『くれなずめ』レビュー:男たちの面白うてやがて切なき“バカ騒ぎ”青春群像映画の快作!
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『くれなずめ』レビュー:男たちの面白うてやがて切なき“バカ騒ぎ”青春群像映画の快作!
■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT
『佐々木、イン、マイマイン』(20)『あの頃。』(21)など、このところ若い男たちがバカ騒ぎしていた自分たちの“あの頃”を思い起こしていく青春映画が増えてきているような感がありますが、ひとときは青春映画=女の子映画みたいなノリが主流だった日本の映画界の波の中、それはそれでよろしき傾向かとは思います。
本作も友人の結婚式で久々に集まった高校時代の友人6人が、披露宴(どうやらここで赤フンダンスを踊って大滑りした模様!?)から2次会へ行く道のりの中、かつての出来事をそれぞれ回想していくもの。
ザクっと言ってしまうと、高校や大学時代にくだらないことでひとしきり盛り上がった後、深夜の友人の部屋で夜中にふと「なあ、お前って、誰か好きな子……いる?」といった、そんなやりとりを交わしてしまうみたいな、切なくもかけがえのない思い出ばかり。
……ではあるのですが、やがて仲間のひとり吉尾(成田凌)が
「もしかして俺って、●△□……」
「わー!!!!!!(それ以上言っちゃダメ!)」
果たして、これは一体どういうことなのか?
まあ、特にミステリってほどでもないのですが(見てるとすぐにわかります)、それは面白うてやがて切なき男たちのファンダンゴの中、クライマックスを一段とバカバカしくも壮大な(でも、もしかしたら涙も?)スケールで包み込む要因にもなっていくのでありました。
成田凌を筆頭に高良健吾、若葉竜也、浜野謙太、藤原季節、目次立樹といった若手有望株がそれぞれ柄にあった個性を好もしく発揮しながら、青春群像劇としての妙を堪能させてくれているのも頼もしい限り。
男性陣以外でも、前田敦子のキャラクターがなかなか強烈で、映画のある部分は全部彼女がかっさらってしまうといっても過言ではないほどのインパクト!
現代青春映画の旗手のひとりで、特に『私たちのハァハァ』(15)『君が君で君だ』(18)『#ハンド全力』(20)など性別問わずの群像劇で抜群の冴えを示す(今年公開されたばかりの『バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~』も、ある意味相当数の青春群像映画でしたね)松居大悟監督ならではの、どのキャラクターにも等しく寄せる優しいキャメラアイは今回も俄然健在。
彼の出世作でもあった『男子高校生の日常』(13)からさらに飛躍した、男たちのしょーなさから醸し出される可笑しみと哀しみが、さらに目いっぱい繰り広げられていきます。
それにしても、本作の場合およそ10年余前の高校時代を舞台設定しているわけですが、それこそ昭和世代のこちらが見ても「全然変わってないじゃん」と呆れつつも微笑ましく思えてしまうって、ホント、男っていつの時代も……ってことなのでしょうかね?
(文:増當竜也)
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