2021年06月29日

『ロックダウン・ホテル 死・霊・感・染』レビュー:釈由美子、大健闘!のパンデミック・ホラー

『ロックダウン・ホテル 死・霊・感・染』レビュー:釈由美子、大健闘!のパンデミック・ホラー


■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

「感染」という言葉を聞いただけでビクッとなって久しい昨今ではありますが、本作はそんなコロナ禍が始まる前の2019年1月にカナダで撮影されていたもの。

まさかその1年後、本当に世界的パンデミックが起きようとは、スタッフもキャストも想像だにしていなかったことでしょう。

本作の構成はほぼ起承転結の韻を踏んでいて、「起」の部分はホテル内でのパンデミック発生と、その数時間前とをカットバックさせながら、見る側の興味が持続するように腐心しています。

続いて「承」の部分ではパンデミックの前兆から始まりまで、そして「転」「結」は……と、これ以上記すとネタバレになりますので避けたいところ。



シーンの大半は外界を見せることなくホテルの中、主に部屋と廊下で繰り広げられていきますが、インディペンデント的な制作体制として割かしそれが功を奏している感もあります。

「釈由美子の世界進出第1弾」という煽り文句ですが、実際この映画のファースト・カットは彼女から始まり、エンド・クレジットのビリングもカロライナ・バルトチャクに続く2番手、つまりはWヒロインのひとりとして大健闘!

カロライナ・バルトチャックはDV夫と不仲ながらも愛娘がいるために我慢を強いられている妻で、釈由美子はこれまた夫から逃れて遠い異国で子どもを産もうとしている妊婦と、ドダメ男に翻弄されてきたふたりの女の身上が本作の裏テーマになっているかのようでもあります。

パンデミック・シーンはグロテスクな特殊メイクを駆使しながら進みますが、この手の作品としては意外なまでにこけおどしショッカー演出を抑えつつ、惨状を俳優たちの演技できちっと魅せようという、自身が俳優でもあるフランチェスコ・ジャンニーニ監督の意欲が汲み取れます。

(ブラッド・イン・ザ・スノー映画祭では最優秀監督賞を受賞)

あと、きっとこの監督はスタンリー・キューブリック作品が好きなのだろうと予想しましたが、それがなぜかは実際にご覧になってみてください。

釈由美子に関しては、ほんわかグラビア・アイドル時代から一転して『修羅雪姫』(01)での壮絶ソード・アクション(アクション監督はドニー・イェン!)、『ゴジラ×メカゴジラ』(02)のメカゴジラ・パイロットの勇姿、TV&映画版『スカイハイ』(03~04)の「怨みの門」番人イズコと、実にファンタ・ジャンルが似合う稀有な日本人女優として、当時からずっと期待を寄せていた存在でした。

現実的にはなかなかそうしたジャンルが成立しづらい日本の映画業界事情ゆえ、資質を活かす機会も減ってきてはいましたが(2019年にTV「仮面ライダージオウ」にアナザー・キバ役で出てくれたときは歓喜したものです)、ここに来て海外に活路を見出すという挑戦は大いに買いたいところ。

次はまた『修羅雪姫』ばりのアクション映画とかやってくれないものかと、個人的には願ってやみません。

(文:増當竜也)

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