NHKBSドラマ《新!少年探偵団》「怪人二十面相」演出:佐藤佐吉インタビュー
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NHKBSドラマ《新!少年探偵団》「怪人二十面相」演出:佐藤佐吉インタビュー
偶然に偶然が重なっての
映画監督デビュー
―― その後『金髪の草原』(99)で脚本家デビューを飾ることになるわけですね。佐藤 そこに至るまで、いろいろと声がけしてもらえた企画が全然通らなくて、1年半くらいは無収入に近い状況だったのがつらかったですね。犬童さんとも『金髪の草原』以前に何本も企画があった中で、ようやくこれだけが通ったんです。もう35歳になってました。
―― その後『東京ゾンビ』(05)で監督デビューに至った理由は?
佐藤 これがもう本当に偶然なんですけど、当時僕は高円寺に住んでいて、行きつけのマッサージ屋さんで「あの待合室にいる人が、花くまゆうさくさんだよ」ということで紹介されて知り合いになり、そこから『東京ゾンビ』の実写映画化企画に関わることになり、もともと映画の中で徹底的に「笑い」に拘ってみたいという気持ちもあったもので、「僕が監督もさせてくれるのなら脚本を書きます」と言っちゃったんです。
そうしたらプロデューサーから「キャスティングは誰を考えている?」となって、あちらから浅野忠信さんを推されて絶対駄目だろうと思ってオファーしてみたら、何と興味を示してもらえた。
ただし組む相手役は誰か?ってことになって、思わず僕が『極道恐怖大劇場 牛頭GOZU』(03)の脚本をやった直後だったもので、哀川翔さんの名前を挙げてしまった。浅野さんは、哀川さんが出るなら自分も出ると。
そこで哀川さんサイドに相談したら、ご本人は当初ハゲ頭になるのが嫌だっていうのですが、事務所社長でもある奥さんが乗ってくれて、お子さんたちも巻き込んで「ハゲのお父さんもかっこいい」なんて説得してもらえて、それで承諾してもらえた。そして僕は何と監督デビューすることになったわけです(笑)。
既成の映画では成し得ない
NHKドラマの可能性
―― 最近の映画監督作として『黒い乙女 Q&A』二部作(19)があります。小品ではありますが、美少女サスペンス・ホラーの秀作でしたね。
佐藤 自分の中のホラーに対する想いみたいなものをすべて吐き出してやりたいということと、またカメラマンが優秀で、こちらの希望を全部聞いていろいろ調べながらやってくれたので、とても良い画が撮れたし、主演の浅川梨奈さんと北香耶さんもすごく頑張ってくれました。ただ、諸事情で2部作にしないといけなくなったことで、後編のバランスが悪くなってしまった。今でも僕は1本にまとめて発表し直したいと思っています。
―― ご自身の転機となった作品とかございますか。
佐藤 これが先ほども話したTV「谷グチ夫妻」なんですよ。あのときの栢野直樹キャメラマンが企画にすごく乗ってくれまして、小津映画みたいな面白い画をいろいろ撮ってもらえたんです。それまでは自分の考える面白さを出したいと思っていたのが、この作品を機に、素晴らしいスタッフやキャストに自由にやってもらった方が逆に自分が思っているものに近づけるのではないかと。そう思い始めたときに「心理試験」の話が来たんです。
いずれにしましても、既成の映画ではできないことが「谷グチ夫妻」でも、一連の乱歩シリーズでも実現できている。そういったところでも、NHKのドラマ制作の可能性みたいなものをしかと感じたりしていますし、今回の「怪人二十面相」にもそういった面白さみたいなものが活かされていることを確信しています。ぜひお楽しみにご覧になってみてください!
(取材・文:増當竜也)
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