2021年11月13日

<徹底解説>「ヴィム・ヴェンダース レトロスペクティブ ROAD MOVIES/夢の涯てまでも」2021年11月5日より開催中!

<徹底解説>「ヴィム・ヴェンダース レトロスペクティブ ROAD MOVIES/夢の涯てまでも」2021年11月5日より開催中!

日本における
ミニシアター・ブームを牽引する存在

1981年に発表した『ことの次第』(日本では83年に公開。今回は残念ながら上映なし)は第39回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞していますが、実はこの作品、その前にアメリカで監督した『ハメット』(82/日本公開は85年。今回は上映なし)の撮影中、幾度も製作総指揮のフランシス・フォード・コッポラとぶつかり合って撮影が中断したことなどをきっかけに育まれた作品でもありました。

いわゆるハリウッド方式の映画作りは、彼にとってそぐわないものが大いにあったのでしょう。

(もっともコッポラも映画作家主義を貫く名匠であり、特に当時はハリウッド的にも異端児でしたから、映画作家同士の資質の確執もあったかとは思われます)

そんなヴェンダースが心機一転で取り組んだのが『パリ、テキサス』(84/日本公開は85年)で、これはアメリカを舞台に、ひとりの男の放浪と、妻子との再会を描いたロード・ムービー。

『パリ、テキサス』より © Wim Wenders Stiftung 2014

こうした原点回帰も認められたか、本作は第37回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞し、日本でもこの手の作品としては異例の拡大興行を採ったところ、東京では8週間のロングランとなり、ついにヴィム・ヴェンダースの名声が一般の映画ファンにまで定着した感がありました。

1985年には日本ロケによるドキュメンタリー映画『東京画』を発表しますが、これは小津安二郎監督へのオマージュであり、この作品によって当時の若い映画ファン(特に邦画を見ない洋画ファン)に小津映画への興味を大いに募らせ、ひいてはその後の世界的小津リスペクトにまで結びついていったようにも思えます。

『東京画』より © Wim Wenders Stiftung 2014

そして1987年、彼はおよそ10年ぶりに本国ドイツ(西ドイツ)に戻って『ベルリン、天使の詩』を監督し、第40回カンヌ国際映画祭監督賞を受賞するとともに、東京・日比谷シャンテにて公開されるや30週のロングランとなり、ここに至り日本のミニシアター・ブームを揺るぎのないものへと決定づけることにもなりました。

『ベルリン、天使の詩』より © Wim Wenders Stiftung – Argos Films

(ちなみにこの作品、98年に『シティ・オブ・エンジェル』としてハリウッド・リメイクされています。また『ベルリン~』も93年に続編『時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!』が作られ、こちらも話題になりました)

1989年には日本を代表するファッションデザイナー山本洋司のドキュメンタリー映画『都市とモードのビデオノート』を、フィルムとビデオの双方を駆使して撮影。

そう、彼の作品はフィルムであったりビデオであったり、その時々の旬の撮影メディアを縦横無尽に駆使して魅惑的に描いたものが多いのです。

一方で本作はその邦題が物語っているように、、ロード・ムービー的資質とは別に彼の作品群に内包する、いわゆるヴェンダース独自の都市論もより露になっているのでした。

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