今だから観てほしい!『ニキータ』が魅せるいびつな愛、そして、リュック・ベッソンのススメ~
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今だから観てほしい!『ニキータ』が魅せるいびつな愛、そして、リュック・ベッソンのススメ~
熟考の結果、’90年公開、監督リュック・ベッソン、主演アンヌ・パリローの名作『ニキータ』に決めた。
あえて暴論を述べるが、怒らないで聞いてほしい。世界でもっとも映画が面白かった時代は、’90年代である。異論は認めない。理由は簡単。’74年生まれの筆者にとって、10代後半から20代前半のもっとも多感な時期を過ごしたのが、’90年代だったためだ。
タランティーノがいて、レオス・カラックスがいて、ウォン・カーウァイがいて、石井隆がいて、阪本順治がいて、岩井俊二がいて、北野武がいた。大学をサボって映画館ばかり行っていた筆者は、卒業しても就職せずに小劇場演劇の道に進み、2000年代になる頃に挫折した。絵に描いたような若気の至りで、人生を誤った。
完全に彼らのせいだ。その中でも、リュック・ベッソンは特に悪い。
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ニキータの登場
『ニキータ』のオープニング。ニキータ(アンヌ・パリロー)を含む4人の悪ガキが、ずんずん歩いている。その中の半裸の男は、なにやら人間を引きずって歩いている。生きているのか死んでいるのかもわからない。まったく意味はわからないが、これはすごい映画なんじゃないだろうか……!
これはきっと、この4人を主役にした「青春クライム・アクション」なんだ!そして、この引きずられている男(女?)が、実はリーダーだったりするんではないか!?
違った。ニキータ以外の3人はすぐに死んだ。
ニキータと仲間たちは、クスリ欲しさに強盗を行うが、駆けつけた警官隊にあっさり射殺される。ニキータを除いて。その際に警官を射殺したニキータは、裁判の末、処刑される。
ところが、処刑はフェイクであり、目を覚ましたニキータの前に政府の秘密警察官を名乗る男・ボブ(チェッキー・カリョ)が現れた。ニキータは、政府のために働く暗殺者として生きるか、さもなくば本当に死ぬかの、究極の選択を迫られる。
脱走に失敗したニキータは、渋々訓練を受けることになる。しかし、さすが主人公であるニキータは、いきなりポテンシャルが高い。すさんだ生活により、否応なしに格闘能力を鍛えられたと思われる。
徒手格闘の訓練において。中川家・剛似の教官との組手。「遠慮はいらない。私の顔面を狙え」
あっさりビンタを当てるニキータ。思わぬ当て勘(打撃を当てる際の空間把握能力)にビビる教官。その様子を窓から覗いてニヤリとするボブ。
日を改め、2度目の組手。
ニキータの当て勘を警戒した教官は、打撃勝負を避けていきなり組討ちに持ち込む。その判断は正しい。僕がセコンドでも、そう指示する。そして教官、豪快な一本背負い。これも、まあいいだろう。そのまま袈裟固めに入る。これはいけない。
どうやらこの教官は「ルールある格闘技のスパーリング」だと思っているようだが、そんな理屈は「育ちの悪い」ニキータには通用しない。案の定、耳を嚙まれた。ほら言わんこっちゃない。
そもそも「嚙みつき」が認められる戦いにおいては、多くの寝技は無力化する。ひるんで寝技を解いたところに、ニキータのサッカーボール・キックで勝負あり。
『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』に乗せて、だるそうに勝利の舞いを踊るニキータ。
その様子を窓から覗いて大喜びするボブ。ボブ、めっちゃニキータ好きやん!
ボブの歪んだ愛情
そう。ボブはめっちゃニキータが好きなのである。初仕事を終えたニキータに、卒業を言い渡すボブ。「さびしくなるな」と呟くボブに、キスをするニキータ。その際、ボブはまるで中学生のようにドギマギするのだ。その様があまりにも可愛く、おっさん(筆者)がおっさん(ボブ)に母性本能を発動させるという事態になってしまった。
ただボブの愛し方は、少々「いびつ」だ。先述の、卒業試験となった初仕事もなかなかひどい。
あの「勝利の舞い」から3年がたち、エレガントな大人の女性に成長したニキータ。
彼女の23歳の誕生日を祝うため、外での食事に誘うボブ。収監以来、初めての外出である。ドレスアップをして、ボブにエスコートされて訪れた高級そうなレストランに、喜びを隠せないニキータ。プレゼントを渡され喜ぶ様はあまりにいじらしく、3年の間に何があったか知らないが、ニキータも恐らくボブのことが好きである。
有頂天でプレゼントの箱を開けるニキータ。中に入っていたのは、「銃」だった。困惑するニキータに、ボブは冷徹に初仕事を言い渡す。
「後ろに座っているのは、ある重要人物と用心棒だ。2発で殺せ」
卒業後、ニキータは一般人として暮らし始め、マルコ(ジャン=ユーグ・アングラード)という恋人ができた。同棲なんかもしちゃったりしてなんだかんだで幸せに生きているのだが、突然容赦なく指令が入る。だいたいイチャコラしてる時に入る。多分、ボブは狙っている。
特にひどいのが、ふたりにベニス旅行をプレゼントし、ホテルでイチャコラしだしたタイミングを見計らっての指令である。さすがのマルコも、電話が入るたびに突然真顔になってどこぞに消えるニキータを怪しみだす。
後日、ボブに嫌みを言うニキータ。
「いい休暇だったわ。サディズムの趣味があるのね」
答えるボブ。
「私なりの愛し方だ」
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