俳優・映画人コラム
俳優・重岡大毅の魅力:ただのアイドルじゃない、知られざる憑依力
俳優・重岡大毅の魅力:ただのアイドルじゃない、知られざる憑依力
「知らなくていいコト」(C)日本テレビ
TBSテレビ 金曜ドラマ「#家族募集します」にて、ゴールデン・プライム帯の連続ドラマ初主演を務める重岡大毅。今、彼の熱い演技に反響が集まっている。
ジャニーズきっての演技派俳優といえば二宮和也。ドラマ「流星の絆」では三兄弟の長男・有明功一として俳優としての功績を残した。コロナ禍に入りまもなく、SNSにて「#再放送希望ドラマ」というハッシュタグでが発生してすぐにトレンド入りした作品でもあるほど、多くの人に愛される作品だ。
また、第44回日本アカデミー賞で数多くの賞を受賞した、映画『浅田家!』(20)では現在も活躍中の写真家・浅田政志氏を見事演じ切った。
また、重岡大毅について語る前にもう一人、挙げておきたいのが風間俊介。先日、映画『鳩の撃退法』を鑑賞したのだが、あの藤原竜也に負けず劣らずの存在感を醸し出していた。ジャニーズに所属していながら”歌って踊れる”というイメージがゼロという異色さも相まって、個性派俳優としてこれからのさらなる活躍に期待したい。
他、ジャニーズには容姿・歌唱力・ダンスパフォーマンスのみならず俳優としても活躍するメンバーが多々在籍しているが、個人的に最も注目しているのがジャニーズWESTの重岡大毅。本記事では現在〜過去の出演作3作品と照らし合わせながら、彼の魅力に迫っていく。
思わず涙誘われる「#家族募集します」
現在放送中のTBSテレビ 金曜ドラマ「#家族募集します」。
重岡大毅をはじめ、「コントが始まる」では姉弟役で出演していた木村文乃と仲野太賀、『愛がなんだ』で若手女優の仲間入りを果たした岸井ゆきのなど豪華出演陣と、シングルマザー・ファザーが一つ屋根の下で暮らす”新しい家族の形”というなんとも令和らしいアットホームなストーリーが注目を集めている。
赤城俊平(重岡大毅)は、絵本作家である妻・みどり(山本美月)をヨーロッパでの取材中の事故で亡くしてしまう。ヨーロッパ行きを進めたのは紛れもなく自分自身だということ、また、5歳の息子である陽(佐藤遙灯)にその事実を打ち明けることができず、一人悶々と、そして粛々と”シングルファーザー”としての日々を送っていた。
そんな中、幼馴染の小山内蒼介(仲野太賀)と偶然の再会を果たし、ひょんなことから蒼介が働くお好み焼き屋・にじやの2階住居部分でシングルマザーである桃田礼(木村文乃)、横瀬めいく(岸井ゆきの)との共同生活がはじまるのだが、にじやでゆくゆくは”家族”となっていくメンバーたちに背中を押されて、人として、そして父として着実に成長していく姿が愛おしい。特に第3話、にじやの屋上で涙を堪えながら陽に真実を打ち明けるシーンは見ている誰もが涙したのではないかと思う。情に厚く愛情深い、ひたむきに今を生きる俊平の姿は必見だ。
重岡大毅にとっての「#家族募集します」、間違いなく圧倒的演技派俳優として認知される作品になることだろう。
ムカつくほどに怪演、「知らなくていいコト」
今回、「#家族募集します」の重岡大毅に期待していた理由が、日本テレビ2020年1月期水曜ドラマ「知らなくていいコト」で主演・真壁ケイト(吉高由里子)の同僚であり婚約者(後に婚約破棄をし、元恋人となるが)・野中春樹を怪演していたことだった。本ドラマを見ていた人はあの重岡大毅の姿が未だに頭にこびりついて離れないのではと思っているのは私だけだろうか。
ドラマの序盤では、ケイトのよき理解者、そして婚約者として好青年を演じているのだが、ケイトが殺人犯の娘という事実が判明してから態度が豹変し一方的に別れを告げる。にも関わらず、ケイトの元同僚であり元恋人・尾高由一郎(柄本佑)とケイトとの元サヤ&不倫関係に謎に嫉妬し、どんどん闇落ちしていく姿が本当に憎く、最上級に鬱陶しい。
「自分から別れを告げたくせに、その元カノと元カレがどうこうなることに対してなぜこの人はイライラしているの???」と、ドラマの中の人物だとわかっていながらもイライラしていたことをよく覚えている。
「芝居が上手い」と評価するポイントは人それぞれだが、私は演じている姿を見て本気でムカついたら負けだと思っている。インターネット上でも野中演じる重岡大毅の評判はそれはもう最悪で、多くの人が気付かぬうちに重岡大毅の魅力にハマっていたのだろう。かくいう私もその一人だ。
なによりも、このドラマを見ていなければきっと重岡大毅の俳優としての魅力には気付けていなかったので、当時リアルタイムで見ていない方にもぜひ見ていただきたい。
純粋な眼差しに心打たれる『溺れるナイフ』
なにかと話題の菅田将暉、小松菜奈ペアがW主演を務める『溺れるナイフ』(16)。
重岡大毅は夏芽(小松菜奈)に思いを寄せる同級生・大友を熱演。撮影当時23歳だった重岡大毅が中学〜高校生役を演じるのはさすがに無理があるのではないかと思っていたが、いい意味でジャニーズらしからぬ芋っぽさや童顔が相まってなかなかのハマり役となっていた。
たしか私が重岡大毅の芝居をちゃんと見たのは本作品が初めてだったのだが、方言丸出しなセリフや、真っ直ぐすぎる夏芽への思い、純粋無垢な瞳…その姿は頼りなさがあるものの確実に真のヒーローだった。
どことなく『愛がなんだ』(18)のナカハラを彷彿とさせる、だれもが応援したくなる、そんな役どころ。ひと夏の青春を描いた本作品、一度見たことがある人もそうでない人も、本格的な秋がはじまる前に観てみてはいかがだろうか。
俳優としての重岡大毅を、もっと知ってほしい
「知らなくていいコト」の”闇落ち野中”イメージが定着していると思いきや、「#家族募集します」ではすっかり愛情深いお父さんを演じきっている重岡大毅。どんな役にも憑依するその姿は、カメレオン俳優と言っても過言ではないだろう。
映画出演は『溺れるナイフ』の5年前が最後となっているが、重岡大毅の別の顔を発掘するためにぜひ映画界でも名を知らしめていただきたいところ。アイドルとしてだけでなく俳優として、今後のますますの活躍が楽しみだ。
(文:桐本 絵梨花)
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