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2021-09-25

鬼滅の刃

『劇場版 鬼滅の刃』を読み解く3つのポイント|“完璧”ではない煉獄さんの魅力

(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable


2:煉獄さんは、ただ1人だけ夢の中で「現実」を見ていた



もう1つ注目してほしいのは、 敵である魘夢(えんむ)が見せる夢の内容だ。煉獄さんが見ている夢だけが、明らかに他の人物と異なる「過去の記憶」になっているのである。

善逸は禰󠄀豆子とデートをする夢、伊之助は子分を従えて洞窟を体験する夢、炭治郎は鬼に殺されたはずの家族と幸せに暮らす夢という、それぞれの「理想」を夢見ていた。魘夢にいい夢を見させてもらうために、炭治郎たちの命を狙っていた者たちもいた。だが、煉獄さんが見た夢は、剣士をやめた父に「柱になったからなんだ。くだらん…どうでもいい」など言われてしまうという「現実」そのものだ。

その夢の中で、煉獄さんは「そんなことで俺の情熱は無くならない!心の炎が消えることはない!俺は決して挫けない」と高らかに宣言し、しかも弟の千寿郎を励ましていた。煉獄さんが自身の理想を夢で見なかったのは、どんなに苦しく辛いことがあっても、乗り越えるべき現実を見つめ続けるという精神力を持っていたからだったのではないか。

また、夢から覚めた時、善逸は「禰󠄀豆子ちゃんは俺が守る!」と夢と変わらず禰󠄀豆子第一主義で、伊之助も夢と同じく「親分として」の自負を持ったまま戦っていた。彼らは煉獄さんと違って、理想を追い求めていることを強さに変えていたと言える。



さらに、炭治郎は夢から覚めた後、「人の心の中に土足で踏み入る」魘夢への怒りを燃やし、そして魘夢が見せた家族がひどいことを言う悪夢に対しては「そんなことを言うはずがないだろう!俺の家族が!」と怒りを爆発させていた。炭治郎も理想的な夢に耽溺しかけてしまった時もあったが、その愛する家族という絶対的な信頼を置いていたこそ、悪夢に惑わされることはなかったのではないか。

煉獄さんは煉獄さんらしく現実を見ているから、善逸と伊之助は理想を追い求めているから、炭治郎は絶対に信じているものがあったからこそ、それらを強さに変え、それぞれの戦い方で敵に打ち勝てたのだろう。

3:煉獄さんも悩んでいたのかもしれない



『無限列車編』の入場者特典であり、「鬼滅の刃公式ファンブック鬼殺隊見聞録・弐」にも収録されている「煉獄零話」では、「お前も千寿郎(弟)もたいした才能はない」などと父に言われてしまったことに対して、煉獄さんがこう思っていたことが綴られている。

「百人が百人口を揃えて、その才能を認め、褒め称える者でなければ、夢を見ることさえ許されないのだろうか」
「強烈な才能と力を持たない者の、夢を叶えるための努力や、誰かの力になりたいと思うその心映えには、何の価値もないのだろうか」

煉獄さんは、父が冷たい態度をとっていたのは「死なせたくないから」という理由も頭に浮かんではいたのだが、それでもそう父に言われたことはショックだっただろう。先ほど煉獄さんは夢(しかし現実)の中で「そんなことで俺の情熱は無くならない」などと高らかに宣言していたと記したが、実際の胸のうちでは、そのような自問自答もしていたこともあったのだ。

この「煉獄零話」の終わりの方では、煉獄さんは「誰かの命を守るために精一杯戦おうとする人」がいかに愛おしいか、自分もそのような立派な人になりたいとも思っていた。だが、それでも悩みは完全には拭されなかったのではないか。



そして、煉獄さんは母から「弱き人を助けるのは強く生まれたものの責務」であることを教わっていた。だからこそ、死の間際に母の姿を見た煉獄さんが「俺はちゃんとやれただろうか。やるべきこと、果たすべきことを全うできましたか?」と問い、母に「立派にできましたよ」と「認めて」もらえたことは、(それが夢または幻であっても)どれだけのことがあろうとも厳しい現実を見続けていた、しかし本当は悩みも抱えていた煉獄さんにとって、心からの救いになったことだろう

何より、「誰かの力になりたいと思うその心」は自分自身の行動だけでなく、鬼となった妹の禰󠄀豆子と乗客たちを守った「強い」炭治郎、そして善逸と伊之助と禰󠄀豆子の姿からも、確かな価値のあるものなのだと、煉獄さんは心から思えたのだろう。だからこそ、炭治郎に「胸を張って生きろ」と言えたのだろう。



そして「百人が百人口を揃えて、その才能を認め、褒め称える者でなければ、夢を見ることさえ許されないのだろうか」と考えたこともあった、現実を見続けていた煉獄さんだからこそ、自分1人だけでも炭治郎を褒め称えることは、「理想」でもあったはずだ。

現実を見つめ続け、責務を全うした煉獄さんは、本当に強い人間だった。煉獄さんに憧れる子どもたちもまた、彼から現実と戦う強さ、弱き人を助けようとする尊い価値観を学び、健やかに育っていくことを願ってやまない。

(文:ヒナタカ)

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