<徹底解説>「ヴィム・ヴェンダース レトロスペクティブ ROAD MOVIES/夢の涯てまでも」2021年11月5日より開催中!
<徹底解説>「ヴィム・ヴェンダース レトロスペクティブ ROAD MOVIES/夢の涯てまでも」2021年11月5日より開催中!
ヴェンダース映画のキャストは
映画ファンにとっての天使
1991年には長年の宿願でそれまでのヴェンダース作品の集大成ともいえる『夢の涯てまでを』(日本公開は92年)をドイツ、アメリカ、日本、フランス、オーストラリアというまさに多国籍での映画制作を象徴するかのような合作スタイルで完成。当時としては未来の1999年、核衛星の墜落が予測されて世界中が不安と恐怖にさらされているというSF設定の中、ヴェネチア、パリ、ベルリン、東京などを渡り歩くヒロイン(ソルヴェーグ・ドマルタン)の奇妙な旅が描かれていきます。
ウィリアム・ハートやサム・ニール、ジャンヌ・モロー、マックス・フォン・シドーなどの名優がズラリ揃う中、日本からもヴェンダースが愛してやまない小津映画の象徴的人物で『東京画』にも出てもらった名優・笠智衆や、竹中直人、藤谷美和子らも出演。
実はヴェンダース作品は総じてキャスティングがユニークで、決してスターシステムにおもねることなく、あくまでも自身の映画的体験を豊かに育ませてくれた映画人に声をかけては、ときに即興演出も辞さないスタイルを以って、それぞれの魅力を開花させています(映画監督など作り手の出演も多数あります)。
『まわり道』はナスターシャ・キンスキーのデビュー作ですが、それから時を経て『パリ、テキサス』で再び彼女を起用し、結果として彼女の代表作となりました。
『アメリカの友人』のブルーノ・ガンツも『ベルリン、天使の詩』の主人公・守護天使を演じ、さらにはこの作品「刑事コロンボ」でおなじみピーター・フォークが何と元天使という設定の本人役で出演しており、当時は多くのコロンボ・ファンを喜ばせてくれたものでしたね。
(そう、彼の映画にとって出演者はみな、映画ファンにとっての「天使」みたいな存在なのです)
『パリ、テキサス』の主演ハリー・ディーン・スタントンに至っては、ハリウッドの個性派名脇役が主演の映画を見ることが出来ただけでも奇跡的な幸せだったのです。
ヴェンダース監督は音楽にも精通しており、そのつど劇中で流れる曲に繊細に気を配っていますが、『パリ、テキサス』ではライ・クーダーを起用し、彼がつま弾くボトルネック・ギターの切ない調べは一生ものの響きとして、映画に接する側の心を潤わせてくれています。
そのライ・クーダーとキューバのベテラン・ミュージシャンたちとのセッションを収めた1999年の音楽ドキュメンタリー映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(日本では2000年に公開)は、これによって彼らの存在を世界中にアピールすることにもつながっていくのでした。
21世紀に入ってからのヴェンダース監督の活動はまた折を見て語る機会を持ちたいものですが、とりあえずは1970年代から1999年までのおよそ30年間の功績を、今回ノレトロスペクティブで体感していただければ幸いです。
今ふりかえると、少なくとも日本においてあの時期、ヴィム・ヴェンダースの存在あってこそ、ミニシアターを含む映画的状況の数々が盛り上がっていったと記憶していますし、こうしてつらつら書きなぐっていくうちに、それはもう確信に近いものとなってしまっているのでした。
(文:増當竜也)
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