映画コラム

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2021年04月17日

『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』レビュー:怪獣映画の革命的平成三部作の総括!

『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』レビュー:怪獣映画の革命的平成三部作の総括!


本格的怪獣映画の復権を
目指した平成ガメラ



1980年代に入って、まず徳間大映は佐藤純彌監督『未完の対局』(82)で戦後初の日中合作映画をものにしました。
(これには1976年に製作した『君よ憤怒の河を渉れ』が中国で公開されるや、何と10億人が見るという未曽有の大ヒットとなったこととも関係しています)

これ以降、徳間大映は井筒和幸監督『犬死にせしもの』(86)、岡本喜八監督『ジャズ大名』(86)、相米慎二監督『光る女』(87)、崔洋一監督『Aサインデイズ』(89)、周防正行監督『ファンシイダンス』(89)『シコふんじゃった。』(91)など気鋭の監督を起用した意欲作を世に発表。

同時に佐藤監督の国際的超大作『敦煌』(88)『おろしや国酔夢譚』(92)を成功させ、さらには黒澤明監督『まあだだよ』(93)を実現させるなど、当時の徳間大映の勢いに裏付けするに足る快進撃を続けていました。『新宿黒社会 チャイナマフィア戦争』(95)で三池崇史監督を本格劇場用映画デビューさせたものも徳間大映の功績です。

こうした状況の中、当時好評を博していた東宝の平成ゴジラ・シリーズに対して、徳間大映の中でもガメラ復活の気運が高まっていきます。

いくつかのプロジェクトが立案されていく中、ようやく最終的に1995年の『ガメラ 大怪獣空中決戦』として実を結びました。

監督の金子修介、特技監督の樋口真嗣、脚本の伊藤和典、ともに日本の怪獣映画の洗礼を受けて育った世代であり、ここでは本格的怪獣映画の復活を堂々と掲げつつ、製作開始。

もし現実に怪獣が出現したら日本国内はどのような状況を呈するか?というリアル・シミュレーションに基づくストーリー展開は、後の『シン・ゴジラ』(16)の先駆けともなっています。

同時に、これまで見たことのない秀逸なアングルの特撮ショットの数々、そして怪獣映画の醍醐味とは? という基本理念にのっとった演出の妙。

こうした三位一体の効果に加え、ヒロインを務めた中山忍の、今見直すとまさに1990年代を象徴する映画ヒロインともいえる凛とした姿勢や存在感(彼女は本作でさまざまな映画賞を受賞)が秀逸。

さらにはガメラと心を通わせる巫女的存在を担う藤谷文子の神秘性、その後のシリーズになくてはならない顔となっていく螢雪次朗、嫌みな官僚を喜々として演じる本田博太郎などなど、キャストの好演も忘れられないものがありました。

ガメラそのものの定義は昭和時代からかなり変わり、この世界は亀という生物が存在しないパラレルワールドとなり(つまり平成ガメラは巨大な亀ではない)、一方では子どもの味方というニュアンスをさりげなく継承させたあたりは従来のファンに好評で、特撮的にも昭和時代の象徴であった回転ジェット噴射飛行を見せてくれたのも嬉しい限りでした。

『ガメラ 大怪獣空中決戦』は従来の特撮&怪獣映画ファンはもとより映画ファン、特に日頃日本映画を見ない洋画ファンから「ようやく邦画にもエンタメ快作が登場した!」とでもいった支持を得る事に成功。

かくして二度目の挑戦となったのが『ガメラ2 レギオン襲来』(96)で、ここでは前作のリアル・シミュレーション感覚を自衛隊の動向などに深く絞りつつ、怪獣映画の要素に必須とされる戦争映画としての醍醐味を強調させていくものでした。

一方で水野美紀扮する金子映画ならではのファンタジー・オタク・ヒロインの参加によって、作品の神秘性はより高まっています。

また前作では昭和ガメラ・シリーズに多く出演した本郷功次郎、昭和ゴジラ・シリーズの久保明を特別出演させていましたが、、ここではTV特撮スパイ・アクションドラマ『スパイキャッチャーJ3』(65~66)や松竹特撮映画『昆虫大戦争』(68)主演俳優でもあるベテラン川津祐介も登場し、これまたファンを感涙させてくれました(彼は第3作にも出演しています)

本作は第17回日本SF大賞や第28回星雲賞映画演劇部門・メディア部門賞を受賞。特に前者は映画として初の受賞ということでSFファンの間でも大いに話題になりました。

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