『フリー・ガイ』レビュー:自我が芽生えて自由に動き出したゲームのモブキャラをめぐる、笑いとスリルと超弩級スペクタクル!
『フリー・ガイ』レビュー:自我が芽生えて自由に動き出したゲームのモブキャラをめぐる、笑いとスリルと超弩級スペクタクル!
■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT
さほど前情報を入れずに鑑賞したこともあって、そのアイデアの秀逸さには大いに唸らされました。
ゲームに必須ともいえるN.P.C.(モブ)キャラは、プレイヤーにとって便利でもあり邪魔でもありという、時と場合によって大いに印象が変わってしまう存在ではありますが、そのモブキャラがもし自分で知能を身に着けて、勝手にゲーム内を動き回るようになったとしたら?
何ともそんな発想があったか!と、思わず快哉を叫びたくなるほどのこの作品、まずは本作の主人公で、オンラインアクションゲーム「フリーシティ」モブキャラで生真面目な銀行員窓口係のガイに扮するライアン・レイノルズが『デッドプール』とは全然異なる「いい人すぎる」キャラクターを飄々と好演!
またゲーム内と現実世界の区別をスクリーンサイズや映像の色味などであからさまにつけるのではなく、実に自然な流れで両者を区分けしていて、それでいて混乱することが皆無というのが、実に秀逸です。
監督は『ナイト・ミュージアム』シリーズのショーン・レヴィ。ここでも現実と非現実の境目をよく見極めた演出が徹底しているように思えてなりませんでした。
一方で「フリーシティ2」で設けるべく「フリーシティ」を封印しようとするゲーム会社の悪徳ワンマン社長を演じているのが『マイティ・ソー バトルロイヤル』の監督で『ジョジョ・ラビット』では監督・脚本及びヒトラーも怪演した個性派俳優でもあるタイカ・ワイティティ!
今回はいかにも大仰なパフォーマンスでその悪漢ぶりを際立たせていますが、そこにうさん臭さが微塵もないのが(キャラとしてのうさん臭さは大いに醸し出しつつ!)素敵なところです。
ゲームの中でなぜか勝手に自我が芽生えてしまったことの理由や最終的なオチのつけ方などもなるほど周到に用意されていて、いつしかゲーム特有のワクワク感と映画ならではのスペクタクルな醍醐味が合わさっていくことで、この上ないカタルシスをクライマックスで味わえること必至!
それにしても本作以外に目を向けても、2021年8月だけで『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』や『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』など、ようやくハリウッドの大作映画が日本全国の映画館に次々とお目見えしてくれるようになり、何やら映画本来の楽しみの基本みたいなものを久々に満喫させてもらえている気分です。
そんな今だからこそ、これからも感染にはくれぐれもお気をつけていただきながら(マスクもウレタンや布製ではなく、不織布にしましょうね)、映画館ならではの映画鑑賞の醍醐味をとくと楽しんでいただきたいものです。
(文:増當竜也)
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