『葵ちゃんはやらせてくれない』レビュー:さわやかでHで切ない青春&音楽&時間SFファンタジー快作!
『葵ちゃんはやらせてくれない』レビュー:さわやかでHで切ない青春&音楽&時間SFファンタジー快作!
■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT
※緊急事態宣言により公開延期されていた『葵ちゃんはやらせてくれない』の公開日が決定しました。
名古屋シネマスコーレ:5月15日(土)~21日(金)まで1週間限定公開
シネマート新宿:6月11日(金)~17日(木)まで1週間限定上映
大阪シアターセブン:順次上映
タイトルから思わずHな映画を想像してしまった方、決して間違ってはいません。
確かにそういうシーンもあります(一応R-15指定です)。
しかし、「やらせて」といった響きから連想されるような、そんな下品な印象は微塵もありません。
逆にその言葉の響きは実に自然体として観客たるこちらの胸に届き、今の若い男女のSEXに対する屈託のなさを好もしく象徴してくれているようにすら思えます。
何よりもこの作品、自殺した先輩・川下さん(森岡龍)が後輩の葵ちゃん(小槙まこ)とHしたいがために幽霊としてこの世に現れ、後輩の今西君(松嵜翔平)を巻き込んで、彼がまだ生きていた大学時代にタイムリープして作戦決行!(やれるか否か?)というコミカルな時間SFファンタジーなのです。
おまけにミュージカル風音楽映画としての情緒があり、さらには主人公らは大学の映画研究会出身で、10年前には『ゾンビバンド』なる自主映画を作っていたという設定が、生と死のモチーフのみならず「青春なんてゾンビみたいなものさ」とでもいった本作の象徴的存在としても見事にマッチングしています(ついでに、ゾンビ映画への愛も語られます)。
さらには、そういったキャメラ・アイだからこそ掬い取り得た葵ちゃん=小槙まこの比類なき可愛らしさ!
まさにゴダールの名言に倣い、「少女とキャメラさえあれば(本当は、あと自転車も)映画は撮れる」といった映画の定説を実証するに足る、映画的にも抒情溢れる可愛らしさなのでした。
現代のシネフィルから圧倒的支持を得続け、昨年も秀作『れいこいるか』を放ったばかりのいまおかしんじ監督ですが、今回さらなる男女の青春群像が織り成す青臭さやアホらしさ、情けなさなどから導かれるさわやかで優しくもピュアな切なさを見事に醸し出してくれています。
ストーリー展開にもちょっとしたひねりが加えられていて、始まって30分ほど過ぎたあたりで「え?」「そう来たか!」といったサプライズもあります。
細かい説明はないもののタイムパラドックスの設定もさりげなく考慮されていて、なるほどと唸らされるものがありました。
伝説のシンガーソングライター三上寛の特別出演も、またサプライズで嬉しい限り。
小品ながらもそこらのメジャーなど足元にも及ばない、実に至れり尽くせりの映画的サービスに満ち溢れながら青春の切ない息吹を確実に体感させてくれる快作です!
(文:増當竜也)
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