映画コラム

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2021年04月06日

『BLUE/ブルー』レビュー:3人の男とひとりの女が織り成す青春ボクシング群像映画、文字通りの傑作!

『BLUE/ブルー』レビュー:3人の男とひとりの女が織り成す青春ボクシング群像映画、文字通りの傑作!



■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

『ヒメアノール』(16)『犬猿』(18)などで知られる吉田恵輔監督による青春ボクシング群像映画の、まさに宣伝などのキャッチコピーさながらの、偽りのない傑作。

何せ中学生の頃からボクシングを習ってきたというキャリア30年の吉田監督が、オリジナル脚本に加えてボクシング殺陣指導まで自身で務めているだけあって、試合シーンのみならず練習風景などのさりげないリアリティは、そんじょそこらのものとはレベルが違います。



もっとも本作はボクシングに魅せられた男3人の心情こそを露にしていくものであり、そのために必須のリアリズムが見事に画面に定着している優れものであるともいえるでしょう。

ほとんど勝利したことがないにも関わらず日々の努力を怠らず、また後輩の育成にも秀でた瓜田(松山ケンイチ)の達観した佇まい、彼の幼馴染・知佳(木村文乃)の恋人で日本チャンピオン目前の小川(東出昌大)の精悍さ、そして女にもてたいがために“ボクシング風”をめざす檜崎(柄本時生)の心境の変化に伴う顔つきの変貌など、それぞれが柄にあった好演を示してくれています。







さらにこの手の作品としては驚くほどに、彼らを見守る千佳=女性の立場が大きく魅力的に描かれていて、それが映画そのものの流れまで上手く機能させていくあたりも絶品といえます。

“BLUE”というシンプルすぎるタイトルも、いざ見終えると「これしかないだろう!」といった青春映画ならではの青きカタルシスに包まれながら痛感させられていくこと必至。

エンドタイトルを飾る竹原ピストルの「きーぷ、うぉーきんぐ!」も、昔も今も日本映画に顕著なタイアップ風のお仕着せ主題歌とは一線を画した、実に作品世界に見合った優れモノでした。

 (文:増當竜也)

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(C)2021「BLUE/ブルー」製作委員会

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