(C)2021「漁港の肉子ちゃん」製作委員会
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アニメ

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2021年06月11日

『漁港の肉子ちゃん』見逃し厳禁のものすごいアニメ映画だ!と驚愕&感動した「5つ」の理由を全力解説

『漁港の肉子ちゃん』見逃し厳禁のものすごいアニメ映画だ!と驚愕&感動した「5つ」の理由を全力解説


4:明石家さんまが好きな人にも、苦手な人にもおすすめできる理由

本作が原作としているのは、第152回直木賞を受賞し累計発行部数35万部を超えている、西加奈子による同名のベストセラー小説です。誰もが知る明石家さんまがこの原作に惚れ込み、プロデュースを手掛けていることも、宣伝として大きく打ち出されています。

明石家さんまは企画の立ち上げだけでなく作品そのものに関わっており、例えば肉子ちゃんがつまらないギャグを言った時に「寒っ!クーラーの温度下げたん誰?」と追加でボケるといった「大阪的なお笑い」のシーンの提案もしていたそうです。しかし、それ以外で「明石家さんまらしさ」を感じるところはほとんどなく、好きな作品を自身の「色」に染めすぎない、全く押し付けがましさがない内容に仕上がっていることも、本作の美点でしょう。



そのことは明石家さんまも自覚的で、「私が担当したのは企画・プロデュースです。作品づくりを『寄せ鍋』に例えると、僕は土鍋とガスコンロを用意させていただく係です。そこにスタッフのみなさん、声優さん、タレントさんたちが、色々な具材を持ち寄ってくれて、プロデューサーである私の作業はアクを取るだけという…。今回、しみじみそう思いました。アクはきれいに取れていますので、ご安心ください」と、あくまで自分は「裏方のアク抜き係」であることを強調したコメントをしたりもしているのです。

それでいて、明石家さんまは「僕は昔から親子の愛情の物語に弱いんです」「肉子ちゃんみたいに、いつもゲラゲラ笑っている陽気でちょっとエエ加減なふくよかなおばちゃんは、やっぱり楽しいし、かなり思い入れがあります」などと原作が好きな理由、リスペクトも存分に語っています。前述した「大阪的なお笑い」の要素も肉子ちゃんというキャラにマッチしている、しっかりプラスとして働いているものでした。



また、明石家さんまは前述したボイスキャストのキャスティングや演技指導にも関わっています。肉子ちゃん役の大竹しのぶは、「今回のお話をいただいて、プロデューサーの方のお名前を聞いたときは、エーッと思いました。 私ですか?みたいな」と、そりゃ元夫なんだからそうなるだろなコメントをしていて大笑いしてしまったのですが、実際の声の収録時に明石家さんまは大阪弁の一つ一つの細かいイントネーションまで丁寧に指導しており、良い収録現場だったと大竹しのぶも振り返っていたのだそうです。

そのボイスキャストの演技が、単なる客寄せ的な宣伝だけでない、作品をクオリティを一段も二段も押し上げているのですから、明石家さんまはプロデューサーの仕事を過不足なく、見事にこなしていると断言していいでしょう。そのため、明石家さんまが好きだという方だけなく、苦手だという方にもおすすめできるのです。



余談ですが、明石家さんまが長男とIMALUの親権を大竹しのぶが持つかたちで離婚したという事実は、映画で描かれていた「母子家庭」を連想させ、そこには明石家さんまなりの「罪悪感」も反映されているのでは……と勝手な邪推もしてしまいました。「普通が一番ええのやで」という肉子ちゃんの口癖も、明石家さんまの座右の銘「生きてるだけで丸儲け」に少し通じているようにも思えます。明石家さんまのアクの強い芸風が全くノイズにならない一方で、原作に惚れ込みプロデュースを務めるだけの理由の「深読み」ができることも、本作の味わい深いところです。

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