『リング・ワンダリング』笠松将が巡る幻想世界から現代社会の喪失が浮かび上がる理由
『リング・ワンダリング』笠松将が巡る幻想世界から現代社会の喪失が浮かび上がる理由
従来の迷宮ファンタジーから大きく飛躍したポイントとは
本作は実にユニークな多重構造が採られています。
まずは、21世紀の現実世界としての東京。
そして草介は冬の花火大会が開催される夜、飼い犬を探しているという若い女性ミドリ(阿部純子)と出会い、なりゆきで彼女の両親(安田顕&片岡礼子)が待つ家に赴くことになりますが、その世界は……。
一方、草介が手掛けている漫画の世界も並行して描かれていきます。
(ちなみにこの漫画を実際に描いているのが、大林監督の2017年度作品『花筐/HANAGATAMI』の宣伝ビジュアルも担当した森泉岳土というのも、何やら奇妙な縁ではあります)
この世界は漫画だけでなく、やがては生身の人間(長谷川初範、田中要次などが出演)による実写として劇中で展開されていきます。
主人公のたどる不思議な世界と、彼が描く漫画の世界には一体どういう接点があるのか?
本作のキモはこの点にこそあり、それゆえに従来の迷宮ファンタジーから大きく飛躍しながら、戦争とその惨禍を含むさまざまな崩壊と再生を繰り返しながら現在に至る日本が失ってきたものを、痛恨の想いで観客に知らしめてくれているのでした。
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