タイム・ループへ誘う珠玉映画8選
現在、同じ“今日”を幾度となく繰り返し続ける若い男女の受難を描いたコメディ映画『パーム・スプリングス』が公開中。
殺し屋集団から命を奪われる日々を無限に繰り返すサスペンス映画『コンティニュー』も、間もなく公開予定です。
タイムトラベル映画の中でも時間の繰り返し=ループを描いたものは、さほど予算をかけなくてもアイデア次第でいかようにも面白くできることから多くの映画人が挑戦し続けてきている分野でもあります。
今回はそんなタイム・ループ映画の中から、代表的な作品をいくつか挙げていくことにしましょう。
戦闘と死を幾度も繰り返す
『オール・ユー・ニード・トゥ・キル』(14)
謎の侵略生命体ギタイとの未来戦争の中、最前線に送り込まれて5分で死んでしまったケイジ少佐(トム・クルーズ)が、その瞬間に出撃前夜へと時間が遡り、戦闘と死の過酷な無限ループを繰り返していくうちに最強の兵士と化していきます。
原作が桜坂洋の漫画“All You Need Is Kill”ということもあって、日本でも大いに話題を集めたSFバトル超大作。
『ラストサムライ』(03)以降、現代日本のアートやカルチュアにも目配せし続けるトム・クルーズならではの目利きの良さを象徴する作品でもあるともいえるでしょう。
列車爆破犯人を追い求める
『ミッション:8ミニッツ』(11)
列車爆破事件の犯人を探し出すために、軍が開発した特殊プログラム装置を用いて爆発8分前の乗客の意識内に入り込み、事件の真相を追いかけていくSFサスペンス映画。
『月に囚われた男』(09)でデビューして久々の正統派宇宙SFとして注目を集めたダンカン・ジョーンズ監督がハリウッドに招かれ、時間SFに挑戦した意欲作です。
毎回8分のタイムリミットと、それを過ぎると爆死してしまう恐怖に耐えながら遂行しようとする主人公(ジェイク・ギレンホール)のミッションに、いつしかラブ・ストーリーが同時進行していくあたりも妙味。
タイム・ループしながら恋人探し!
『アバウト・タイム 愛おしい時間について』(13)
何をやっても冴えないものの、実はタイムトラベルの能力を持つ一族の血を引く青年ティム(ドーナル・グリーソン)が、恋人を得るために何度も過去へ赴きながら時間をやり直していきますが、そのうちに過去を変えることはできないものの未来を決めることはできることに気づいていくという、リチャード・カーティス監督のSF青春ラブストーリー。
人生において本当の幸せとは何か? をSF設定の中から考えさせてくれる作品です。恋愛要素だけでなく、家族の温もりみたいなところにも焦点を当てているところも好評価。
ループ・ラブコメの王道
『恋はデ・ジャブ』(93)
2月2日に開催されるお祭りを撮影しに行った軽薄なニヒリストでもあるテレビ天気予報士フィル(ビル・マーレイ)やプロデューサー(アンディ・マクダウェル)ら一行が、吹雪で足止めされて一泊して以来、延々と2月2日が繰り返されていくハロルド・ライミス監督のロマンティック・ラブ・コメディ。
前半はタイム・ループを利用してやりたい放題やっていた主人公が、後半は愛に目覚めてシックなムードになっていくあたりも踏まえて、主演ビル・マーレィの個性が最大限に発揮された快作ともいえるでしょう。
日本のタイム・ループ代表!
『時をかける少女』(06)
日本代表のタイム・ループSFといえば、やはり筒井康隆の同名小説を映画化した一連の『時をかける少女』になるかと思われます。
特に細田守監督のアニメーション映画版は、タイムリープの力に目覚めた女子高生ヒロインが軽い気持ちで幾度も過去を行き来しながら、自分にとって都合の良い世界を構築していこうとしていくうちに、とんだ青春の悲劇に直面していくことになるのでした。
本作のジュヴナイル要素がアニメ・ファン以外のライトな映画ファンにも大きく受け入れられ、細田監督の出世作にもなりました。
ユニークな舞台劇の映画化
『サマータイムマシン・ブルース』(05)
日本映画のタイム・ループものの中では、こちらも会心作。
とある大学のSF研究会の真夏の部室を舞台に、なぜか室内にあったタイムマシンを使って、本日エアコンのリモコンが壊れたので、昨日に戻ってまだ壊れてない状態のリモコンを取ってこようとしたことから、だんだんとてつもなくくだらなくもアホな事態に見舞われていくドタバタ青春コメディ。
「ヨーロッパ企画」上田誠の舞台劇を原作に、『踊る大捜査線』シリーズの本広克行監督が映画化した、これぞアイデア勝負の快作です。
ビッチな女子大生の受難
『ハッピー・デス・デイ』(17)
誕生日の朝、見知らう男のベッドの中で目覚めた自己チューでビッチな女子大生ツリー(ジェシカ・ローズ)がその日の夜に殺人鬼に殺されるも、その瞬間に誕生日の朝に戻っており、その後もずっと殺人鬼に殺されてはその日の朝に戻る悪夢のループを延々繰り返しながら、そのうち殺人鬼に立ち向かってループから逃れようとしていきます。
時間ループの設定をスリリングながらも面白可笑しく描いたサスペンス・コメディとして世界的に話題となり、続編の『ハッピー・デス・デイ2U』(19)も作られました。
監督は今年公開された『ザ・スイッチ』(20)などでも知られ、実は名作TVドラマ「大草原の小さな家」主演マイケル・ランドンの実子でもあるクリストファー・ランドン。
民謡の響きが不気味な
『ココディ・ココダ』(19)
こちらはファンタスティック映画のメッカでもあるスペインのシッチェス・カタロニア国際映画祭で話題を集めたスウェーデン&デンマーク合作のホラー映画。
愛娘を亡くした夫婦がお互いの関係を修復すべくキャンプに出掛けたところ、そこを3人のサイコパスと人食い犬に襲われて惨殺されるも、時間ループによってこの惨劇を幾度も繰りかえすはめになるというもの。
タイトル“KOKO-DI KOKO-DA”とは鶏の鳴き声、いわゆるコケコッコーをあらわす言葉で、これを歌詞に用いたフランス民謡が本作のテーマ曲になっていて、そのメロディが不気味なまでに鑑賞後もずっと脳裏にこびりついて離れなくなる作品でもあります。
(文:増當竜也)
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