『神在月のこども』柴咲コウと井浦新の両親役にも注目の「自分と向き合う」ロードムービーになった理由
2021年10月8日より『神在月(かみありづき)のこども』が公開される。
結論から申し上げれば、本作は丁寧な作劇と高品質な作画で万人が楽しめる、優れたアニメ映画だった。蒔田彩珠、坂本真綾、入野自由、柴咲コウ、井浦新などの豪華なボイスキャストの熱演も堪能できるので、それぞれのファンにも存分におすすめしたい。さらなる魅力を紹介していこう。
1:日本の観光気分も楽しめるロードムービー
あらすじはこうだ。母を亡くした少女カンナは、大好きだった「走ること」とうまく向き合えなくなっていた。ある日いきなり時間が止まり、神の使いだというウサギが現れ、神様のお迎えに間に合うようにご馳走を送り届ける冒険へと誘う。目的地の出雲まで行けば母にもう一度会えるかもしれないと聞いたカンナは、鬼の少年に行く手を阻まれながらも出雲を目指す。端的に言えば、母を亡くした少女が「時がほぼ止まった世界」で、東京から出雲に向けて旅をするロードムービーだ。時間をコントロールするSF要素は映画の『ドラえもん』のようでもあるし、子どもたちだけで(年齢不詳の者もいるが)旅をするのは映画の『クレヨンしんちゃん』もほうふつとさせる。まずは、子ども向け映画としてしっかりワクワクできる要素があるのだ。
しかも、舞台はなじみのある日本。旅の始まりは東京の牛嶋神社で、愛宕(あたご)神社や蛇窪(へびくぼ)神社を巡り、続いて埼玉県の鴻(こう)神社、神流(かんな)川沿い、群馬県の榛名(はるな)神社、長野県の八千穂高原自然園……などなど、各地の神社や名所を渡り歩いていく。コロナ禍でまだまだ旅行が難しい今でも、日本の東海地方から山陰地方までへの観光気分を一挙に味わえるのだ。
2:優秀なスタッフがいてこその丁寧なつくり
さらに秀逸なのは、亡き母の面影を追って走り出す主人公の少女が、どのように自分の気持ちと向き合うかというドラマだ。主人公の旅の目的は「大好きだった亡き母と会うため」という感情移入しやすいものであるし、仲間たちと切磋琢磨し、さまざまな困難にもぶつかる過程で、悩みすぎて周りを傷つけてしまうこともある少女の複雑な心理が丹念に描かれていた。なお、本作のアニメーション監督を務めた白井孝奈は、『おおかみこどもの雨と雪』(12)や『かぐや姫の物語』(13)や『ハーモニー』(15)の作画や、『海獣の子供』(19)の作画監督助手を経験している優秀なアニメーターだ。その他にも優秀なスタッフが揃っており、だからこその丁寧なアニメ映画になったのは間違いない。
さらに、ラジオ番組『アフター6ジャンクション』の出演でもおなじみの、映画監督でありスクリプトドクター(脚本のお医者さん)でもある三宅隆太が共同脚本を務めている。きっと、心理カウンセラーでもある三宅隆太だからこそ、悩みを抱える少女の気持ちに真摯に寄り添う物語になったのだろう。
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(C)2021 映画「神在月のこども」製作御縁会