志田彩良×井浦新対談『かそけきサンカヨウ』“繊細な女の子”と“未熟な父”を演じる2人が積み上げた父と娘の関係
作家の窪美澄が2014年に発表した短編集『水やりはいつも深夜だけど』(角川文庫)に収録されている、『かそけきサンカヨウ』が映画化。2021年10月15日(金)より全国で公開される。監督は『愛がなんだ』(2019)、『あの頃。』(2020)など続けてヒット作品を手掛けている今泉力哉。
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幼いころに別れた母との記憶を胸に、父との静かな生活を送っていた国木田陽。しかし、その生活は一変することに。父から突然「恋人ができた。その人と結婚しようと思う」と打ち明けられ突然、父の恋人とその連れ子を家族として迎えることになる―。
うっすらとした記憶の中の母や、父、そして新しい家族や好きな人の存在のなかで思春期の陽を演じるのは志田彩良。その父を井浦新が演じる。同事務所の先輩後輩で、今回親子共演をはたした志田と井浦に、本作にかける想いなどを語ってもらった。
あえてつくりこまず、現場で感じたことを言葉にのせて
——まずは志田さんにお伺いします。思春期の戸惑いをとても丁寧に演じられていた印象があります。実年齢よりも若い、国木田陽という役でしたが撮影に入る前はどんなことを準備されましたか?志田彩良(以下、志田):いつも役作りをするときは細かいところまで考えてノートに書きだしています。しかし、今回の陽という役はすごく繊細な女の子だと思ったのであえて事前に役を固めるのではなく、現場で感じたことを言葉にして伝えました。
——難しかったシーンはどこのシーンでしょうか?
志田:鈴鹿央士君が演じた陸に陽の想いを伝えるシーンです。10代という思春期ならではの感覚で相手に気持ちを伝えることがとても難しかったです。また、私の学生時代はSNSがすでに普及していたので、友だちとのやり取りはSNSが主流でした。自分の想いを直接伝える機会が少なかったのでとても難しく感じました。
——鈴鹿さんとのシーンが多かったかと思いますが、どんな風にシーンをつくっていったのでしょうか?
志田:本作の撮影のときはお芝居について話す機会があまりなく、自然と関係性ができていったという感じでした。「ドラゴン桜」のときは2度目の共演という安心感もあったので央士くんにはお芝居について一番相談させてもらいました。今ではいいライバルでもあり、いい戦友という感じですね。
登場人物を想像しながら物語の中に入っていくということ
——次に井浦さんに伺います。これまで多くの父親役を演じられてきたかと思いますが、直はどんなところを大切にして演じられましたか?井浦新(以下、井浦):直という父は表現者である半面、未熟なところもあると感じました。そして、もしかしたら直も陽と同じような子ども時代を過ごしたかもしれないと想像もしましたね。未熟な父なりに娘への眼差しは忘れず、直なりの寄り添い方を大切に演じました。
——ヘアスタイルや小物にもこだわったとお聞きしました。
井浦:監督や衣装・メイクさんたちと相談しながら直という人物像を確立していきました。着る洋服もツヤがあるよりもマットで柔らかい素材じゃないかなとか、眼鏡もさまざまなタイプのものをかけたりして。髪型もどんな髪質か、分け目はどうか、など直という人物を想像しながら皆さんとアイディアを出し合ってつくっていきました。
——今回の映画には若い役者さんが大勢出演していましたが、どんな風にコミュニケーションを図っていたのでしょうか?
井浦: まず、陽との関係性は目の前で感じたことを演じていくという作業が積み重なり、自然と父と娘の関係に重なっていければいいなと思っていました。撮影の合間もそんなに多く語ることはなかったですが、感じたことはその都度、伝えていましたね。
若い役者さんとは国木田家に遊びにくるシーンで接しましたが、あくまでも「陽の友達が来た」という設定を大切に、寡黙な父親像を楽しんでいました。また、「どんなお芝居するのかな?」「どんなやりとりをするのかな?」と、ちょっと引いたところから見ている感じもあったかもしれません。とにかく「直の立ち位置」で陽や若い人たちとは接していましたね。
「サンカヨウ」のように優しい作品
——劇題の『かそけきサンカヨウ』のサンカヨウが劇中何度も映し出され、とても印象的でした。実際にサンカヨウを見られましたか?志田:私は絵の指導をしてくださった先生に見せていただきました。思ったよりも小さくて驚きました。
——最後に、これから御覧になる方々へメッセージをお願いします。
志田: この『かそけきサンカヨウ』という映画は、人を思いやる気持ちや人に優しくする気持ち、そして、ちょっとした気遣いが大切だということを感じてもらえる作品です。今のこの時期だからこそ届けるべき作品だとも感じています。大画面で観ることで、より魅力を感じる作品なのでぜひ映画館でご覧ください。
(撮影/八木英里奈、取材・文/駒子)
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(C)2020 映画「かそけきサンカヨウ」製作委員会