されたら辞めようとまで思ってたくらいイメージがありました。
江戸川乱歩と横溝正史の世界
双方を手掛けることの幸せ
―― 第1弾が好評で、第2弾「妖しい愛の物語」(16)では「何者」を、第3弾「満島ひかり×江戸川乱歩」(18)では「お勢登場」を佐藤監督は続投されました。
佐藤「何者」の明智はツナギを着てますけど、どこまで女でいていいのかも試してやろうと(笑)。ちょうど「シリーズ横溝正史短編集」第1弾の『金田一耕助登場!』」(16)の「殺人鬼」と一緒の時期に撮ってましたけど、乱歩と横溝を同時に演出できることの幸せを、世代的にも大いに体感することができましたね。
第3期は明智小五郎を登場させず、満島さんは完全に女性を演じるということで、僕は「お勢登場」か「人でなしの恋」をやりたいと。渋江さんがどうしても「人でなしの恋」をやりたいということで、僕は「お勢登場」をやることになりました。
第3期は満島さんにとってプレッシャーもあったようです。つまりそれまでは男を演じてたのが、ここでは女を演じる。つまりこのシリーズの中で「女」であるということが、ちゃんと芝居で出ないといけない。
―― でも「お勢登場」の悪女ぶりは実に艶めかしくて良かった。
佐藤 明智のライバルといえば怪人二十面相ですが、もともと乱歩はお勢を明智のライバルにしようと考えていたようで、そのことを満島さんに話したら、彼女も役に入りやすくなったみたいで、結果としても素晴らしかったですね。
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