「青天を衝け」パリ編、感想・解説集|第22-25話について、ネタバレあり
第25話のあらすじ
帰国した篤太夫(吉沢 亮)は、横浜で杉浦(志尊 淳)や福地(犬飼貴丈)らと再会。幕府が薩長に敗れた経緯や、慶喜(草彅 剛)や幕臣の動向を聞かされる。さらに、恵十郎(波岡一喜)と虎之助(萩原 護)から、成一郎(高良健吾)、惇忠(田辺誠一)、平九郎(岡田健史)のその後を知らされる。成一郎らは彰義隊を結成するもすぐに分裂し、振武軍(しんぶぐん)として新政府軍と戦うが敗戦。激闘の中、平九郎の行方は分からなくなり、成一郎は箱館へ向かったという。頭の中が整理できない中、篤太夫は故郷・血洗島へ戻る。
第25話の感想
「なあ、兄い。俺たちは、何のために生まれてきたんだんべな」長七郎の言葉が、虚しく宙に放り出される。その暗い声音に、私たち視聴者も力なく考えることになるかもしれない。自分たちは何のために生まれたのか。何を成し遂げるためにこの世に生を受けたのか。そもそも意味なんて探そうとすること自体、間違えているのか。
栄一がパリから帰国した。これまで、日本とは海を挟んだ遠い地で、仲間から届く文により我が国の情勢を知ることしかできなかった栄一たち。ようやく故郷の地を踏み、残った仲間たちから直接に聞くことになる。この国に何が起こってしまったのかを。
栄一の心を最も強く揺さぶったのは、平九郎の死だった。戦により奪われた大切な命。いや、「奪われた」のではない。彼は敵の銃弾に撃たれながらも、最後は自力で切腹した。背を向けて逃げる方が人としての尊厳が死ぬとでも言わんばかりに、自死して見せたのだ。栄一とともに、やるせない気持ちに陥った視聴者の方も多いだろう。
ともに戦った喜作と惇忠は息も絶え絶えに生き残った。喜作は現在の函館・五稜郭に身を移し未だ戦いの手を緩めていない。「こうなった以上、もうお互いに生きて会うことはないだろう」と文を出した栄一。もう二人が以前のように肩を並べ、志をともにすることはないのだろうか……。
栄一も喜作も惇忠も長七郎も、それぞれがそれぞれの正義を胸に、すべきことをやっている。それがたとえ時にはぶつかり合うことになろうとも、再び重なり合う瞬間を願い動いているのだ。生き残った者には、生き残った者にしかできないことがある。
「新しい世のために、できることはきっとある」
次回26話は9月12日の放送。またしばらく、栄一たちとはお別れだ。
(文:北村有)
【関連記事】「青天を衝け」血洗島・青春編 感想集はこちら
【関連記事】「青天を衝け」一橋家臣編 感想集はこちら
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
©NHK